乳がんの啓発広告が差し止めに、Facebookは手術痕写真をヌードと指摘

    Facebookでは、ユーザーが乳房切除の手術痕写真を投稿しても問題視されない。ところが、同様の写真を広告として配信する場合は、規約が厳格に適用される。

    オーストラリアの乳がん患者支援NPOであるBreast Cancer Network Australia(BCNA)がFacebookで啓発目的の広告キャンペーンを開始しようとしたところ、「ヌード写真」を理由に差し止められてしまった。その結果、Facebookは炎上騒ぎに巻き込まれている。

    BCNAの広告では、焼き菓子で胸を隠した乳がんサバイバーのトップレス写真が使われていた。

    「Pink Fun Buns」と呼ばれるこの啓発キャンペーンは、オーストラリアで焼き菓子チェーンを展開しているBakers Delightの協力によって実現したもので、売上はすべてBCNAに寄付される。ちなみに、前年のキャンペーンでは160万ドル(約1億7539万円)集まった。

    乳房切除手術の傷跡を見せた写真も使われるこの広告は、「毎年1万9000人以上がかかる乳がんという病気に注目させることを、特に意識してデザインした」(BCNA)そうだ。

    BCNAのCEO、キルスティン・ピラーティ氏を取材したオーストラリア放送協会(ABC)によると、Facebookは4月時点で許可していたにもかかわらず、方針を変更し、直前になって広告配信を拒否したという。

    「乳がん患者への各種支援を確実に無償提供したいBCNAにとって、広告キャンペーンの開始から数日は多くの寄付が得られる大切な期間です。そして、Facebookは極めて重要なキャンペーンプロモーション手段なのです」(ピラーティ氏)

    基本的にFacebookは、女性の乳首が写った画像の投稿をユーザーに禁じている。しかし、この方針は徐々に「微妙な変化」をして、今や「抵抗活動の表現、赤ちゃんに母乳を与えている女性、乳房切除手術の傷跡など医療に関する問題」に関する写真は投稿できる。

    「乳房切除は人生を変えるような体験であるとFacebookは考えており、写真を共有することで、乳がんの認知度を高めたり、乳がんと診断された人、治療中の人、がんによる傷を持っている人のサポートにつながると考えています。このような種類の写真のほとんどが弊社のポリシーに適合しています」(Facebook

    ところが、広告の場合は見るつもりのないユーザーのフィードへ盛んに表示されることもあって、より厳格に規約が適用される。

    「ヌードそのものや、ヌードを思わせる」画像と、「あからさまに性的な内容でなくとも、胸の谷間や肌を過剰に露出した」写真は、Facebookの広告から無条件で排除される。

    オーストラリアおよびニュージーランドのFacebookで広報を担当しているアントニア・サンダ氏は、BuzzFeed Newsに対してメールで「(個人的に)この広告を気に入っていて、Facebookで配信できるようBakers Delightと真剣に協議しています」と説明した。ただし、「残念ながら、(広告主が)こちらの提案を受け入れてくれない」そうだ。

    「乳がん啓発を目的とする広告や、乳がんの自己検診方法を女性に案内することの重要性は認識しており、こうした活動はFacebookで実行可能です。しかし、今回の広告にはこの種のメッセージがまったく含まれておらず、商品を販売しているブランドの宣伝にすぎません」(サンダ氏)

    そのような理由はあるものの、乳がんが寛解した人や、治療中の人といったサバイバーは、広告キャンペーン差し止めというFacebookの判断を批判している。

    「Facebookのこの(広告)差し止めには嫌な気持ちになった。私は自分の傷跡が誇らしい。命のため闘っている多くの我々サバイバーにとって、あれはヌード写真でなく現実だ。恥ずかしくなんかない」(Facebookに投稿されたあるユーザーのコメント)

    「私たち乳がんサバイバーは、変わってしまった体を恥ずかしいと思うべきなのか。そんなことはないでしょう。今でも美しい体の女性のままだし、今回のようなキャンペーンは、私たちが生きているという事実だけでなく、体そのものに対する誇りを持たせてくれる」(別のユーザーのコメント)

    これまでもFacebookは、ユーザーの胸を写した画像を検閲したとして非難されてきた。2014年には、新米ママの授乳写真を「ヌード」だと報告されて削除した。また、がん患者が投稿した啓発目的の乳首入り写真を削除して謝罪したこともある。Facebook傘下のInstagramでは2015年に、乳房切除手術の傷跡写真を投稿していたアカウントが丸ごと削除されたが、大量の批判を受けて復活した、という事例もあった。

    ステファニー・ベーアより寄稿。

    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:佐藤信彦 / 編集:BuzzFeed Japan