ある2児の母が「反ワクチン派」をやめた理由

    「私の子どもたちが、予防できる感染症に苦しまなくてもいいことをうれしく思います」

    アビー・クリント(30歳/ペンシルベニア州在住)は先日、生後7カ月の娘に予防接種を受けさせるために病院を訪れた。彼女は写真を撮り、自分の子どもに予防接種を受けさせたことを誇らしく思っていると書いてFacebookに投稿した。

    「まだブームの前でしたが、私も予防接種を受けずに大人になりました」とアビーは書いた。「そのせいで、大人になってから、妊娠のたびに予防接種を受けなければなりませんでした。妊娠中に、はしかにかからなくてよかったです。私の子どもたちが、予防できる感染症に苦しまなくてもいいことをうれしく思います。予防保全は、医療費の自己負担を減らしてくれます。命を救ってくれます。予防接種に誇りを持って!」

    この投稿が、反ワクチン派の友人たちを怒らせることはわかっていた。しかし、はしかがアメリカ国内で記録的な猛威を振るう今、アビーは事実を明らかにしたかった。

    公衆衛生当局によれば、ソーシャルメディアが広める間違った情報により、一部のコミュニティでは、子どものワクチン接種率が危険なほどに低下してしまっている。この現状に対して、正しい情報やワクチン支持のメッセージをソーシャルメディアで広めようとする親たちも現れ始めている。

    予防接種に反対する意見を聞きながら大人になったと語るアビーのような人たちにとって、大切なのはリスクの計算だ。アビーは、自身が大病をわずらわなかったことは幸運だと思っており、そんな危ない橋を自分の子どもたちには渡らせたくないと思っている。

    アビーは、病院で撮った写真とともにインフォグラフィックも投稿。ワクチンと自閉症を結びつける科学的証拠がないことや、予防可能な病気のさまざまなリスクを訴えた。

    アビーはBuzzFeed Newsに対して、「私のまわりでも、いろいろな反ワクチンのミームがシェアされています」と語った。「だから私は、ものごとが持つ別の側面を持ち出したのです。ほかからの意見を締め出すのではなく、そこを話し合いの場にするために」

    アビーの投稿は注目を集めた。それから数日にわたって、彼女の投稿は、ワクチン反対派と支持派の両グループによってFacebookでシェアされ、6000件以上のコメントを獲得した。

    アビーと同じように、子供のころに予防接種を受けなかった人たちも、大人になってからの予防接種や、子どもには予防接種を受けさせるという決意について語った。なかには、アビーが自分の子供だけでなく、まだ幼すぎて予防接種を受けられない幼児や、免疫不全の人々も守ってくれたことを感謝する人もいた。

    その一方で、攻撃を開始し、娘たちを危険にさらしているとアビーを非難する人々もいた。なかには、すでに子どもたちは危険な副作用に苦しんでいるように見えると述べる人もいた。

    アビーの話によると、ワクチンの有害な反応は何も起きておらず、子どもたちは健康そのものだという。たしかに、一部のコメントは攻撃的だった。しかし、ワクチンを否定する母親や、予防接種に消極的な母親の気持ちもわかると彼女は語る。

    「この問題の大もとにあるのは、強い恐怖だと思います」とアビーは語った。「それはもはや、ワクチンそのものの枠を超えています」

    自身の母が医療に対して独自の考えを持っていたせいで、アビーは予防接種を受けずに大人になった。その考えに火をつけたのは、医師に対する不信感だったという。

    アビーは結婚前に現在の夫と話し合い、生まれてくる子どもたちにも予防接種を受けさせないつもりでいた。彼女自身が、受けなくても問題なく大人になっていたからだ。

    それでも彼女は、この件について、ほかの人たちとも意見を交換した。そのなかには、かつて風疹にかかった義理の母もいた。妊婦がお腹のなかの子どもに風疹をうつしてしまった場合、子どもに一生続く障害が残るおそれもある。

    「私も風疹にかかってしまったらどうしよう? お腹のなかで赤ちゃんが風疹にかかってしまったらどうしよう?」とアビーは語った。「風疹は予防できます。私にとってショッキングなのは、そこなんです」

    アビーは、ワクチンで予防できるほかの病気にも目を向けながら、自分が病気になる確率や、自分の子どもが病気になる確率、ほかの誰かの子どもが病気になる確率について考えた。

    「いろんな感情をいったん忘れなければなりませんでした」とアビーは語る。「統計データに目を向け、どのソースが信頼できるのかを確かめなけれなりませんでした。たとえ冷酷に思えても、感情に左右されることなく論理的に確率を計算しなければなりませんでした」

    日常のさまざまなリスク、たとえば車に乗ることなどに比べると、アレルギー反応のリスクはとても小さいことがわかった。しかし、それでもためらう気持ちをぬぐえなかったアビーは、かかりつけの小児科医に相談することにした。

    「先生のおかげで、不安がやわらぎました」と彼女は語る。「信頼できる医師を見つけることが本当に大切だと思います。これはいくら強調しても足りません」

    アビーは現在、アメリカ疾病管理予防センター(CDC)が推奨するスケジュールにしたがって、2人の娘に予防接種を受けさせている。アビーは、もっと多くの親たちに、医師や助産師から話を聞いて、ワクチンは自然界に存在する原料でつくられていること、子どもの体はそれに耐えられることを知ってもらいたいと思っている。

    また、自身もカトリック教徒である彼女は、信仰心の厚い親たちが抱く懸念についても真剣に議論してもらいたいと思っている(ワクチンのなかには、中絶された胎児の細胞と歴史的なつながりを持つものもあるが、カトリック教会はワクチン使用を認めており、親たちに子どもと公衆衛生を守るよう呼びかけている)。

    Facebookへの投稿以来、アビーのもとには、ワクチンについて心配する一部の友人からプライベートなメッセージが届くようになった。彼女たちは今でも、子どもの予防接種の間隔をあけるつもりでいるが、科学が裏づける確かな情報を提供してくれたことをアビーに感謝しているという。

    娘たちに予防接種を受けさせるというアビーの決断も、一度に下されたわけではなかった。市販の薬に慣れなければならなかった。統計にもとづく本当のリスクについて、学ばなければならなかった。医師を信頼しなければならなかった。

    「馬鹿げて聞こえるかもしれませんが、いくつもの段階が必要なのです」とアビーは語った。

    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:ガリレオ、編集:BuzzFeed Japan