29歳のメイガン・マティウッゾは、ニューヨーク州エリー郡ハンバーグに住むプロのウェディング写真家だ。彼女は、1週間前に第1子を生んだばかり。夫婦は息子をイーストンと名づけた。
イーストンが生まれる前、マティウッゾは、息子の誕生をどうやって記録するか考えていた。写真家の友人たちは、一緒に分娩室に入って、生まれる瞬間を撮ってあげるよと言ってくれたが、彼女は別の方法を思いついた。
自分にしか撮れない、特別な1枚を撮るつもりだった。
マティウッゾはBuzzFeed Newsに、「自分が見ているものを、自分の視点から撮った、そんな写真が撮りたかったのです。息子の初めての呼吸や、息子がこの世界で見ているものを撮りたかった」と語った。
そこで彼女は、出産の最中に、生まれてくる赤ちゃんの初めての写真を自分で撮ろうと考えた。
「みんな、私の頭が変になったと思ったようです」と彼女は笑う。
しかし、12時間の陣痛に苦しんだその日、最後にいきんだときに、マティウッゾはカメラをつかみ、母親の視点から、生まれてくる息子の実に驚くべき写真を撮影した。
マティウッゾは、出産後にこの写真を見ると、撮影が上手くいったことに「幸せで胸がいっぱいになる」と言う。だが、計画と成功までの道のりは容易ではなかった。
まず、撮影するときの照明と状況に合うよう、カメラの設定を調整した。夫には、ほぼ出産の間中ずっとカメラを持っていてもらい、最後の瞬間に、素早くカメラを手渡してもらえるよう段取りした。
出産の日は、ちょっとした問題が起こり、実行が予定より難しくなった。
「麻酔が完全に効いていなかったんです。お腹の左側に麻酔がかからなくて、陣痛はとても激しいものでした」と彼女は説明する。「途中で夫を見て、『できるかどうかわからない』と言いました」
しかし、「やらなかったら後悔する」とわかっていたため、懸命に頑張った。
「いきみ始めてから1時間くらいして、先生が『これでいきむのは最後ですよ』と言いました。私は顎を引いて胸につけ、お腹の上にカメラをバランスよく置いて、ファインダーを覗き込み、撮影を始めました」
「まず、赤ちゃんの頭のてっぺんが見えました。それから両手……。素晴らしい光景でした」。彼女はその瞬間を「シンバ(ライオンキングの主人公)が世界に紹介される瞬間」と呼んだ。
「カメラを投げ出すようにして、再び夫に持ってもらいました。スタッフが、赤ちゃんを私の胸の上に乗せ、きれいに拭き始めました」
最後の陣痛は、信じがたいほど痛かったという。そこに写真家としての撮影プランが加わり、状況が複雑になった。だが、誕生の瞬間を撮りたいという強い思いが、痛みを和らげてくれたこともわかった。
「意識が、痛みから反らされたのです」と彼女は説明する。「これは私の息子、私の子ども。息子を見たとき……そのときの気持ちは言い表せません。どんな姿をしているのか、どんな子なのかもわからないまま、生まれるまでずっとお腹の中にいるのです。ようやく元気な赤ちゃんに会えたときは、幸せではちきれそうな気持ちになります」
非常にユニークな誕生の瞬間の写真が撮影できたので、自分の計画はまったく「クレイジーな要求」ではなかったと思う、とマティウッゾはつけ加えた。
マティウッゾは陣痛促進剤を打たれる直前に、病院のスタッフに対して、天井の明かりを消して、撮影のためにベッドの端の明るい照明だけ残しておいてほしいと依頼した。
マティウッゾは、シスターズ・オブ・チャリティ病院の協力と、ネイバーフッド・ヘルス・センターのマリア・ラゴプーロス医師の助けがあったからこそ、実行することができたと大いに感謝している。
出産を控えていて、自分もこうした写真を撮影してみたいけれど、プロの写真家ではないという人たちに対して、マティウッゾは、十分な準備をしてから出産に入るようアドバイスをしている。
マティウッゾは、どんな計画もすべて、実行する前に医師に相談したという。医師は、マティウッゾが妊婦として健康だったため、ゴーサインを出した。
さらにアドバイスは続く。「事前にカメラに親しんでおき、どれだけ素早く設定を変えることができるか確認しておいてください。自分のカメラを知っておくことです。あとで見たらピンボケしていたということがないように」
だが、こうも付け加える。「写真は、完璧に撮れている必要はありません」。つまり、思い出として残ればいいのだ。
「みなさんも、大事な瞬間についてはプロの写真家に頼んで撮影してもらい、思い出にするでしょう。プロの写真家であり、特にウェディング専門の写真家である私にとっては、今回の撮影は同じ考えからでした」とマティウッゾは言う。
「その瞬間を自分だけでも覚えていられるかもしれませんが、記憶とは色あせるものです。私にとって写真とは、幸せの瞬間、ほっとしたその瞬間を思い出すためのものなのです。息子はここにいて、元気にしています。それを写真に残しておくことは素敵なことだと思います」