女子W杯の王者が決まったとき、スタジアムには「ある言葉」が響いた

    「アメリカにとって、とてつもなく誇らしい今この瞬間も、悲しい不平等があまりに明らかに存在しています。アメリカ国民は、もうこれ以上我慢することはできません」

    7月7日に行われたサッカー女子ワールドカップ決勝戦。アメリカ代表がオランダを2-0で破り、2大会連続・4度目となる優勝を果たした直後、スタジアムに集まったサポーターたちがある言葉を叫び始めた。

    その言葉とは、「Equal pay(男女に平等な給料を)」。背景には、アメリカ・サッカー界で問題視されてきた、男女間の賃金格差問題があった。

    「男女に平等な給料を!」

    Infantino on the stage. Whole stadium chants “EQUAL PAY” #FIFAWWC

    今年3月、今大会のMVPと得点王に輝いたミーガン・ラピノー選手を含む、2015年女子W杯優勝チームの28選手が、アメリカサッカー連盟を提訴した。

    CNNによると、選手たちは「実質的に同じ働きをしているのに、男子代表選手よりも女子代表選手の方が賃金が少ないのは差別に当たる」と主張。

    男子選手と同じ賃金を支払うことや、雇用条件を同等にすること、女子の試合にも平等な宣伝・サポートなどをするよう求めている。

    実際に、2018年に開催された男子W杯の賞金は4億ドル(約430億円)だったのに対して、女子選手たちが今回受け取る賞金は、その1割にも満たない3000万ドル(約32億5000万円)だと報じられている。

    男子サッカーの方が人気があり、収益性が高いからだと主張する声もある一方、2018年の男子W杯でアメリカ代表は予選敗退を喫した。

    また、Wall Street Journalは、2016~2018年の3年間で女子サッカーが5080万ドルの収益を出したのに対して、男子サッカーの収益は4990万ドルだったと指摘している。

    2023年には「賞金を倍に」それでも…

    FIFAのインファンティーノ会長は7月5日、2023年に開催される次の女子W杯では、賞金を倍に引き上げると発表。だが、それでも男女平等にはほど遠いと指摘されている。

    原告である選手側の広報はBuzzFeed Newsに対して、「(W杯優勝を果たし)アメリカにとって、とてつもなく誇らしい今この瞬間も、悲しい不平等があまりに明らかに存在しています。アメリカ国民は、もうこれ以上我慢することはできません」とコメント。

    「選手たちはより多くの収益を上げ、高いテレビの視聴率を記録しているのにも関わらず、女性だという理由だけで賃金を少なくされているのです。連盟は今こそ、この不平等を是正するべきです」と話した。

    訴訟をめぐっては、連盟と選手側が調停に持ち込むことで合意。大会終了を受けて、交渉が始まる予定だ。