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異常気象の2010年代 塗り替えられてしまった気候記録6つ

気候危機はすでに訪れており、悪化する一方だ。私たち人類がこの10年間で塗り替えてしまった気候の記録について、最も衝撃的なもの6つをまとめた。

気候変動は将来の問題だし、ひょっとしたら防げるのでないか――。そんな願望や幻想は、2010年代というこの10年間で色褪せた。それにとって代わったのは、危機はもう目前に迫っており、悪化する一方であることを示す厳しい現実だ。

その証拠に、気候をめぐる記録は次々と打ち破られている。そしてこの状態は今後も、数年間、数十年間にわたって続いていくだろう。

2010年代は、最も暑かった10年間として記録に残りそうだ。そのあいだには、未曾有の災害も続発した。ヨーロッパでは猛暑によって観測史上で最も高い気温に達し、アメリカでは70年ぶりに最大雨量を更新した。世界各地でも、かつてないほどの破壊力を持った災害が多数発生し、被害額は記録的なものとなった。

この10年のあいだに、気候変動が原因で初めて哺乳動物が絶滅に至り、海水温が上昇した影響でサンゴ礁がかつてないほどのダメージを受けた。また、海面の上昇で島が消滅し、汚染物質が記録的な水準で大気中に放出された時期でもある。例を挙げればきりがない。

称賛すべきは、気候科学者たちがずっと以前から、地球の気温上昇に関して緊急性を帯びた見通しを立て、全力で警告を発してきたことだ。最近の研究によると、遡ること1970年というかなり古い科学的モデルでさえも、かなり正確だったことが明らかになっている。そのモデルは、気温上昇と、大気中に含まれる温室効果ガスの濃度上昇との関係を考察したものだった。

最新データや、性能が向上したツール、複数の科学的研究の連携強化、そして温室効果ガスの排出がいまだに増加し続けている現状を背景として、専門家たちの意見はかつてないほど一致を見ている。つまり、気候変動は人間が作り出した問題であり、壊滅的な影響は思っていたよりも早く訪れること、解決のために残された時間はあまりないということだ。

過去10年間で、地球温暖化をめぐる議論の口調までもが劇的に変化し、さらなる緊急性を帯びるようになった。政治家科学者メディアは、気候変動は危機であり緊急事態であり破壊だととらえる活動家たちにますます同調するようになっている。「オックスフォード英語辞典」を出版するオックスフォード大学出版局は、2019年を象徴する言葉に「climate emergency(気候非常事態)」を選んだ

膨らみつつある悲観的な見通しにあおられ、人々は行動を起こし始めている。都市の中心部は大規模デモの参加者たちで閉鎖され金曜日に学校を休んで抗議活動を行う子どもたちは何百万人にも上っている。

その先頭に立つのは、ここ最近になって表舞台へと現れたグレタ・トゥーンベリだ。米『タイム』誌は彼女を、2019年の「今年の人」に選出した。「飛行機を利用しない」「肉を食べない」、さらには「子どもを産まない」と言い出す人の数も増加している。

2010年代半ばの2015年には、ほぼすべての国が画期的な国際的同意「パリ協定」に署名して、気候変動に取り組む意思を示した(ただし、ドナルド・トランプ米大統領は2017年、アメリカの離脱を発表した)。こうしたすべての動きがどんな結果を招くのかは、いまはまだわからないが、次の10年間か、その次の10年間で明らかになるだろう。

BuzzFeed Newsでは、私たち人類がこの10年間で塗り替えてしまった気候の記録について、最も衝撃的なもの6つを以下にまとめてみた。

1. 大気中の二酸化炭素(CO2)濃度が急上昇した

有力な温暖化ガス(温室効果ガス)である二酸化炭素(CO2)の大気中濃度は、20世紀に初めて記録された傾向が続くかたちで、2010年代に入っても年を追うごとに上昇した。

しかも濃度は、一定の速さではなく、加速度的に上昇した。実際に、CO2のレベルは現在、かつてないほど速いペースで上がっている。

アメリカ海洋大気庁(NOAA)の炭素循環温室効果ガスグループを率いるピーター・タンズはBuzzFeed Newsに対し、「これまでで最も速いペースです」と語った。

2015年には、世界の年平均CO2濃度が観測史上初めて400ppmを超えた。以前に濃度がこの水準に達したのは人類が誕生する前で、地球の気温はいまより高かった。現在のかつてないほどの高濃度は、自然によるものではなく、その責任は人間にあると科学者たちは結論づけている。

世界気象機関(WMO)によると、CO2濃度は2018年に407.8ppmに達した。二酸化炭素の残存期間は、大気中では数百年にわたる。海中の場合はそれよりも長くなる。

2. 気温が上昇し続けた

2010年代を幕開けした2010年は、その当時で観測史上最も暑い1年となった。しかし、記録は2014年に破られ、さらに2015年と2016年に次々と塗り替えられていく。

2019年7月は、観測史上最も暑い月となった。2019年もまもなく終わろうとしているが、2010年代の後半は観測史上、最も気温が高い5年間だったと科学者たちは述べている。

この10年のあいだにはまた、世界の年平均気温が、産業革命前の水準と比べて摂氏1度以上、上回ったことが公式に記録された。

つまり、パリ協定で掲げられた気温上昇の抑制目標のうち、すでに半分以上のレベルまで達しているのだ。パリ協定では、気温の上昇を1.5度から2度以内に抑えると目標が立てられた。

3. 北極の海氷域が減少した

地球が暖かくなるにつれ、北極の海氷域は減少してきた。年最小面積が観測史上で最も小さかったのは2012年だ。2019年の最小面積は、観測史上で2番目の小ささであり、2007年および2016年に並んだ。

米国立雪氷データセンターの上級科学研究員ウォルト・マイアーはBuzzFeedに対し、「10年ごとに面積は小さくなっています」と述べた。

「減少傾向であることは明らかです」

マイアーは、海氷面積だけにとどまらない、気候変動に関連した憂慮すべき傾向に言及した。北極では、厚みのある古い海氷が解け、海氷が薄くなりつつあることが衛星画像から明らかになったというのだ。

マイアーをはじめとする、北極を観測する科学者たちにとっての重大な関心事は、「海氷域がゼロになる最初の夏はいつ訪れるのか」ということだ。

「もはや問題は、海氷域がゼロに『なるかどうか』ではなく、『いつそうなるのか』です。少なくとも、現在のまま進めばそうなります」とマイアーは話す。

4. 海面が上昇し続けた

海面が上昇しているのは、海氷が融解しているせいでもあり、海水温が高い地域が拡大しているせいでもある。

世界の海面は、衛星画像による記録が始まった1993年以降、およそ3インチ(7.62センチメートル)上昇している

そして、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による2019年海洋・雪氷圏特別報告書によれば、水位は加速度的に上昇しており、地域によっては大々的な影響を被っている。

3インチ程度なら大したことがないと思うかもしれない。しかし、海面の上昇により、サンディなどの巨大ハリケーンが発生すると、沿岸部が高潮の被害に見舞われるケースが多くなっている。

また、フロリダ州などでは「サニーデイ洪水」(満潮時に堤防を越えて浸水する現象。晴れの日にも起こることが名前の由来)と呼ばれる高潮の頻度が増している。

アメリカを対象にした研究では、海面上昇によって深刻化している高潮によって、2005年から2017年にかけて17州で160億ドル近い物的損害が出たことが明らかになった。

さらに、太平洋ではすでに複数の島々が縮小、あるいは完全消滅している

5. 世界中でサンゴ礁が死滅した

観測史上最悪のサンゴ礁白化現象は、2014年から2017年まで続き、世界中のサンゴ礁がダメージを受けた。NOAAコーラル・リーフ・ウォッチの報告書によると、「過去に世界的な白化現象が起きたときよりも多くのサンゴ礁が影響を受けた」という。

とりわけダメージが大きかったのは、オーストラリアのグレート・バリア・リーフ、南太平洋のキリバス共和国、南太平洋にあるサンゴ礁でできた無人島「ジャーヴィス島」などだ。それより前に世界的な白化現象が発生したのは、1998年と2010年の2度だけである。

サンゴ礁の専門家で、米ジョージア工科大学地球・大気科学部の気候学者キム・コブは、「2016年の被害は格段にひどかった」と述べた。コブが2016年、長年の調査地であるキリバス共和国のキリスィマスィ島を訪れると、多くのサンゴ礁が死滅していたという。

世界最大最長のサンゴ礁地帯であるグレート・バリア・リーフは、2016年と2017年にかけて海水温が高い状態が続き、およそ半分のサンゴ礁が死滅した

6. 災害がさらに深刻化した

2010年代のアメリカでは、かつてないほどの自然災害に見舞われ、損害額が数十億ドル規模に上る災害の発生件数が過去最高を記録した。

2012年に発生したハリケーン・サンディは、世界最大の都市ニューヨークの機能を麻痺させた(『ブルームバーグ・ビジネスウィーク誌』が表紙に、「これは紛れもなく地球温暖化だ」と掲げたことで有名だ)。

2017年には、ハリケーン・ハービーがテキサス州に記録的な豪雨をもたらし、ハリケーン・マリアが米自治領プエルトリコを襲って同国最悪の停電を引き起こした。同年にはさらに、カリフォルニア州で史上最大多くの死傷者を出す最悪の山火事も発生している。

アメリカ以外の国々を見ると、2013年にフィリピンを台風「ハイエン」(台風30号)が襲い、何千人もの死者が出た。ハイエンは、上陸台風のなかで最大規模の勢力だった。日本は今年2019年、数十年に一度の強大な勢力を持った台風に見舞われた

同じ2019年には、ヨーロッパに記録的な熱波が到来し、アフリカ南部では厳しい干ばつで何百万人もが食料難に陥ったオーストラリアが山火事で煙に覆いつくされる一方で、インドでは異常な大雨が降る頻度が増えている

科学者たちは今世紀はじめになってようやく、気候変動と個々の災害とを結びつけるようになったが、当時対象としていた災害は、大半が干ばつと熱波だった。

今では、気候変動がどのようにして個々の異常気象の要因になっているかを突き止める「アトリビューションの科学」と呼ばれる分野が急成長している。


この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:遠藤康子/ガリレオ、編集:BuzzFeed Japan