100万人近いフォロワーを抱えるあるインスタグラマーが「詐欺師」と呼ばれる事件が発生した。
今回、様々な批判の的となっているのはアメリカで著名なインスタグラマーの1人、アギー・ラルが始めたある活動だ。
彼女はフォロワーに対してこれまで培ってきたノウハウを教える12週間プログラムを開始した。テーマは「あなたのインスタグラムの育て方」だ。プログラムを紹介する中で、彼女は「ただの旅行好きが年収1000万超えブロガーになる裏側」も明らかにするとしていた。
彼女の成功の裏にある物語や工夫を知りたいと考えるフォロワーは後を絶たない。だからこそ、彼女はこの期待にプログラムを開設することで答えようとしたという。このプログラムは「単なるSNS上のテクニックだけでなく、写真やビデオの撮影技術やビジネス、さらにはお気に入りのクリエイターのインタビューまでカバーする」とコンテンツが盛りだくさんなものとして紹介されていた。
その裏には単なるアカウント運用ではなく、ビジネスとして成功するためのプログラムにしたいという狙いがあったようだ。
「トラベルブロガーになりたいと考える人にとって有意義なものになることはもちろんのこと、自分を成長させて好きなことで生きていきたいと考える人にとっても学びの多いプログラムとなるはずです」とウェブサイトで説明していた。
このプログラムの受講にかかる費用はおよそ500ドル（約5万円）だ。
「この価格設定には理由があります。私は受講者にとって気軽に申し込める価格にはしたくありませんでした。自分への投資として本気で受講する人を集めるため、真剣でない人が受講を諦めるように、少し高めの価格設定にしています」
ラルはBuzzFeed Newsの取材に対して、最終的にプログラムに申し込んだのは380人だったと明かした。1人497ドルの受講費を徴収したということは単純計算で19万ドル（1900万円）を稼いだ計算になる。
当初、このプログラムは9gつ17日にスタートし、12月半ばまで続くとされていた。期間中は毎週新たなコンテンツが提供されるという約束とともに…
しかし複数の受講者への取材を行った結果、彼女の説明とはかけ離れたプログラムの実態が明らかとなっている。ある受講者はこれは「詐欺だ」と主張する。
「Wannabe Influencer（インフルエンサーになりたい）」という仮名を用いて発信を行うある受講者は「もう十分だ」といまの気持ちを述べ、Mediumに「セレブなインフルエンサーに私は騙された」と書き込んだ。
このユーザーの主張を受けて、ラルは「希望者には全額返金を行う」と宣言している。
「Wannabe Influencer」は現在3万人を超えるフォロワーを抱えている。彼女はラルのファンからの報復を恐れ、実名を公表することを避けている。ラルは当初、もしも満足できなければ1週目で退会することも可能だと説明していたと語る。
彼女が最初に危機感を抱いたのは、ラルが受講者全員にこのプログラムの受講をすすめるアフィリエイトリンクを貼るように指示した時だった。さらには、受講者に対してオリジナルのインスタグラムのフィルターを売ろうとしていたこともある。
「一体どの口で、自分らしく生きるためのプログラムだと主張してるのか理解できません」とBuzzFeed Newsに彼女はコメントした。
別の受講生、ジュリエット・ハットリーはSNSをマネジメントする仕事についており、自身のビジネスをより成長させるためにこのプログラムを受講していた。しかし、その実態は彼女の満足いくようなものではなかった。
「なぜ彼女は私たちにこのプログラムの受講者を増やすための手伝いをしろと言うの？アフィリエイトリンクを通じて申し込んだ受講料の10%はリンクを貼った人へ分配されるとしても、それが彼女の利益のためであることは疑う余地がありません」と困惑した表情で打ち明けてくれた。
プログラム開始から6週間はラルからの動画が送られてきていた。しかし、その後更新が止まった。ラルはBuzzFeed Newsに対して、「66本の動画のうち4本を健康的な理由および不安定な電波状況のために」送ることができなかったとしている。
このような説明がなされているが、その間にも彼女は普段通り写真をインスタグラムへと投稿し続けている。このあまりに不誠実な説明に、受講者たちも困惑するばかりだ。
全額返金を求めた別の受講者は、このプログラムは期待に沿うレベルになかったとしている。「Wannabe Influencer」は彼女の他に35名の参加者が返金を求めている旨を証明する文書をBuzzFeed Newsに提示した。
ハットリーも全額返金を求めている受講者だ。
「彼女から送られてくる動画はいつだって5分にも満たない短いもの。受講者と交流しようともしない。写真に映るときは決して妊娠中だとバレないように、とかスタバで働いている人は自分の才能を浪費している、なんて彼女のコメントを目にして気持ちが離れていった受講者も多いと思います」
「しかも、彼女が提供するコンテンツの中身はググれば出てくるようなものばかり。500ドルの価値なんてない」
彼女は全額返金を求めたが、ラルに断られている。そんなとき、彼女が見つけたのがプログラムを提供しているプラットフォーム・Techableの1ヶ月限定の返金ポリシーだ。
「人々はプログラムの質に怒りを露わにしています。彼らの多くはプラットフォームに対して返金を求め続けています」
Techableの運営会社へ取材をしたところ、そのプログラムがプラットフォームの提供する決済システムを使用しており、申し立てが30日以内に行われた場合はTechableが各ユーザーに対して返金する権利を持っていると答えた。
「このプログラムを提供しているオーナーは我々の返金ポリシーに準拠していないことは明らかです。30日以内に届いた返金の要求に応えることはルールに明記されています」
ハットリーはラルと交渉し、Techableにも申告したことで手数料の20ドルを差し引いた全額が返金された。しかし、その後、彼女のインスタグラムアカウントはプログラムのグループからすぐさまブロックされた。
「Ivangellys」というインスタグラムアカウントを運営する女性は、Techableに対して訴訟を辞さない構えを見せていたとBuzzFeed Newsに対して証言している。
「数分後、私のもとに要求する全員へ返金手続きが行われるというメールが届きました」
ラルはすべての返金手続きは12月16日までに完了する見込みとコメントしている。
ラルは受講生へと宛てたメッセージの中で「もしも、私が提供していたコンテンツや動画が皆さんの期待に沿う内容でなかったとしたら、心の底から申し訳なく思います。申し訳ありませんでした」とコメントしている。
そんな中で受講生の1人、「Taimi」はラルだけが一方的に責められるこの状況はあまりにアンフェアだと語る。
「もちろん、ラルのプログラムは私が期待したものとは全く異なるものでした。でも、誰にとっても役立たずなわけではありません」
「Wannabe Influencer」もプログラムの大部分には不満を示していたが、写真家とのQ&Aは非常に役に立ったとコメントしてる。ラルが投稿した動画は「モチベーションをアップさせる内容だった」とも。
「動画やコンテンツが予定通りに提供されていなかったとしても、ラルが誠実に対応してくれていれば受講者の怒りはここまで過熱することはなかったと思います」
「Taimi」は返金措置を取る予定はないという。ラルに対してネット上で辛辣な言葉が浴びせられている状況に申し訳なさを感じているのだという。
彼女は当初、メディアの前でコメントすることを避けていた。しかし、こうした問題がありながらも新規の受講者を受け入れている実態に疑問を感じているという。そうした違和感から、声を上げることを選んだ。
「アギー・ラルは新規の受講者からお金を受け取ったまま、彼らに対して何ら説明をしていません」
「それはさすがに間違っていると感じました」
この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳：千葉雄登