施設職員が移民孤児に性的虐待の疑い 過去4年間で約6000件

    アメリカ政府に身柄を拘束された移民の孤児に対する性的虐待の疑惑報告件数は、過去4年間で5859件に上っている。

    アメリカ政府に身柄を拘束された孤児に対して性的虐待の疑いがあったとする報告の件数が、過去4年間で6000件近くにのぼることが、2019年2月26日に公表された資料で明らかになった。

    この資料は米保健福祉省(HHS)が作成したもので、下院司法委員会の公聴会でフロリダ州選出のテッド・ドイチ議員(民主党)が公表した。

    この公聴会は、トランプ政権が「ゼロ・トレランス(寛容ゼロ)」を掲げて2018年に成立させた移民関連法案により、何千組もの移民親子が引き離された件について開かれたものだ。

    資料によると、HHSの難民再定住室(ORR)に報告された性的虐待疑惑の件数は、過去4年間で4556件に上っている。また、司法省に訴えられた件数は1303件だった。

    疑惑の中身は、移民の子どもたちを収容する施設の職員が、未成年者の性器に触れた、子どもたちに児童ポルノを見せた、子どもにキスをした、といったものだった。資料を見ると、加害者が判明している限りでは、職員が未成年者に対して性的虐待を行った疑惑が178件あるほか、移民の孤児が他の子どもに対して行った性的虐待が少なくとも833件あった。親のいない児童移民に対する性的虐待疑惑のうち、少なくとも19件は、施設職員ではない成人によるものだった。

    ドイチ議員は声明のなかで、「HHSによるこの資料には、拘束されている移民の孤児に対して、非常に多くの性的暴力が加えられていることが詳しく述べられている」と述べている。「現政権が、こうした子どもたちを施設内で安全に保護できていないのは明らかだ」

    この疑惑を最初に報じたのは、ニュースサイト「アクシオス」だ。

    HHSのケイトリン・オークリー報道官は同サイトに対し、未成年者の安全確保を最優先に考えており、施設職員全員のバックグラウンドチェックは義務となっていると述べた。

    オークリー報道官は声明で、「こうした子どもたちは、困難な状況のなかで弱い立場にある。ORRは子どもひとりひとりを細心の注意を払って扱わなくてはならないことを十分に理解している」と述べている。「虐待、性的暴行、ネグレクトなどの疑惑が浮上した場合には、ORRは真剣に受け止め、速やかに調査を行い対処する」

    ORRが作成した複数の資料のひとつには、2014年から2016年にあいだに起きた事件が詳述されている。

    2016年10月、バージニア州のシェナンドー・バレー児童収容施設にいた男児が、職員に体を押さえつけられ、股の部分を強くつかまれたと語った。児童保護部局は、通報を受けてその事件を調査。その職員は別の居住施設に異動となった。

    非営利団体「インターナショナル・エデュケイショナル・サービシズ」の施設では2016年2月、ある職員が、親のいない未成年者の胸とお尻を触った疑いが浮上。その職員は停職処分を受けた。

    アリゾナ州にある非営利団体「サウスウェスト・キー」のエストレラ・デル・ノートル移民収容施設では、親のいない未成年の少年が、職員に性器を触られたと訴えた。その後、職員1名が逮捕された。

    2018年にも、サウスウェスト・キーが運営する移民収容施設で働く職員が少年たちに性的いたずらをした事件が起きている。職員のレヴィアン・D・パチェコは、アリゾナ州メサのカーサ・ココペッリ移民収容シェルターに収容されていた10代の少年複数に性的いたずらを行った罪で、連邦陪審に有罪判決を受けた。

    ORRの資料によると、HHSは、性的暴行やセクシャルハラスメント、不適切行為に関する多くの疑惑を追跡調査しており、事件の総数は掲載されている数と異なる可能性があるという。


    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:遠藤康子/ガリレオ、編集:BuzzFeed Japan