インドで子犬に噛まれた女性、帰国後に狂犬病を発症して死亡

    世界では未だに毎年約5万9000人が狂犬病で亡くなっている。狂犬病の感染が多い国へ渡航する際にはワクチン接種が推奨される。

    65歳のアメリカ人女性はインドでの休暇中に子犬に噛まれた後、狂犬病を発症して亡くなった。

    アメリカ疾病管理予防センター(CDC)によれば、女性は2017年の1月から4月までインドのリシケシで開催されていたヨガのリトリート合宿に参加していた。 宿泊先のホテルの外で、女性ともう1人のヨガ参加者は同じ子犬に噛まれた。 女性は水で傷口を洗ったが、特別な治療は受けていない。

    CDCの疫病率・死亡率週間報告書内のレポートによれば、女性はその後アメリカ・バージニア州の家に帰った。子犬に噛まれてからおよそ6週間後、ガーデニングの最中に腕の痛みとしびれを感じるようになったという。

    3日経っても痛みとしびれを感じたため病院に行ったが、下されたのは末梢神経が刺激されて引き起こされる「手根管症候群」という診断だった。症状を抑えるために、非ステロイド系の抗炎症薬と鎮痛剤を処方されている。

    しかし翌日、女性は不安、不眠、息切れ、水の飲みにくさを訴えて再び病院を訪れた。診断名は「パニック発作」、処方されたのは抗不安薬だった。しかし、彼女はその後も閉所恐怖感、不安、右の肩と腕のしびれと痛みに加え、胸の痛みを訴え続けた。

    不思議に思った医師が血液検査を行うと、心筋酵素の異常値を検出。さらに詳しく調べるため心電図をとった上で閉塞の可能性を確かめるためにカテーテルを血管と心臓の動脈に挿入した。

    この心臓カテーテルでは、女性の動脈に問題は確認されなかったが、その後、 女性は興奮状態となり、水を飲みながら喘ぎはじめたと治療に当たったスタッフは明かす。

    この段階で病院スタッフは狂犬病の可能性を疑った。女性の家族に動物に噛まれたかどうかをたずねたという。しかし時すでに遅く、最初に症状を確認してから18日後に女性は息を引き取った。

    公衆衛生の専門家たちは、ヨガ参加者と救急隊員、病院スタッフ、葬儀場の人々を含めて女性が亡くなる前後に接触した250名を追跡。 そのうちの72名は、狂犬病の曝露後予防の治療を受けた。

    曝露後予防は、症状が出始める前に与えられれば狂犬病を防ぐことができるものだ。通常、症状が現れはじめるのはウィルスへの曝露から約3週間から3ヶ月経過したタイミングだと言われている。

    海外渡航をしたアメリカ人が狂犬病で亡くなるのは、2008年以降9件目だ。

    アメリカではワクチンによって犬の間の狂犬病が撲滅されたが、世界中で少なくとも122ヶ国ではまだ撲滅されていない。

    コウモリやアライグマ、スカンクといった野生動物がウィルスを媒介しているため、アメリカ国内の犬や猫も、いまだに定期的に狂犬病のワクチンの接種を受けている。

    毎年アメリカ国内で約60から70匹の犬と250匹以上の猫が、ワクチンを受けなかったために狂犬病を発症しており、 今回は2008年以来アメリカで24件目の狂犬病による死亡例だ。 世界では、未だに毎年約5万9000人が狂犬病で亡くなっている。

    感染事例の多くは、アフリカとアジアで確認されており、発症者は子どもの場合もある。 CDCは、アメリカから狂犬病がよく見られる国へと渡航する場合は、渡航の前にワクチン接種を検討すべきであると警鐘を鳴らす。

    「犬を介在した狂犬病による人の死亡件数が最も多いインドへ旅行する人。特に動物に噛まれるリスクのある屋外での活動(キャンプ、ハイキング、サイクリング、アドベンチャートラベル、ケービング等)に参加する場合には、狂犬病のワクチンを旅行前に受けることが推奨される」と、バージニア保健局のジュリア・マーフィー氏はCDCの報告書内に明記している。

    この記事は英語から翻訳・編集しました。