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「プロムの投票」で高校から圧力を受けたトランスジェンダー、友人たちから受けた暖かい支援

学校側から、「プロムクイーンの投票に立候補するか、もしくは何にも立候補するな」と要求され、自分は抑圧されたと感じた。デックス・フライアーはBuzzfeed Newsにそう話した。

ジョージア州ゲインズビルのジョンソン高校に通う17歳の生徒。彼は、友人たちからプロムキングに推薦されたにもかかわらず、学校側からプロムクイーンとして立候補するよう強制されたと話す。

自分は男だと自認しているデックス・フライアーがBuzzfeed Newsに語ったところによると、彼の高校はフライアーに対し、3月23日土曜に実施されるプロムに向けて、2つの選択肢のうちどちらかを選ぶよう言ってきたという。それは、プロムクイーンの投票に立候補するか、もしくは何にも出ないかだ。

フライアーは3月15日、校長と指導主事が出席したミーティングに呼び出され、そうした指示を告げられたという。

「彼らは僕を呼び出したあと、僕は法的に男性ではないためプロムキングには立候補できない、それがホール郡(学区)の方針だと話しました」とフライアーは言った。「唯一僕がプロムで立候補できる方法は、プロムクイーンとなることでした」

その内容は「腹立たしく」、学校職員に「抑圧されている」ように感じたと彼は述べる。2週間前にクラスメートらによってプロムキングに推薦されて喜んでいた最中だったため、それはなおさらだった。

「そう告げられたとき、僕は6人のプロムキング候補の一人に上がっていました。馬鹿げています。学校で一番人気な生徒たちの一人だったのに」と彼は続けた。

フライアーによると、校長との面談の際、学区の最高責任者ウィル・スコフィールドからの指示があったと告げられたという。

スコフィールドはこの件について、「われわれの生徒のプライバシー権を保護するため」としてコメントを拒否。しかし、Buzzfeed Newsへのメールの中で彼は、「この件で、われわれの中核的使命を実質的に妨げられることは望みません」と述べた。

「われわれにとっての使命の中核は、学区の生徒たちに教育を提供することです。作為または不作為の行動によって、この使命を実質的に妨げる可能性のある全国的な社会的・法的問題の中心に我々の学区を置くことに関心はありません」と同氏は回答した

また、プロムに関しては、生徒たちが「ともに親睦を深め地元の学校を祝う」イベントであり、続けて欲しいと述べた。

この知らせがジョンソン高校に伝わったあと、フライアーの同級生で友人のフィオナ・サンディは、スコフィールドにメールを送り、生徒全員に対して「不寛容のメッセージを送っている」と彼女が感じたこの決定を再考するよう求めた。同じメールには、他のクラスメート数人の名前も連ねられた。

生徒たちは署名サイトChange.orgで、「トランスジェンダーの少年をプロムキング候補に」と名付けた署名運動を始めた。現在まで1万1300人を超える署名が集まっている。

「僕が法的に男性でないというだけで、男子高校生全員がチャンスを持つものから締め出されてしまうのは、本当に腹立たしいことです」とフライアーは述べる。「一人の生徒として、投票に立候補する権利があると思いました」

フライアーによれば署名運動は、ロシアやドイツを含む世界中の人々に対して、手を差し伸べ力を貸すよう呼びかけたという。

「本当にすごいことです」とフライアーは語る。

この議論と署名運動に世間の注目が集まったことで、プロム当日の土曜、ジョンソン高校はフライアーと生徒たちに「妥協案」を示してきた、とサンディはBuzzfeed Newsに話した。

サンディによると、学校職員はフライアーについて、「見た目の性別の区別にかかわらず選ばれた2人のプロム代表」のうちの一人だと発表したという。もう一人の勝者も男性だった。

サンディは、「性別の区別のないプロム代表を設けるという方針が、永続的なものなのか、あるいは、今までのプロムキングとプロムクイーンの形に戻るのかはまだわかりません」と話している。

プロムの前に適切に状況が対処されなかったことに対して、フライアーは少し「怒って」いたと話す。しかし、結果的にはこの件から、はるかに素晴らしいことを経験できたと考えている。

「はじめ状況に介入があったことに多少怒りを感じていますが、この経験のおかげで多くの支援と愛情を受けました。それは、何というか、とても圧倒的なものでした」と彼は話す。

「僕がプロムに到着したとき、スタッフ全員が『ハンサムだね、会えて嬉しいよ』と伝えてくれました。受け入れられて本当に良かったと思いました」とフライアーは述べる。

彼と彼の友人は、特別にトランス・フラッグ色に塗ってデザインした仮面を持ってプロムに参加した。この仮面は、同級生のアニヤ・ノーマン、スヘイラ・キプカクリ、ライリー・キャットリッジが作ったものだ。

プロム・ナイトの後、フライアーは家族と話し合い、GoFundMeでプロジェクトを立ち上げ、彼の性転換手術の資金を集めようと決意したという。このクラウドファンディングのキャンペーンページには「金額はかなり大きいですが、胸の手術とテストステロン供給をまかなえます」とある。

フライアーは以前、スコフィールドと学校長に対して、「自分自身についての自分の考え方や感じ方を、政治的関与なしに表現できる権利」を認めて欲しいと求めたことがある。

「トランスジェンダーの子がどのくらい学校に通っているかはわかりませんが、とりわけ学校という状況では、こうした経験をしなくてはならない状況に、誰にもなって欲しくありません。他の人と同じでないから、同じ権利を持つ資格はない、と言われるのは辛いことです」

フライアーは、彼を支援してくれたクラスメートたちに大いに感謝していると語る。

「僕には、そばにいて欲しいと頼むことができる、とても協力的な友人たちがいます。実際に今、1ダースくらいの友達が側にいてくれていますよね」とフライアーは、笑いながらBuzzfeed Newsのインタビューに答えた。「彼らはただ、僕が大丈夫かどうか確認したかったのです」

この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:新多可奈子/ガリレオ、編集:BuzzFeed Japan