ジョン・マケイン氏は、オバマ氏を人種差別主義者の有権者から擁護した

    「それは違いますよ。彼は良識的で、家庭を大事にする人ですよ」

    ジョン・マケイン上院議員が8月25日、脳腫瘍のため亡くなったことを受けて世界中からの追悼の辞が続々と寄せられている

    今は亡き政治家を敬服する人々は、マケイン氏の愛国心と民主主義へのコミットメントを称賛している。中でも、マケイン氏の2008年の選挙遊説のビデオが再び注目を集めている。

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    ビデオの中でマケイン氏は、民主党の対立候補バラク・オバマ氏の国籍陰謀論に言及する女性から同氏を擁護している。

    「オバマは信用できないんです。彼についてこう聞いたんですよ、彼は、その.... アラブ人だって」。2008年10月、ミネソタ州レイクビルのタウンホールで、女性がマケイン氏に近づきながら、そう発言した。

    するとマケイン氏はその言葉を遮って、女性からマイクを取り戻した。

    「違いますよ」と彼は言った。

    「オバマ氏はとても家庭を大事にする人で、れっきとした国民です。たまたま私と基本的争点で相違があるというだけのことで、それがこの大統領選のすべてなのです」

    マケイン氏は、実際、この夜、二度にわたってオバマ氏を擁護した。最初は、他の支持者がオバマ氏が大統領になることを「恐れている」と発言した時。

    マケイン氏は「これだけは申し上げておかなければいけません。オバマ氏は良識ある人物で、彼がアメリカ大統領になったとしても、あなたが恐れを抱く必要がある人物ではありません」と述べた。

    当時の報道によると、マケイン氏のこの受け答えには野次やブーイングが起こり、拍手はわずかだったという。

    モダンホラー小説家のスティーブン・キング氏は、このやりとりはマケイン氏の「最高の瞬間だ」と述べた。

    John McCain's finest moment (for me) came in 2008, when a woman at a rally referred to Obama as an Arab. "No, ma'am," McCain replied. "He's a decent family man, a citizen that I just happen to have disagreements with." That's manning up.

    オバマ氏の元補佐官や支持者らは、政敵に向けられた偏見や人種差別に恐れることなく立ち向かったマケイン氏の勇気に感謝の意を表明している。

    マケイン氏の言葉を、より攻撃的なスタイルのドナルド・トランプ大統領と対比する人もいる。トランプ大統領は民主党政権時代、オバマ氏の国籍に関して陰謀説を声高に支持していた。

    政治的に高くつくような状況でさえ、そうした行動を取るというこの場面は、マケイン氏の原理原則へのコミットメントが現れていると言う人もいる。

    そして一部の人は、過剰に党派心があらわになりがちな今日の風潮では、マケイン氏が政敵に見せたような礼節がまったく見られなくなっていると指摘している。

    「マケイン氏は堂々としており礼節のある人だった。そういう人物がもっと出てこなければいけない」とあるユーザーは書いている。

    作家のアリ・リズヴィ氏は「昔も今も常にヒーロー」とツイートしている。

    しかしながら、すべての人がこのクリップを良しとしているわけではない。一部には、マケイン氏の発言はアラブの人々を侮辱していると解釈する人もいる。

    25日にマケイン氏が亡くなったことに対する声明の中で、オバマ氏は、政策や経歴の違いはあったものの、2008年の大統領選対立候補たちは「より崇高なもの——何世代にもわたるアメリカ国民や移民が目指す理想として戦い、共に歩み、犠牲を払ってきたものへの忠誠心を持っていた」と述べている。

    「私たちはこの国を何でも可能な場所だと捉えています。市民権は、それを永遠に続くものとするための愛国的義務なのです」

    25日の複数の報道によると、マケイン氏はオバマ氏とジョージ・W・ブッシュ氏に自身の葬儀で追悼の辞を寄せてくれるよう頼んでいた。

    マケイン氏はアリゾナ州共和党員として2000年の共和党大統領指名選に立候補したが、ブッシュ氏に敗れている。

    この記事は英語から翻訳・編集しました。