8月10日、中国の多くのイスラム教徒が、中国政府による解体を阻止しようと、モスクに集まった。
8月初旬、中国北西部の寧夏回族自治区にある韋州の地元政府は、同モスクが正式な建築許可を得ていないとして、8月10日までに取り壊すように命じた。
必要とされている建築許可を韋州清真大寺が受けていないため、8月10日までに取り壊す必要があると主張する韋州政府が発行した許可証。
このことを受けて、8月6日、中国当局に抗議して、少数民族である回族のイスラム教徒の地元民が、韋州政府の建物の前に集まった。異例のことだ。
少数民族の回族は、ほとんどの人が標準中国語を話すため、多数民族の漢族に通常は統合されているが、回族の保守派の人たちは、白い帽子やヘッドスカーフを被っている。
一方、中東でよく見られるようなドームがある韋州清真大寺は、文化大革命(1966~76)に壊された築600年の中国建築のモスクの代わりに、昨年建て直された。
イスラム教徒で詩人の真回安然さんがツイッターでシェアした動画では、抗議をする男性のグループが、モスクの外で大きなバナーを3枚掲げて、繰り返し訴えている。
「断固として中国共産党を支持することを約束します。民族の結束を守り、市民の宗教の自由を確保しましょう」
8月7日には、さらに大きな抗議行動が行われ、正午にはモスク前の広場に何百もの地元市民が集まり、警察官も多数、現場に到着する姿が見られた。午後には、モスクを不安げに眺め、警察が何かするのかを見守る地元住民で広場は埋め尽くされた。
抗議者の数は増え続けたが、抗議の人たちが座り込みでモスクを守ろうと決めていたため、モスク外の現場は静かだった。
モスクの入り口へと続く階段の外に集まった増え続ける人たちを取り巻くように、警察の姿が見られた。
報道によると、8月9日の抗議活動は夜まで続き、地元政府の職員が深夜に到着して、住民と当局の間で実行可能な計画に合意するまでモスクは取り壊さないと約束をし、家に帰るよう住人を説得した。
モスクは取り壊さないが、その代わりに建物の8か所にあるドームは取り除くことを政府は提案したと、9日以降に報道されている。
真回安然さんがTwitterでシェアした動画によると、10日、金曜日の礼拝に参加するために多くの住民がモスクに集まり、抗議は続けられた、とのことだ。
BuzzFeed Newsが取材をした地元住民の話では、暗くなっても多くの抗議者がモスクに残り、なにかしらの行動を政府が突然取らないかを確認するために、みんな静かに待っていた、とのことだ。
「モスクにはたくさんの人がいて、何が起きるのかを見ようと待っていました」と、スー・ツェ・ロンさんはBuzzFeed Newsの電話取材に応えた。「モスクを政府に解体して欲しくありません。でも、政府が解体すると主張したら、私たちにはどうすることもできません」
真回安然さんとスーさんの話では、モスクの建築に関しては、政府は3年前から把握していて、住民に計画を止めるようには言ってこなかった、とのことだ。建築の費用はすべて、地元コミュニティが払っているため、モスクを解体するという政府命令のことを知り、地元住民は混乱していた。
「完全に地元コミュニティからの寄付で、このモスクは建て直されており、金曜日までにモスクを取り壊すようにと政府が発表したときには、みんなショックを受けました」とスーさんは話している。「私たちは、毎日このモスクに来てお祈りをしますし、イスラム文化(回教)に敬意を払っているため、私たちにとってこのモスクは、とても重要なのです」
モスクを取り壊すのは中央政府の意図ではなかったとスーさんは信じており、モスクは海外からの資金はまったく受け取っていないと話している。
「住民の多くは、特に年配の人たちは、モスクを再建するために、稼いだお金をすべてつぎ込んできました」とスーさんはBuzzFeed Newsの取材に答えている。
この抗議は、国全体の宗教を〝中国化〟しようという中国政府の計画に、国民が抵抗するという珍しい兆候である。新疆にいるウイグルとカザフの何千ものイスラム系少数派を再教育キャンプに入れたり、慣行に中国の特徴を吹き込むように数え切れないほど多くの宗教法人に強制したりして、北京が宗教の自由を全国で弾圧し続けているときでもあった。
回族は、中国の漢民族に文化的に近い一方で、回族の子どもが宗教系の学校やアラビア語のクラスに通うのを政府高官が禁じようとしたことが、最近でも報告されている。
中国で人気のミニブログサイトWeiboでは、地元政府のモスク解体の判断への支持を表明する利用者が多くいる。政府が激しい反対に直面しても、違法な建物は法に従い解体されるべきだ、というのだ。