ラップの歌詞で学校封鎖。逮捕された少年は、数年間収監される可能性も

マイケル・シュミットのラップの歌詞はひどいものだったが、はたしてそれは犯罪なのだろうか?

    ラップの歌詞で学校封鎖。逮捕された少年は、数年間収監される可能性も

    マイケル・シュミットのラップの歌詞はひどいものだったが、はたしてそれは犯罪なのだろうか?

    2月24日、母親のマンションで目を覚ましたマイケル・シュミットの頭のなかには、フリースタイルのスクリームラップのアイデアが溢れていた。彼はのちに、それをネット上にアップした。その歌詞は露骨なものだった。高校3年生のシュミットは、一度ならず「オレのモノをしゃぶってみろよ」と叫び、「卵みたいに頭にひびを入れてやるぜ、ビッチ」と歌っている。

    歌詞で特定の誰かが名指しされているわけではなかったが、タイトルには、彼の通うジェームズ・コールドウェル高校の名が引用されていた。タイトルは、「u lil sluts @ jchs i love u all even tho yall hurt me and i forgive u. i would never hurt u.(ジェームズ・コールドウェル高校(jchs)の尻軽ども、おまえはオレを傷つける。それでもオレはおまえを愛しているし、おまえを許す。けっしておまえを傷つけない)」というものだった。シュミットはこのラップをTwitterとSnapchatで宣伝した。その日の午後、ジェームズ・コールドウェル高は封鎖された。

    シュミットのツイートを見たある生徒が、音楽ストリーミングサイト「サウンドクラウド」で、カメラに銃を向けているシュミットのプロフィール写真を発見した。警察の調書によれば、その生徒はシュミットのラップを暴力的だと感じ、不安に思って母親に話した。母親が教師に連絡したという。

    高校の管理者は午後1時ごろ、ニュージャージー州ウェスト・コールドウェルの警察に対して、危険な事態が生じるおそれがあると通報。その後まもなく、特別機動隊(SWAT)のチームがキャンパスに押し寄せた。その日は、雨模様の土曜日だった。学校では授業はおこなわれていなかったが、週末の音楽コンサートのために数百人が集まっていた。

    シュミットは「虚偽の情報により世間を騒がせた」疑いで逮捕された。この罪状で有罪になると、5~10年の刑が下される。

    逮捕後、シュミットはニュージャージー州ニューアークの拘置所に移送され、保護拘置下に置かれた。ほかの収容者から隔離された独房だったとシュミットは述べている。14週間後の現在、18歳のシュミットは自宅拘禁下に置かれ、ラップ楽曲をめぐって今後開かれるかもしれない公判を待っている。全米で多発している学校での銃乱射事件に悩む警察と高校当局は、例のラップを深刻な脅威ととらえているが、シュミット本人によれば、あれはパロディだったという。

    シュミットはBuzzFeed Newsに対して、「彼らはオレをスクールシューター(学校で銃を乱射する者)に仕立てあげた。恐ろしい話だ」と語った。「学校での銃乱射事件が起きるたびに、あのラップのせいで、オレと結びつけられるのではないかと怖くなる」

    自分は、白人が大多数を占める保守的な街で暮らす、ヒップホップを愛する変わり者の若者にすぎない。シュミットはそう訴える。「尻軽ども」というのは男性の友人たちのことだ、銃は持っていない、学校を襲撃するつもりはまったくなかった、とシュミットは主張している。

    だが、ジェームズ・コールドウェル高のジム・デブリン校長は、警察の行動は正しかったと話している。「彼(シュミット)はそんなつもりはなかったと言っていますが、我々がそれを確信できるわけではありません」とデブリン校長はBuzzFeed Newsに語った。

    シュミットが逮捕されたのは、フロリダ州パークランドの高校で銃乱射事件があった10日後のことだ。パークランドの事件では、19歳のニコラス・クルーズが、17件の計画殺人の罪に問われている。当時は、クルーズ容疑者をめぐり、ジャーナリストが数々の犯行の前兆を明らかにしている時だった。クルーズ容疑者が学校に銃弾を持って行ったことを示すSNSの投稿のほか、銃を構えてポーズをとり、「学校で乱射する」と語っている投稿もあった。そうした前兆がありながら適切な措置をとらなかったとして、パークランドの学校管理者と警察が批判されていた。

    パークランドの大量殺戮後、全米の多くの学校が脅威に直面していたが、学校関係者や生徒の冗談や不注意なコメントが溢れるなかで、どこまでが本物の脅威で、どこまでがいたずらなのか、そしてどこまでが誤解なのかを判断するのは至難の業だ。

    エセックス郡検察庁は2月28日に記者会見を開き、あらゆる脅威を真剣にとらえる姿勢を示すために、学校を脅迫したとされる4の起訴手続きを進めていると発表した。郡検察官代理であるロバート・ラウリーノの説明によれば、うち2名は未成年者で、学校での銃乱射を計画した疑いがあるという。3人目は学校の生徒で、射撃練習場で撮影した動画をインスタグラムに投稿した。動画のBGMには、学校での銃乱射をテーマにしたフォスター・ザ・ピープルの「パンプト・アップ・キックス」が使われていた。そして最後の1件が、シュミットのラップだった。

    「声を大にしてはっきりと言いたいのですが、これらの事件は、子どもの悪ふざけではありません」とラウリーノ検察官代理は述べた。「これは犯罪であり、成人なら最高5年の刑に処されるものです」

    だが、シュミットのケースは、いまにもクラスメートに復讐しかねない、問題を抱えた若者の一例とは言い切れない。脅威と見なすべきなのか、きわめて侮蔑的であったとしても表現の自由の一形態と見なすべきなのか。それを学校関係者と警察がどのように判断するのか。シュミットの事例は、そうした疑問を提起している。しかもこのケースでは、煎じつめれば、1枚のプロフィール写真と、ニュージャージー郊外に暮らす少年のつくった短いラップにすぎないもののために、シュミットは何年も刑務所に入れられる可能性があるのだ。

    「これはきわめて深刻です」とシュミットの弁護人のデイビッド・グレイはBuzzFeed Newsに語る。「彼の人生が危うくなっています」

    警察の調書によれば、2月24日、警官たちがジェームズ・コールドウェル高に到着したとき、音楽教師のスコット・チェンバレンと1人の保護者が、シュミットがSnapchatに投稿した動画を警官隊に見せたという。それは新曲のサンプルで、シュミットは「今日はさらにもう少し、オレを憎むネタをまくつもりだ」というキャプションをつけていた。

    教師らは警官隊に、シュミットが午前10時に投稿したツイートも見せた。ツイートには、「尻軽ども、その顔をめちゃくちゃにされてしまえ」とあり、問題のラップへのリンクがシェアされていた。そのラップには、「オレの銃を抜いて、おまえの頭をぶち壊す/これでおまえは死んで、眠りにつく」という一節もあった。

    デブリン校長はBuzzFeed Newsに対して、「本校の生徒が、誰かを殺す、つまり、誰かの頭を銃で撃つとほのめかす暴力的な歌をサウンドクラウドに投稿しました。彼は、銃を持った自分の写真を掲載しています。本校の女子生徒たちとの関連も示唆されていました」と述べる。「それらを考えあわせると、きわめて危険な状況に見えるはずです。その時点では、信憑性の如何を判断するのは、私の仕事ではありません。我々は、生徒たちとその家族を守らなければなりません」

    警察はキャンパスでシュミットを捜索したが、見つかったのは、教室で身を寄せあう「目に見えて震え、動転した」人たちだったという。捜索開始から30分後、警察に電話をかけてきたシュミットの母親が、探しているのはうちの息子かと訊ね、すぐに息子を警察本部に連れて行くと告げた。学校はコンサートを中止し、構内にいた人たちを避難させた。

    「あの日は、誰もが自分のすべきことをしました」とデブリン校長は言う。「われわれがとった行動は必要なことだった、と100%確信しています。あれは誤報ではありませんでした。学校の安全を確保するために、しなければならないことでした」

    青のスエットパンツとクリスマスツリー柄のセーターという格好で友人の家にいたシュミットのもとには、学校で何が起きているのかと訊ねる、親戚や友人からのメールが殺到した。「くだらないことだ」とシュミットは説明したが、事態がエスカレートしていることには気づいていた。

    学校の記録によれば、シュミットは2016年以降、クラスメートに唾を吐いて授業を中断したなど、少なくとも10の事由で停学処分を受けていた。マリファナの活性成分THC(テトラヒドロカンナビノール)の陽性反応が出たために停学になったこともある。シュミットは10月に自宅学習プログラムを開始していた。

    シュミットの説明によれば、件の曲をアップロードしたのは、車のスピーカーで聴けるようにするためだったという。だが、タイトルに「JCHS(ジェームズ・コールドウェル高校)」という単語を入れたばかりに、取り返しのつかない事態になってしまったことは明らかだった。「でもあの時点では、そんなことは何も考えていなかった」とシュミットはBuzzFeed Newsに語った。「誰かが、オレのサウンドクラウドや、オレのしていることを見ているとは思わなかった」

    多数の被害者を出す暴力事件を防ぐためには、何を変えなければならないのか。それについては、人それぞれ意見がある。ここ数か月では、女性に対する暴力の表現を、乱射の前兆の可能性としてもっと深刻にとらえるべきだとするコメンテーターが増えている。「けれども、もっと深刻にとらえるとは、何を意味するのでしょうか?」と問いかけるのは、法学者であるメアリー・アン・フランクスだ。

    パークランドの高校生たちは、学校当局に対して、クルーズが自分の元ガールフレンドとつきあい始めたクラスメートを脅迫したことを通報していた。さらにクルーズは、その元ガールフレンドを虐待していたとされている。

    5月にテキサス州サンタフェの高校で銃を乱射し、10人を殺害したとして訴追されたディミトリオス・パゴーチェスは、過去に言い寄ってふられた少女を撃って殺害したとされている。統計的に見ると、ほとんどの銃乱射事件には、親しい間柄のパートナーによる暴力が関係しており、学校で銃を乱射した容疑者のほぼすべてが男性だ。

    この事実は、2014年にカリフォルニア大学サンタバーバラ校の近くで銃を乱射して6人を殺害したエリオット・ロジャーによる銃乱射事件以降、関心を集めるようになっている。ロジャーは事件の前に、自分がまだ童貞であり、女性に拒絶されてきたのは不公平だとする長い声明文を投稿していた。そのためロジャーは、非自発的独身者(involuntary celibate)を自称するインターネットコミュニティ「インセル(incel)」のあいだで英雄視されることになった。

    4月にトロントの繁華街でバンを暴走させ、10人を殺害し、14人を負傷させた25歳の男性は、ロジャーの事件について、「インセルの反逆」がはじまっていると力説し、「最高の紳士エリオット・ロジャー」と称えていた。

    フロリダ州パークランドの高校で銃乱射事件を起こしたクルーズ容疑者は、事件の1年前にユーチューブ上で、「エリオット・ロジャーが忘れ去られることはない」というコメントを書き込んでいる

    法学者のフランクスはBuzzFeed Newsに対して、学校と法執行機関はソーシャルメディアの危険な書き込みに注意し、介入を検討するべきだと述べる。だが同時に、こうも語っている。「将来的に暴力を振るう可能性があると思われても、それを根拠に誰かを拘束することはできません」

    ネット上での脅迫と見なされるのは、どのような行為なのか。その基準となる可能性があった裁判で、米最高裁判所は事実上、判断を避けている。最高裁が2015年、元同僚と元妻、FBI捜査官、さらには幼稚園をフェイスブック上で脅迫したとして4年近く収監されていたペンシルベニア州のアンソニー・エロニスの有罪判決を覆した時のことだ。

    エロニスは、ハラスメントを告発されて職場から解雇されていた。また、別れた妻の申し立てによる保護命令も出されていた。エロニスの主張によれば、フェイスブック上の「脅迫」は、エミネムに影響を受けたラップの歌詞で、そうした状況に立ち向かうためのものだったという(エロニスは最高裁判決の1か月前にも、ガールフレンドの母親の頭をポットで殴ったとして逮捕されている)。

    ドメスティック・バイオレンス被害者の支援組織は、虐待者が遠方からネットを通じて脅しをかける手口が巧妙化しているとして、裁判所は歌詞を装った脅迫を重く考えるべきだと主張していた。また、人権擁護団体は、何が実際の脅迫にあたり、何が合衆国憲法修正第1条で保障される表現の自由にあたるのかを明確にする必要があると訴えていた

    最終的に最高裁が選んだのは、法の細かい解釈上に成り立つ狭い妥協点だった。だが、サミュエル・アリート最高裁判事はエロニスの判決について、「ラップ・アーティストを目指している」と主張しさえすれば、「配偶者を脅迫しても逃げ切れると手引きしているようだ」と警告している(翌年、控訴裁判所は改めて有罪判決を下し、最高裁は再審理を拒否した)。

    ニュージャージー州では、2014年に下された州最高裁の判決により、別の攻撃との強い関連性がないかぎり、ラップ楽曲のなかで暴力行為に言及していることだけを根拠に、検察が被疑者を起訴することはできないとされている。

    シュミットの事件を担当しているジョセフ・ジョルダーノ副検事はBuzzFeed Newsに対して、「なんらかの言論を犯罪として扱おうとする際には、十分に注意しなければなりません」と述べている。パークランドの銃乱射事件以降、エセックス郡では、学校に対する脅迫の可能性がある24件の事例が処理されている。その多くはネット上の書き込みだが、すべてが起訴に至ったわけではない、とジョルダーノ副検事は言う。

    「まさに、ケースバイケースで検証しています」とジョルダーノ副検事は述べる。「時間はかかりますが、こうした事例では、常に確実でなければなりません」

    シュミットが警察署に向かう途中、「スクール・リソース・オフィサー」(学校に常駐する警官)としてジェームズ・コールドウェル高に常駐するポール・マッゼオ巡査が、シュミットを担当していたスクールカウンセラーに電話した。マッゼオ巡査の報告書によれば、そのカウンセラーは、シュミットが精神科治療を受けており、過去に学校に対する怒りを表したことがあると話したという。

    マッゼオ巡査の報告書には、シュミットが曲名に深い意味はないと主張し、プロフィール写真の銃は友人から借りたプラスチックの玩具にすぎず、それがいまどこにあるかは知らないと訴えたとも書かれている。だが、後の警察の調書には、シュミットがその銃を手放し、証拠の「隠滅をはかった」と書かれている。

    警察は、校内で大々的なイベントが開催されているときに、サウンドクラウドの書き込みに「JCHS」の名を出せば、「学校内にいる人々が避難する事態に至る可能性がある」とシュミットは認識していたはずだと主張している。シュミットの自宅と車の捜索では、武器などの「証拠となるもの」はいっさい見つからなかったが、それは重要視されなかった。

    警察は「虚偽の情報により世間を騒がせた」疑いで、シュミットを逮捕した。この罪は、軽罪と重罪の区別がないニュージャージー州では第二級犯罪にあたる。警官による安全性評価では、シュミットは危険性が低く、犯罪歴はなく、負傷した者はいないとされていたが、事故報告書には、シュミットの犯行には「銃による脅し」が関係していたと書かれていた。エセックス郡のジャメル・センパー副検事は、シュミットの起訴を許可した。

    「サウンドクラウドにあの曲を投稿した瞬間に、有罪になったような感じだ」とシュミットは語る。「彼らはオレに申し開きをさせようとはしなかった」

    ニュージャージー州ウェスト・コールドウェルは、ニューヨーク・シティから40キロほど離れた町で、1万1000人ほどが暮らしている。ニュージャージー州のなかでも共和党寄りの傾向が強い地域にあり、犯罪発生件数はきわめて少ない。ウェスト・コールドウェルの世帯収入の中央値は、ごく近くに位置する同じ州のニューアークやパターソンの2市よりも高い。荒廃した家屋や庭を見つけるのは難しく、多くの家はぴかぴかの白いフェンスに囲まれている。

    シュミットは生まれてからずっとこの町で暮らし、小学5年生のときにラップを始めたという。数年間シュミット母子と同居していた祖母と、即興のラップを楽しむこともあった。高校に入ると、自作曲のミキシングや録音を覚えた。

    暴力行為の煽動における音楽の役割は、昔から論争の種になっている。未成年者による犯行の増加が懸念されていた1980年代には、保護者の団体が、子どもが聴くには暴力的すぎたり卑猥すぎたりするアルバムに警告を表示するよう求めた。1999年にコロンバイン高校銃乱射事件が起きた際には、犯人2人に影響を与えたとして、マリリン・マンソンがスケープゴートになったことはよく知られている。それ以降銃乱射事件が起きるたびに、暴力行為における音楽の責任が、政治的な論争の的になってきた。

    だが、自作の音楽を録音し、それを無料で即座に、かつ広く配信できるようになったのは、ごく最近になってからのことだ。ラップが絡む刑事裁判の鑑定証人をたびたび務めているリッチモンド大学のエリック・ニールソン教授によれば、当局はヒップホップに関する懸念や偏見を利用して、そうした事件を起訴に持ち込んでいるという。

    「これはつまり、アート作品は実質的には自叙伝であるという考え方です」とニールソン教授は言う。だが、警察にノンフィクションとして扱われるジャンルは、ラップ・ミュージックに限定されているように見えると同氏は続ける。「気がかりなのは、そうした事例があちこちで目につくようになっていることです」

    シュミットが逮捕されたのと同じ週、ランディ・ロスという名の23歳の男性が、「スクールシューター」と題した音楽ビデオを投稿したとして、テロ脅迫容疑で起訴された。問題のビデオは、ニューヨーク州グリースにある学校2校の外で撮影されたものだった。

    曲中に人名や学校名はいっさい出てこないが、歌詞(「スクールシューターのように奴らを倒す」というフレーズがあった)は「警戒すべき」ものだったと警察は述べた。警官の話によれば、警察がビデオの存在を把握したのは、不安を抱いた近隣住民からの通報がきっかけだったという。それについて警察は、「一致団結し、なんとしてでも子どもたちと学校の安全を守る」コミュニティの一例と表現している。

    地元紙のコラムニストは、「攻撃的な」音楽ビデオに関してロスを尋問したのは理解できるし、問題のビデオは「悪趣味」なものだが、犯罪とはとうてい言えないと指摘している。大陪審も同じ意見だったようで、ロスの起訴は3月に棄却された

    シュミットの弁護人グレイは、エセックス郡でも同様の展開になると期待している。「この事例は、合衆国憲法修正第1条で保障された権利として守られるべきものに完全に該当する」と同氏はBuzzFeed Newsに対して述べた。

    シュミットは身長170センチ、体重63.5キロ。無造作な前髪が額を覆い、後頭部と側面は丹念に刈り上げられている。左手には、割れたハートの小さなタトゥーが彫られている。「ちょっとハートの壊れた男だから」とシュミットは理由を説明する。最近になって、手首まわりに「L-O-V-E」というスティック&ポークのタトゥーをつけ加えた。

    地域の関係当局は、シュミットを危険人物として扱っている。2月28日には、デブリン校長が裁判所に書簡を送り、シュミットが釈放されれば「すべての生徒と職員の安全に深刻かつ重大な懸念」が生じるとして、シュミットの拘留を継続するよう要請した。ジョルダーノ副検事は、シュミットの釈放をめぐる3月1日の法廷審問で、シュミットのソーシャルメディアの書き込みを目にした複数の少女が、いまも不安を感じていると述べた。

    判事はシュミットを釈放し、自宅拘禁に移した。以来、シュミットは自宅にとどまっている。インターネットの使用や、高校の生徒との接触は禁じられている。また、自作の楽曲をサウンドクラウドにアップロードすることもできない。自宅拘禁中の時間のほとんどを、テレビを見たり楽曲を録音したりして過ごし、ときどきはドミノ・ピザを注文する。

    5月1日、あるクラスメートの女子生徒の家族が、「テロ脅迫とサイバーハラスメント」を理由に、シュミットに対する接近禁止命令を取得した。裁判記録によれば、その命令の規定では、シュミットはジェームズ・コールドウェル高のキャンパスに足を踏み入れてはならず、週に一度、加害者更生プログラムを受けなければならないとされている。高校の教頭は、接近禁止命令の審理の場で、シュミットの規律違反履歴について証言した。今後、個別指導と自宅学習の課題を修了すれば、シュミットはジェームズ・コールドウェル高校の卒業証書をもらえる見込みだ。

    「ここ、この町でのオレの人生はめちゃくちゃになった」とシュミットは言う。「人生全部がめちゃくちゃになったとは思っていない――そうは思っていない。でも、ここでは、この町では、オレはもう終わったような気がしている」

    それまでのシュミットの行動を考えれば、あの日のサウンドクラウドの投稿が警鐘となったのは無理もないと、法学者のフランクスは言う。だが、シュミットに司法の鉄槌を下すことが正解だとは確信が持てないとも述べている。シュミットが暴力行為に向かっていなかったのだとしたら、「独房に監禁することで、追いつめることになりかねません」とフランクスは指摘する。

    だが、学校の安全に関するコンサルタントであるケン・トランプは、最近の銃乱射事件の経緯を考えれば、昨今の学校関係者に選択の余地はほとんどないと述べる。「脅迫の大部分が結局は事実無根だということは、学校管理者も認識しています」とトランプは話す。だが、学校管理者にすれば、1人たりともスクールシューターを見過ごすわけにはいかないのだ。

    ジェームズ・コールドウェル高は、学校を封鎖した後の最初の授業日に、動揺してクラスへ行けない生徒のためにカウンセラーを配置した。中止になった音楽コンサートは、3月に改めて開催されることになった。ある生徒は、学校封鎖に着想を得た曲を書き、仕切り直しのイベントで披露した。その曲には、「すべての人に良いところがあると、私は信じている」という一節があった。

    ジョルダーノ副検事はBuzzFeed Newsに対し、シュミットの事件は今後数週間のうちに大陪審で審議される予定だと語った。シュミットが裁判にかけられなくても、逮捕歴は残る。シュミットによれば、この事件の影響でユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)の荷物処理の仕事を解雇されたという。親戚のなかには、彼と距離をとるようになった人もいる。「この町では、誰もがオレを狂人だと思っている」とシュミットは語った。

    この記事は英語から翻訳されました。翻訳:梅田智世/ガリレオ、編集:BuzzFeed Japan