激怒のユーチューバー、5000km以上離れたGoogle本社に突撃

    5000km以上を運転し、Google本社へ押しかけた容疑者。彼は動画とアカウントが削除されたことに腹を立てていた。しかし、実はこれらはGoogleによるものではなく、妻によって削除されていたことが判明した。

    アップロードした「簡単にお金持ちになる方法」と題した動画と自身のアカウントがYouTube上から削除されたことに腹を立てたカイル・ロング容疑者(33)が、5000km以上運転してGoogle本社へ押しかけた。目的はアカウントの再発行だ。

    しかし、彼は気付いていなかった。動画とアカウントを削除したのはGoogleではなく彼の妻だということに。妻はロング容疑者の心理状況を心配に思い、これらを削除していたと関係者は語る。

    「子どもたちの前で取り乱して欲しくなかったので、伝えていなかったんです」とサマンサ・ロングさんはBuzzFeed Newsの取材に答えた。

    「(動画とアカウントが削除されたことを)知ったとき、彼は怒り狂っていました。でも、私は知らないふりをしていたんです」

    サマンサさんそしてカイルさんの父親によれば、ロング容疑者は過去に精神疾患を患って以来、YouTubeの動画に執着するようになっていったという。彼は家族や友人に対して、巨額の富を得るためにGoogleへ自身のアイディアを売り込む予定だと話していた。

    「誰もがお金持ちになれる方法というバカげたアイディアを考えていました」と彼の父は語る。

    「以前はそんなアイディアを考えるような子ではなかったんです。飢餓の問題を解決したいと語っていたくらいですから。でも、どこかで踏み外してしまった」

    動画が削除されたとき、彼はYouTubeの運営者によるものだと信じて疑わず、Googleの本社へ自身のコンテンツを売り込むことを決めた。

    Googleに対する脅迫の疑いで彼は3月10日に逮捕されている。今回の件に関してBuzzFeed NewsはGoogleへコメントを求めたが、現在までに回答は得られていない。

    YouTubeへ動画を投稿しているユーザーがGoogle本社へ押しかける一件は今回が初めてではない。1年前にも同様の事件が発生し、3人が怪我を負い、押しかけたYouTuberは自殺した

    マウンテンビュー警察の広報担当者はBuzzFeed Newsの取材に対して、ロング容疑者は特定の誰かに危害を加えたわけではないと説明した。

    サマンサさんは直接Googleへと訴えることで収入が得られると彼は考えていたようだと明かした。

    「彼は私を座らせて、プレゼンをしてみせたんです」

    彼女は現実はそんなに甘くはないと、YouTubeがお金を支払うはずがないと伝えたが、ロング容疑者が聞き入れることはなかった。

    「心を入れ替えてくれない限り、彼を説き伏せることなんてできません」
    「彼は私に言ったんです。何を言っているのかわからない、僕の考えていることが君にわかるはずはない、と」

    ロング容疑者は当初、ボストンへと向かっていたという。しかし、Googleのオフィスを見つけることはできず、計画を変更してカリフォルニアの本社へ向かうことにした。

    カリフォルニア州・マウンテンビュー警察にはロング容疑者に関する情報がすでに届いていた。

    アメリカを横断する旅の途中で、彼は2度職務質問を受けている。1度は衝突事故を起こした際に、そしてもう1度はガソリンスタンドのトイレを破壊した際に。

    職務質問に対して、彼はGoogle本社へと向かっている途中で、Googleの役員たちに彼のYouTubeチャンネルについて話すためだと語っていた。

    取り調べをした警察官は、彼の口調から異変を察知し、カリフォルニア州警察へ情報提供を行なっていた。

    ロング容疑者の父によると彼は双極性障害を患ったことがあり、薬の摂取を止める度に警察沙汰になることがあったという。16歳のときには飲酒運転をしてポールに衝突、同乗していた友人が死亡する事件が発生している。

    マウンテンビューで取り押さえられた際、車内から発見されたのは3本のバッド。その時も彼は「動画を元に戻して欲しいんだ」と語っていた。

    サマンサさんによると動画が削除されたことに対して困惑していたことは事実だが、本社を襲撃しようと語っていたことはなかった。

    「彼が誰かを傷つけようとしていたとは思えません」
    「世界をより良くしようとしていただけのはずです」

    車内から発見された3本のバッドに関しても、これは3人の子どもたちが少年野球をプレーするためのものだと語っている。これらはボールやグローブと共に車内に置かれていたはずだという。

    サマンサさんはまだロング容疑者と話すことはできていない。しかし、今回の逮捕が彼があるべき姿に戻ることを後押しすることを望んでいる。

    「彼は決して悪い人ではないんです。とても素敵な父親の一面も持っているんです」

    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:千葉雄登