同性婚を巡り、賛成派・反対派の意見が未だかつてないほど激しくぶつかっている。
台湾の司法最高機関である大法官が、同性婚を認めない今の民法は「違憲」に当たると判断したのは、2017年の5月のこと。
以後、2年以内に同性婚に向けて民法改正(または新たな法律の制定)を進め、台湾はアジア初の同性婚合法地域となるはずだった。
同性婚合法化は本当に実現するのか?
今、台湾のLGBTコミュニティは不安に揺れている。11月末に控えた統一地方選挙とともに行われる公民投票にて、同性婚の是非が問われる。
「同性婚に対する政府のやり方について、みんなガッカリしています」
そう語るのは、結婚の平等性を求める団体のチーフコーディネーターを務めるジェニファー・ルウ。
「2016年の選挙では、知り合いはみんな蔡英文(同性婚賛成派)に投票しましたよ。なのに政府は消極的だから、イライラがつのるばかりです」
同性婚の法整備の歩みの遅さを機と捉えるのは反対派。統一選挙にあわせ、3つの公民投票を提出した。
うち2つは同性婚に関するもので、婚姻は男女間に限られるべきことに同意するか、同性カップルはシビル・パートナーシップにおいてその権利を保障することに賛成か。残りの1つは教育に関するもので、台湾で10年以上も続く性の平等教育を廃止すべきかだ。
公民投票に関する台湾の仕組み
公民投票は、有権者の1.5%(約28万人)の賛成を得られれば提出できる。ただ、公民投票の内容が合法化されるには、少なくとも500万票が必要となる。
賛成派と反対派の対立が増す中、10月末、台湾でLGBTコミュニティのパレードが開催された。
13万7000人が参加し、アジアでは最大規模となったパレードでは、レインボーフラッグや「愛は平等」「未来のために投票を」など、同性婚支持を呼びかけるプラカードが掲げられた。
一方で、1986年から同性婚合法化のために活動してきた祁家威は、パレードだけで権利は勝ちとれないと厳しい意見を発する。
「パレードでいくら同性婚を叫んでも、政府を動かす効果的な手段にはならない」
「政府がパレードの声を聞いてくれるかもしれない。でも、それは聞くだけで、行動に移してはくれない。状況を前に進めるには、公民投票しかない」
台湾の人々が、選挙を通して、同性の結婚のあり方を定義できるとき。
同性婚は異性間での婚姻と同じ結婚となるのか。それとも、シビル・パートナーシップとして違う定義づけとなるのか。同性婚のあり方は、公民投票の結果しだいだ。
「シビル・パートナーシップとなれば、外国籍の相手との結婚や子どもの親権は含まれない限定的な権利になってしまう」
そう不安の声を漏らすジェニファー・ルウは、政府法整備の遅さが状況を悪化させたと指摘。
「世論調査を長々せず、違憲判断後にすぐ法整備に乗り出していれば、大きな影響を与えずに、同性婚が自然に受け入れられていたと思う」
政府関係者含め、LGBTコミュニティに疎い人々にどうアプローチしていくかが、公民投票の鍵となる。
社会の一員だと認めてほしい。
台湾で初となるLGBTをテーマにした映画祭の主催者、ジェイ・リンはこう言う。
「僕たちは、社会の一員になりたいだけ」
リンには子どもが2人いる。
「子どもを持つ親として、家族を持つ身として、ただ、法の力で他のみんなと同じだと認めてほしいんです」