世界で初めて、死亡した女性からの子宮提供で子供が生まれた。
2017年12月15日に女児を出産したと、医学誌ランセットで発表された。
子宮移植は珍しいことでない。しかし、死亡した女性からの子宮の提供で子供が生まれるかどうかは分かっていなかった。
子宮移植後に初めて子供が生まれた事例は 2013年のスウェーデン だった。このときは、生存している女性からの子宮提供だった。それから39回の子宮移植が行われて、11人の子供が生まれている。
さらに、死亡した女性からの子宮提供は10回行われた。アメリカ、チェコ、トルコでそれぞれ行われたものの、子供が生まれることはなかった。
今回の出産にあたり、ブラジル・サンパウロ大学の医療チームは「生存している女性の提供者や、その人たちへの手術を必要としない、子宮移植を必要とする女性の健康的な妊娠への道が拓けた。」と述べた。
チームリーダーのダニ・エイゼンバーグさんは「生存している人より、亡くなった人からの方が臓器提供の機会が多い。臓器移植の提供者の枠が広がった。」とランセットで発表している。
今回の事例は子宮を生まれつき持たない、 「ロキタンスキー症候群」の女性に移植された。4500人の女児のうち1人の割合で発症する。しかし、思春期で生理が訪れるまで、診断されない。
2016年9月に、45才で脳死になった女性の子宮を移植する手術を受けた。提供者の女性は3回出産していた。
手術の前に子宮の受容者の女性は、卵巣から卵子を取り出して精子と受精を行い、受精卵を凍結していた。
移植手術を受けてから7ヶ月後に、子宮に受精卵を移して妊娠した。36週間近くが経って、帝王切開で約254グラムの健康的な女児が生まれた。移植された子宮も同時に摘出された。
妊孕性の温存の指導者である、クリーブランド・クリニックのレベッカ・フライト医師は以下のように述べている。「子宮移植の重要な特性は一時的な移植であることだ。」
肝臓や腎臓の移植は受容者に一生関わるものだが、子宮の移植は必要な期間だけに限ることができる。摘出すると、移植された子宮を拒絶する免疫機能を抑える薬の服用を止めることができる。
「処方される薬は女性に副作用をもたらす。腎臓などの他の臓器に影響が出る」
たくさんの腎臓移植を受けた女性が出産をしていることが、薬が妊娠に対して安全であることを示している。
「薬の服用がありながらもたくさんの子供が生まれたことが、薬は子供たちにとって安全なものだと教えてくれる」
死亡した人からの子宮移植のプログラムは、クリーブランド・クリニックも含めていくつかある。フライト医師はクリーブランド・クリニックで行われる子宮移植の臨床試験の主任研究員だ。
クリーブランド・クリニックでは亡くなった人からの子宮移植を2名に行った。初めてのケースは2016年だったが12日後に感染症で摘出を余儀なくされた。2度目のケースは2017年12月で、現在順調に進んでいる。
「彼女は治療の段階をとても順調に進んでる」とフライト医師は述べた。
「私たちは今回の出産の成功のニュースは良いモデルケースになると思い、とても喜んでいる。今回生まれた子供は、死亡した人からの子宮移植の初めてのケースだった。子宮移植後に生まれた子供は10人を超えるが、どれも生きている人からの子宮移植のケースだった」
子宮の問題で不妊の女性にとって希望となる出産だった。
500人のうち1人の女性の割合で、子宮の影響による不妊の可能性がある。
「悲痛な思いを抱える女性は多い。そうした女性が減ることに多くの意味があある。」
これまで、ロキタンスキー症候群の女性は代理出産か、生きている人からの子宮移植で子供を持つことができた。
今回の出産の成功は、友人や家族が子宮移植という危険な手術を、愛する人のためにする必要がなくなったことを意味するとも述べた。
「ドナーを危険な目に合わせない、子宮移植をよりサポートするための選択肢になった」
まだ手術は試験中だが、コストは腎臓手術と同じくらいか、8万ドルになるになることを研究者は望んでいるとフライト医師は述べている。代理出産の場合は8万ドルから12万ドルであることを考慮している。
この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:藤原哲哉