カルト集団「ネクセウム」が女性信者に性行為を強要 ある女性信者は2年間監禁状態だったと証言

    ネクセウムの共同創立者で自称「天才」指導者、ラニエール被告の裁判が行われている。

    ブルックリン — 表向きは自己啓発セミナーを開催するマーケティング会社だが、裏では女性会員に性行為を強要していたことが発覚し、カルト集団とも呼ばれるようになった「ネクセウム(NXIVM)」。

    自称「天才」指導者でネクセウム共同創設者のキース・ラニエール被告は2018年3月に逮捕・起訴された。

    女性に性行為を強要する手助けをしたとして、ほかの「側近たち」も同じく逮捕・起訴されており、中にはテレビドラマ『ヤング・スーパーマン』に出演していた女優もいる。

    5月29日、キース・ラニエール被告の裁判で、元会員の女性が証言台に立った。

    ダニエラと名乗るその女性は、ラニエール被告から性行為を強要され、2年間ほとんど外部との接触を許されない監禁状態にあったという。

    2010年から2年間、彼女はアルバニーにある家の一室に閉じ込められていた。
    監禁当初は18歳だった。

    「一日中壁を見つめている日もありました」と現在33歳のダニエラは語った。

    部屋の中でただただ横たわっていると、腕をかきむしりながら叫びたい衝動に駆られることもあったが、事態を悪くするだけだと思い我慢していた。

    「自分自身を制御できなくなりそうでした」

    ラニエール被告は自身が率いていた集団に関して、性的人身売買やその共謀、売春のあっせん、恐喝、そして強制労働の罪で起訴されている。検察は集団が「カルト的」に機能していたと主張している。

    証言によると、メキシコで生まれアメリカに不法滞在していたダニエラがネクセウムに初めて関わったのは、彼女が16歳のときだった。

    彼女と2人の姉はラニエール被告によって妊娠させられ、中絶を強要された。

    ダニエラは他の男性メンバー、ベン・マイヤーズに恋愛感情を抱くようになった。するとラニエール被告は「倫理違反」だとして、怒りをあらわにしたという。

    ダニエラはメールでラニエール被告を説得し、怒りを鎮めようと何年も必死に試みた。

    ラニエール被告の「恋人」カレン・アンタラーナーや、ネクセウム共同創始者の娘ローレン・ザルツマン被告など、集団内の地位が高いメンバーらが、ダニエラに謝るよう説得しに来た。しかし彼女は謝罪を拒否したという。

    「私は何も悪いことをしていませんでした」

    謝罪の代わりに、罰として部屋にこもるようザルツマンから「ラニエール被告の命令」として命じられた。

    その数年前、ダニエラは団体から6000ドル(約65万円)を盗んでいた。すぐに返したものの、彼女の身分証明書類はネクセウムによって押収された。

    この事件もあり、両親は団体の指示に従って彼女を部屋に閉じ込めたという。

    謝罪を拒否したために全財産をも奪われた彼女は、急いでマイヤーズに電話をかけたが、彼が電話に出ることはなかった。

    「私に選択肢はありませんでした」と当時を振り返った。

    クリフトン・パーク、ウィルトンコート12番地にある建物の一室に、ダニエラは監禁されていた。共用のバスルームと、窓があったが、窓は黒塗りされていた。

    部屋から出ないようにカメラが設置されているのではなどと疑ったが、ドアに鍵はかかっていなかったという。

    着替えが与えられず、何週間も同じ服を着ることもあった。

    日数をただただ数えながら過ごすうちに、食事の時間に固執するようになったという。1日3回、ほぼ同じ時間に家族が部屋に食事を運んでいた。

    ノックして部屋に入り、食事を置いて、何も言わずに去る。これを家族は繰り返していた。

    「誰にも会うことができませんでした」とダニエラは語った。

    彼女が許されていたのは、ラニエール被告に謝罪の手紙を書き続けることだった。しかし状況は改善しなかった。

    スーパーマーケットなどに行くことを「空想」していたという。

    「気がおかしくならないように、頭の中で何かを構築する必要がありました」

    気を紛らわせるために、過去の記憶を思い出せる限り全て辿っていたという。

    ある時ダニエラは、時間を潰すために「ウィルトン・タイムズ」というニュースレターを書こうと考えたが、「道楽が過ぎる」という理由で却下された。

    「限界」に達した彼女は、共用バスルームに置いてあったハサミで髪をバッサリと切った。すると側近メンバーのザルツマン被告は、彼女の髪が元の長さに戻るまで部屋を出てはいけないと命じた。ザルツマン被告は、いつもダニエラに強く当たっていたそうだ。

    「信じられませんでした」、「気がおかしくなりました」と彼女は話した。

    「現実世界を感じるために」彼女は「幾度となく」部屋からこっそりと抜け出していた。しかし疑われないために、一瞬外に出てすぐに戻らなければならなかった。

    一度、誰も家にいない時にPSPをインターネットに接続した。自分のメールボックスを確認したところ、友人や知人からのメッセージは1通も送られていなかった。唯一あったのは、監禁が始まる1年前にマイヤーズ被告から送られた誕生日祝いのメッセージだけだった。

    「私が世界から消えたのに、誰も気がついていませんでした」と彼女は語った。

    「自分がいなくても世界が続いている様を見るのは、とても辛かったです」

    彼女が証言をしている間、傍聴席にいる何人かは涙を堪えていた。

    やがてダニエラは、自殺することを考え始めた、という。

    しかし木にとまっている鳥を見て、その鳥に雛がいるのを見つけると、人生は続いていくのだと実感した。そして自殺を踏みとどまった。

    「麻薬中毒」だと思われても、「娼婦」だと思われても、それでも「全員を騙して」生きていこうと思ったという。


    この記事は英語から翻訳・編集しました。 翻訳:髙橋李佳子