38歳の健康な男性は、インフルエンザで死の淵をさまよった

    昨年の冬に死にかけて、数カ月にわたって集中治療室に入院した男性がいる。原因はインフルエンザだった。

    2/Yesterday, I got a flu vaccine for the first time ever. (#GetAFluShot) Before this year, I’d never even considered it. But, as some of you know (and the rest of you are about to learn) this year changed a lot of things for me.

    「ストーリータイム。よく聞いてね。長いけれど、絶対に大切な話です。

    私は昨日、生まれて初めてインフルエンザの予防接種を受けました(#GetAFluShot)。昨年までは、受けようなんて思ったことがありませんでした。でも、知っている人もいるように(知らない人も、読んだらわかります)、今年になってから大きな変化がありました」

    ヒンダーライターは1月、インフルエンザにかかったが、そのうち治るだろうと高をくくっていた。しかしそのわずか2週間後に、彼は昏睡状態に陥った。

    ヒンダーライターと妻は、具合が悪くなって数日経ってから受診した。インフルエンザの検査を受けたところ、A型(H3N2)の陽性反応が出たと告げられた。

    A型(H3N2)は、2017年から2018年にかけてもっとも流行したタイプで、とりわけ症状が重いことで知られている。昨年使われたワクチンは、H3N2の予防にそれほど効果を発揮しなかった(H3N2に対する有効性はおよそ25%だった一方、ワクチンに含まれていたほかの株に対する有効性は最大で65%だった)。

    ヒンダーライターはこう話す。「私は(妻の)リンジーの発症の数日前から具合が悪くなっていました。だからリンジーはタミフルを飲みましたが、私は飲まなかったのです。症状が始まってから48時間以上が経っていましたから」

    抗ウィルス薬のタミフルは、インフルエンザが重症化しないよう症状を和らげ、治りを早めてくれる。しかし、症状が出始めてから48時間以内に飲まないと、高い効果は望めない。

    ヒンダーライターは数日後に再び病院に行き、緊急治療室で血液検査を受けたものの、家に帰ってもいいと言われた。ところが翌日に症状が悪化。高熱で意識が混濁していたと妻のヴェルウォルドは言う。

    セントルイス・マーシー病院の救急外来に連れて行ったところ、ヒンダーライターは15分と経たずに昏睡状態に置かれた。

    ヒンダーライターは「その日(1月27日)から2月8日までは何も覚えていません」と話す。

    インフルエンザの感染がきっかけで、肺炎と敗血症という命にかかわる合併症を起こし、臓器不全に陥っていたヒンダーライターは、集中治療室で58日間を過ごした。

    目を覚ましたヒンダーライターに対して医師は、敗血症から敗血症性ショックになり、多臓器不全を起こしていたと告げたという。

    「腎臓の機能はとまっていました。そして挿管されて人工呼吸器につながれていました」とヒンダーライターは述べる。

    「それに、心臓をコントロールするための生命維持装置である、体外式膜型人工肺(ECMO)を装着するための手術を受けることになっていました」

    ヒンダーライターが昏睡状態だったあいだ、父親ときょうだいが最期をみとるために、ほかの州から駆け付けていた。また、医師はヴェルウォルドに、葬儀の手配について話をしていた。「私は文字通り、死の淵に立っていたのです」

    幸い、その1週間後に彼は峠を越した。心臓が自力で動けるまでに回復したほか、バイタルサインも改善し、昏睡を脱した。とはいえ、彼を待っていたのは、完全に回復するまでの長い道のりだった。

    ヒンダーライターは集中治療室で58日間を過ごし、体重が18kgも落ちた。また、昏睡状態だったせいで筋委縮が起こり、話したり立ったり飲み込んだりすることができないほど弱っていた(栄養は、胃に差し込まれたチューブを通じて摂っていた)。

    集中治療室を出たあとも、回復のためにさらに21日間を療養施設で過ごした。

    「その療養施設は、祖母が入っていたところでした。まさかそんなことになるとは思いもしませんでした」

    「でも、私が使っていた歩行器はいちばんクールでしたよ」とヒンダーライターは笑う。

    片耳の聴力が低下し、手術痕が残ったものの、ヒンダーライターは完全に回復する見込みだ。

    インフルエンザにかかってからおよそ3カ月後の4月半ば、ヒンダーライターはようやく、療養施設を退院できるまでに回復した。

    「帰宅したのは、39歳の誕生日の2日前でした」とヒンダーライターは言う。

    その後、自力で生活できるようになるまで、訪問介護と理学療法を受けた。

    入院したことで、ヒンダーライターの体には新たに傷が残った。また、命をつなぎとめるための薬が原因で難聴になり、一生治らないという。

    「代わりに命拾いしましたから、それで十分です」

    体力や持久力が通常のレベルに戻るまでにはあと6カ月ほどかかるが、完全に回復する見込みだ。

    「かなり普通に生活を送れていると思います。素晴らしいことです」とヒンダーライターは言う。

    妻のヴェルウォルドは、「数カ月前に死にかけたようには見えませんよね」と話す。

    「実をいうと、彼が退院してからの数カ月間は、信じられない思いでいっぱいでした」

    「あんな経験をしたあとで、彼が初めて軽い風邪をひいたとき、私はちょっとしたパニックに陥ったんです。でも、すぐに治りました」

    ヒンダーライターが自らの体験を共有しているのは、インフルエンザの危険性について認識を広め、ほかの人にも予防接種を受けてもらうためだという。

    「私はワクチンに対して抵抗感はありません。それに、たくさんの人が免疫を獲得するのはいいことだと思います」

    「ただ、私は面倒くさいと考えていて、(インフルエンザの予防接種を)受ける気にならなかっただけなのです」とヒンダーライターは言う。

    そう思うのは彼だけではない。米疾病管理予防センター(CDC)によると、アメリカのインフルエンザワクチン接種率はわずか47%だ。理由はなんであれ、人口の半分は予防接種を受けていない。

    インフルエンザは命にかかわる病気であり、健康な成人であっても死に至る可能性がある。昨冬は、子ども180人を含む8万人が、インフルエンザとその合併症によって死亡したとされる。この数字は過去40年間で最も多い。

    たとえ自分はインフルエンザが治ったとしても、乳幼児やお年寄り、免疫の弱い人など、合併症にかかったり死亡したりするリスクが高い人にうつしてしまう可能性もある。

    自分自身ならびに周囲の人を守るには、季節性インフルエンザのワクチンを打つのが最善の方法だ。接種したからといって、絶対安全だというわけではない。有効性はせいぜい60%だ。けれども、予防しないよりはましだ。

    CDCは今年、生後6カ月以上の人全員に対し、10月末までワクチンを打つよう勧めている。不明な点があるときは医師に相談してほしい。

    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:遠藤康子/ガリレオ、編集:BuzzFeed Japan