実写版「ムーラン」主演女優は香港警察を支持。デモの支持者は映画のボイコットを呼びかけた

    「帰化した米国人が、自由と民主主義を求めて戦っている人たちにこんなひどい仕打ちをするなんて、本当に皮肉」

    ディズニー映画の実写版『ムーラン』の公開は半年先の話だが、同作品をボイコットするよう呼びかける声が早くも上がっている。主演の中国系米国人女優リウ・イーフェイ(英語名はクリスタル・リウ)が、香港の民主派デモに対する香港当局の厳しい対応を支持する意向をソーシャルメディア(SNS)に投稿したためだ。

    リウが主役のムーランを演じる同作品は、来年3月に米国で公開予定となっている(日本公開日は未定)。しかしリウは15日、中国共産党の機関紙「人民日報」の画像を中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」に投稿。次のように書いた。

    「香港警察を支持する。みんな私を批判すればいい。香港にとって残念なことだ」

    香港国際空港ではデモ隊が12日から占拠を続けていたが、13日にはデモ隊と機動隊が空港ターミナル内で衝突する騒ぎとなった。

    空港でのこの暴動で中国国営メディアの記者がデモ隊に暴行されたが、記者はその際、リウがウェイボーに投稿した言葉「私を批判すればいい」(訳注:文字通りの意味は、「私を叩きのめせばいい」)を叫んだ。この様子を映した動画が拡散され、この言葉は香港でのデモ活動に反対する中国側の人々にとって、オンラインでのスローガンとなった。

    13日の暴動は、10週間におよぶ暴力的にもなった抗議活動に続いたものだった。犯罪の容疑者を中国側に引き渡すとする「逃亡犯条例」改正案を受けたものだ。香港は1997年に中国に返還されて以来、中国本土では享受できない政治的・法的な自由をある程度与えられてきた。香港側で抗議している人たちは、この「逃亡犯条例」改正案により自立の度合いが損なわれることを懸念しているのだ。

    改正案への抗議はやがて、民主派による大規模な活動へと拡大していった。中国当局は、今回の騒動を作り出したとして、証拠を挙げることなく西側を非難している。

    香港の通りには機動隊が常駐するようになり、当局側による暴力でデモ隊の一部には重傷者が出る事態となっている(当局は警官も負傷していると述べている)。

    この議論に割って入ったリウに対し、民主派活動家や香港の活動をオンラインで支持している人たちから非難が集中している。

    リウは中国生まれで、後に米国籍を取得した。言論の自由が保障されている国で暮らしながら、同じ権利を求めて戦っている香港のデモ隊を支持していないとして批判されている。

    リウの主演映画『ムーラン』のボイコットを呼びかけるハッシュタグを付けたあるツイッターユーザーは、「帰化した米国人が、自由と民主主義を求めて戦っている人たちにこんなひどい仕打ちをするなんて、本当に皮肉」と投稿した。

    香港警察の暴力を支持したとしてリウを非難する人もいる。

    あるユーザーは、「ムーランの女優は基本的に、『私は香港警察(の暴力性)を支持しているから。お前らはうせろ』って言っているわけだよね。じゃあ #BoycottMulan (ムーランをボイコット)してぜひそうしよう」と書いた。

    民主派デモを支持する人たちは、リウのインスタグラムのコメント欄にまで押し寄せ、リウへの反対意見を書き残している。

    BuzzFeed Newsは現在、リウの代理人にコメントを求めている。

    本件について米ディズニーにコメントを出すよう求める声は多いが、同社が発言する気配は見えない。

    「それでディズニーさん、あなたの意見は?」とあるツイッターユーザーは書いた。「利益が一番大事? それとも、あなたの映画作品にたくさん描かれているような、ただ人生に自由が欲しいという人たちを支持する? もしくは中国側につく?残念ながら、答えは間違いなく1だよね」

    BuzzFeed Newsはディズニーにコメントを求めたが、回答は得られていない。

    リウのコメントは、香港生まれのカナダ人歌手、デニス・ホーとは対照的だ。

    ホーはBuzzFeed Newsに対し、次のように述べた。

    「私たちは共に、断固とした態度を取らなければいけない。恐怖を流布させるのはあまりにも簡単だけど、中国共産党はそうやって、みんなをコントロールしている」

    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:松丸さとみ / 編集:BuzzFeed Japan