瀕死の乳児が病院に運び込まれることはなかった 彼らは医療行為を拒否し、祈り続けた

    米・オレゴン州在住のサラ・ミッチェル、トラビス・ミッチェルのふたりは、未熟児の双子を病院に連れて行くことを拒み、死に至らしめたとして、服役6年以上を言い渡された。

    2017年3月、日曜日の午後のことだった。サラ・ミッチェル(24歳)は、オレゴン市に住むサラの両親の自宅で、ふたりの双子の未熟児ジニファーとエヴェリンを産んだ。予定日よりも7週間早かった。

    サラの夫であるトラビス・ミッチェル(21歳)も出産に立ち会っていた。その他に、ふたりの家族、オレゴン市にあるフォロワーズ・オブ・クライスト教会の仲間が60名ほどその場にいた。教会からの「助産師」も3名付き添っていたことが、BuzzFeed Newsに提供された裁判所資料でわかった。

    フォロワーズ・オブ・クライスト教会のメンバーは、信仰療法を実践しており、祈りと塗油を受け入れ、医療措置と現代医学を拒否している。

    サラ・ミッチェルは、出生前超音波検査を受けたことはなく、双子を妊娠していることを知らなかった。妊娠期で準備をしたことといえば、『すべてがわかる妊娠と出産の本』を読んだくらいだった。

    誕生後、生まれたばかりのジニファーとエヴェリンは、呼吸器の合併症を引き起こした。

    生まれてから何時間もの間、ジニファーは未熟で未発達の肺に酸素を取り込もうと頑張った、と検察官は話す。家族と教会のメンバーは、ジニファーの上に「手を置き」、父親のトラビス・ミッチェルは、ジニファーに塗油した。

    ジニファーが、呼吸困難に陥り、血色が悪くなり始めると、教会のメンバーが交代で大きな声で回復するよう祈った、と裁判所資料に記載されている。

    その場には60名もの人がいたが、信仰のために、誰も救急車を呼ばず、新生児を病院に連れて行く者もいなかった。

    ジニファー・ミッチェルは、生まれてから約4時間で亡くなった。検死報告書によると、肺には空気がないように思われ、急性呼吸窮迫症候群を患ったとのことである。

    父親のトラビス・ミッチェルは、娘が必死に最後の息をするときに、腕に抱いた、と後日、捜査官に話している。「もう泣き叫ばなかったので、亡くなったのだと分かりました」

    その後、教会の長老が、ジニファーの死をクラッカマス郡の副検死官エリック・トンスフェルトに通報した。到着した副検死官は、寝室で、毛布に包まれた死んだ乳児をあやしているサラ・ミッチェルを発見した、と地方局のKGW8は報道した。

    家にいた人たちは、双子の出産について尋ねられると、曖昧で「形式張った強制された」回答をして、誰も直接こちらを見なかった、と副検死官が話していることが、裁判所資料により分かった。

    ジニファーの双子の姉妹エヴェリンも、未熟児であるために危険な状態で、病院に連れて行くことを副検視官は家族に何度も勧めたが、サラ・ミッチェルの父親であるウォルター・ホワイトは、「助言をありがとう」と言っただけだった。

    そこで、副検死官は警察に連絡し、警察はエヴェリンのために専門の医療を受けた方がよいと家族を説得した、と警察は話している。最終的には、家族はエヴェリンを病院へ連れて行き、呼吸困難の兆候はあったが、酸素吸入をして様態は安定した。そこから子ども病院に転院し、回復した後、エヴェリンは里親のもとへ退院した。

    7月9日、サラ・ミッチェルとトラビス・ミッチェルは、死亡したジニファーと助かった双子の姉妹エヴェリンに対する過失殺人と虐待の罪を認めた。

    ふたりは、懲役6年以上を言い渡された。

    「子どもに適切な医療を受けさせるべきでした。教会の人はみな、子どもに適切な医療を常に受けさせるべきです」と、サラ・ミッチェルとトラビス・ミッチェルは、司法取引の一部として署名した供述書の中で述べている。同教会の司教のひとりであるホワイトも、同様の文書に署名した。

    3名とも、この公式書状を教会内の目立つ場所に、信徒が見えるように掲示することに同意した、とクラッカマス郡の州検察官ジョン・フットは声明で述べている。

    ふたりは免許を持った医療専門家によるさまざまな措置に反対しなかった、と検察官は指摘している。ペットの犬と猫は、定期的に獣医師による措置を受けていた。

    ジニファーは、フォロワーズ・オブ・クライスト教会のメンバーである親が、祈りの代わりに医療措置を放棄したために、過去9年間で亡くなった4人の子どものうちのひとりである、と州検察官事務所は述べている。

    2011年、サラ・ミッチェルの姉シャノンと義兄デール・ヒックマンが、生後間もない息子デイヴィッド・ヒックマンの死に対して、過失致死罪で有罪となり、6年の懲役を言い渡された。デイヴィッドは、未熟児として生まれ、合併症に対する医療措置を受けられなかったために、生後8時間で死亡した。ジニファーが同様の合併症で死亡したのと同じ主寝室で、デイヴィッドも発見された。

    同じ年、レベッカ・ワイランド、ティモシー・ワイランドが、娘のアレイナの左目の上にできたとても深刻な腫瘍を放置し、そのため娘は失明したとして、虐待の罪で有罪となり、懲役90日を言い渡された、と州検察官は話した。

    2010年には、ジェフリー・ビーグリーとマーシー・ビーグリーが、16歳の息子ニール・ビーグリーの腸管閉塞を放置し、死なせたとして、過失殺人で有罪になり、懲役16カ月を言い渡された。

    2009年、カール・ブレント・ワージントンが、娘のエイヴァの気管支肺炎と血液感染を放置して、死亡させたため、虐待の罪で有罪となり、懲役60日を言い渡された、と州検察官は言っている。妻のレイリーンは、すべての刑事罰で無罪となった。

    同教会で有罪を認め、刑事責任を受け入れるのは、サラ・ミッチェルとトラビス・ミッチェルが初めて、と州検察官の供述には書かれている。

    子どものために医療措置を求めるべきであったとふたりが公に認めたことと、他の信者にも医療措置を求めるよう促していることは、「大きな進展が期待できる」と州検察官は信じている。

    同教会のオレゴン支部は、サラ・ミッチェルの祖父が設立した、とAP通信は報じている。教会の起源は、現代医学を拒否し、信仰療法を信じる19世紀末期のペンテコステ運動に由来している、とオレゴニアン紙は書いている。

    1995~98年の間に、教会の墓地に埋葬された78名の子どものうち、少なくとも21名は、医療介入を受けたら生き残った可能性がある、と同紙が1998年に行った分析には記載されている。

    「長すぎる間、親が信仰を理由に子どもに対する医療措置を拒んできたため、この教会の子どもたちは、不必要に苦しんだり、亡くなったりしてきました」と州検察官は供述書の中で述べている。

    「子どもへの医療措置を怠ることで、フォロワーズ・オブ・クライスト教会の親をこの州検察官事務所が起訴することが、2度とないことを願っています」と州検察官は話す。

    「でも、もしこの教会が、この家族の呼びかけを気にとめないのであれば、起訴し続けます」

    この記事は英語から翻訳されました。翻訳:五十川勇気 / 編集:BuzzFeed Japan