家を失っても患者をケアし続ける医師たちがいる 彼らは山火事で家を失った

    「病院を訪れる人たちは重い病気にかかっていて助けを必要としています」

    7月23日、カリフォルニア州レディング近郊の乾燥した雑木林に駐車していた車から出火した。強風にあおられ火は燃え広がり、大規模な森林火災となっている。

    レディングを含む州北中部シャスタ郡では3万8000人を超える人々が避難を余儀なくされた。この火災で消防士2人を含む6人が死亡、少なくとも800棟が焼失した

    カリフォルニア州ではこの「カー火災」以外にも、17箇所で同時に山火事が発生。1万2000人を超える消防士たちが、現在も昼夜を問わず消火活動に取り組んでいる。

    27日、カリフォルニア州のブラウン知事は連邦政府に対し、支援を要請。トランプ大統領は非常事態宣言を発令し、連邦政府から各エリアへの支援を行うと発表している。

    カリフォルニア州において山火事は珍しいものではなく、高温と乾燥の続く夏には毎年発生している。しかし、今年は過去10年で最悪のレベルにあると専門家は指摘している


    家を失いながらも、出勤を続け、床で眠り、患者のケアを続ける人々がいる。

    カリフォルニア州レディング — 月曜日の朝、白衣を直しながら、ミシェル・ウッズ(Michele Woods)さんは患者のカルテに丹念に目を通す。

    カリフォルニア州レディングにあるディグニティ・ヘルス病院に務めるウッズさんは、激しく燃え、動きを予測するのも困難な今回の火災で家を失った。しかし、同じ状況に置かれている多数の同僚たちと共に看護シフトをこなすことで、受けたショックと苦痛がいくらか和らいだという。

    ディグニティ・ヘルス・ノース・ステートに務める医師や従業員約40人が、ここ1週間で家を失ったにもかかわらず、出勤を続け、床で眠り、そして約145人の患者の世話をしている。

    広報担当のマイク・マンガス氏によると、患者の多くは「重病」で、より緊急の処置や治療が必要だという。

    「病院を訪れる人たちは重い病気にかかっていて助けを必要としています」と緩和ケアナースとして務めるウッズさんは言う。

    「病院は絶対に負けません。私たちは家族です。私たちが患者のためにしていることは、お互いのためなのです。今では互いを思いやるコミュニティーになっています」

    午前3時半頃に夫と一緒に非難してから数時間後、ウッズさんは、12年間住んだ歴史ある炭鉱の町オールド・シャスタの自宅を失ったことを知った。ウッズさんの娘、義理の息子、孫息子は火災で家を失い、現在5人の家族はホテルの狭い一室で暮らしている。

    「茫然としています」とウッズさんは言う。「今は、うまく言い表すことができません。できるだけいつも通りの生活に戻ることが大事で、私にとってそれは、病院に毎日出勤することです」

    ウッズさんの同僚のエドワード・ザワダ医師もまた、もう妻と一緒に家のソファーに座ることも、自分が書いたり集めたりした本を開くこともないという現実と格闘している。

    それでも家を失ったことを知った数時間後、救命医療を専門とする彼は病院にいた。

    「働くことが私のアイデンティティーです」と70歳のザワダさんは言う。「火災のために透析治療が遅れてしまった数多くの重症患者を前にして、救うのが非常に難しいのが現状です」

    彼と他の職員は「遅れを取り戻そう」と忙しく、1日にだいたい20人から30人の患者を診ているという。その間も、すでに6人の命を奪ったカー火災は広がり続けている。火災が施設に侵入する恐れがあったときには、新生児集中治療室から6人の赤ちゃんを懸命に避難させた。

    彼は、「患者が優先です」と語りながらも、「喪失と次に何をすべきかを見極めることへの絶え間ない不安」に襲われ始めたことを認める。それでも、「病院が全力を尽くさなければ、うまくはいきません」とザワダさんは付け加えた。

    「災害時にはただでさえ、医療従事者が不足します」とザワダさんは言う。「ですから、家を失うことで医療従事者の不足がさらに加速してしまうのがとても気がかりです」

    病院の献身的な姿勢は、住民が人々や区域全体を失ってしまったことを悲しむ中、互いに団結するコミュニティーを反映している。

    山火事によって4万人近くが強制的に家を追われ、高校や教会など、定員を超えて人が増え続ける仮設避難所に移ることを余儀なくされた。

    食べ物や散髪の無料提供の張り紙が店にはられ、街角には服やペットフードをすぐにも必要としている人のために寄付センターがバラバラと出現している。

    「この体験を通じて、私たちは人の命がいかに大切であるかにようやく気づきました」と、涙をふきながらウッズさんは語る。

    「私たちはレディングを捨てません。外はしばらくの間はめちゃくちゃかもしれませんが、私たちは立ち上がり、いつものように靴を履きます。きっと何とかなるはずです」

    この記事は英語から翻訳されました。翻訳:千葉雄登