性的暴行や嫌がらせ のちの健康に悪影響を及ぼすと判明

    最新の研究から、過去に性的暴行・嫌がらせを受けたことがある女性は、中年期以降に高血圧症や不眠症、抑うつ症状に襲われるリスクが高まることがわかった。

    2018年10月3日付けで『JAMA Internal Medicine』誌に発表された新しい研究から、性的暴行や嫌がらせは女性に永続的なトラウマをもたらし、身体の健康にも影響を及ぼすおそれがあることがわかった。

    高血圧や睡眠障害、うつ症状は、性的暴行・嫌がらせを受けたことのある中年女性に見られる健康問題のごく一部である。

    この論文は、最高裁判事候補のブレット・カバノーから、若い頃に性的暴行を受けたとするクリスティーン・ブレイジー・フォード(カリフォルニア大学心理学教授)の告発に、米国市民の関心が向けられているさなかに発表された。

    現在53歳のフォードは、上院司法委員会が9月下旬に開いた公聴会で、1982年に開かれたあるパーティー中にカバノーから暴行を受けたと証言した。

    ピッツバーグ大学のチームが行った今回の研究には、たばこを吸わない40~60歳の女性304人が参加した。参加者の19%が、過去に職場でセクハラを受けたことがあると申告し、22%が性的暴行を受けたことがあると申告した。

    この比率は、アメリカ全体の比率と比べて大幅に低い。アメリカでは、女性の40~75%が過去に職場でセクハラを受けたことがあり、36%が性的暴行を受けたことがあると推定されている。

    研究チームは、参加者の血圧を測定し、病歴を聴取して、彼女たちの心臓の健康状態や睡眠の質、精神衛生状態を評価した。

    この論文の著者のひとりであり、ピッツバーグ大学で精神医学を研究するレベッカ・サーストン教授はBuzzFeed Newsに対して、「ストレスが心血管系の健康に大きな影響を及ぼすことや、性的暴行・嫌がらせが女性の大きなストレス要因になっていることはすでにわかっています。私たちが知りたかったのは、こうした体験が長期的に引き起こす結果でした」と語った。

    この研究から、セクハラを受けたことがある女性は、受けたことがない女性と比べると、血圧が高く、睡眠の質も著しく劣っていることがわかった。セクハラは、高血圧症や不眠症の発症リスクの上昇と関連していた。

    また、性的暴行を受けたことがある女性は、高確率で抑うつや不安、質の低い睡眠に苦しんでいることもわかった。

    著者たちは論文で、高血圧は、アメリカ人女性の死因第1位である心血管疾患のリスク要因であることを指摘し、一般的には、高齢になったときに心血管疾患を発症しやすい中年女性に共通するリスク指標であると書いている。睡眠不足や抑うつ、不安も、身体的な意味での悪い健康状態と関連している。

    サーストン教授は、性的暴行による心的外傷が人体に影響を及ぼすメカニズムについて、「潜在的な経路は複数あります。そのなかのひとつが、健康に影響を及ぼすおそれのある神経系とホルモン系への潜在的な影響です」と話す。

    健康へのこうした長期的な影響のほかに、若い女性や、不安定な仕事に就いている女性のほうがセクハラの被害にあいやすく、経済的なストレスが女性を虐待的な労働環境から離れられなくしている可能性があることも、この研究からわかっている。

    「性的暴行・嫌がらせの蔓延を考慮に入れると、こうした社会的あり方に対処することが、女性の健康増進と病気予防にとって不可欠である可能性がある」と、著者たちは書いている。

    サーストン教授は医師たちに、こうした体験が患者の健康に影響を及ぼしうることを認識するように、とアドバイスしている。

    「彼女たちの以前の体験について尋ね、適切なサポートやケア、カウンセリングを円滑に行えるように、すぐ専門家に紹介できる態勢を整えておくべきです」と彼女は語る。

    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:阪本博希/ガリレオ、編集:BuzzFeed Japan