ワシントン州の高齢夫婦が無理心中「もう医療費を払えない」

    無理心中をした高齢の夫婦が書き残した複数のメモには、妻がかねてから重い病気だったことと、医療費を払う余裕がもうないことへの不安がつづられていた。

    2019年8月7日、ワシントン州ワットコム郡ファーンデイルにある住宅で、高齢の夫婦が亡くなっているのが発見された。「これ以上は医療費を払い続けられない」という不安がつづられたメモが残っており、当局は無理心中だったとみている。

    郡保安官事務所の保安官代理は同日、77歳男性から911に緊急通報がかかってきたのを受けて、その住宅に急行した。その男性は、電話に出た指令員に対して、自殺するつもりだと告げていた。

    ワットコム郡検視官は、2人の身元をブライアン・ジョーンズとパトリシア・ホイットニー=ジョーンズであると確認した。夫のブライアンは911の指令員に対し、警察のために情報と指示を書いたメモを準備してあると話していた。

    保安官事務所は声明で、「指令員は電話を切られないように努めたが、うまくいかなかった」と述べている。「男性は、『私たちは通りに面した寝室にいる』」と言うと、電話を切った」

    保安官代理が男性の家に到着すると、専門の交渉人が1時間ほど、夫婦に電話をかけて接触を試みたり、メガホンで呼びかけてみたりしたが、無駄だった。そこで保安官代理は、カメラが搭載されたロボットで室内を確認したところ、ブライアン・ジョーンズが、妻パトリシア・ホイットニー=ジョーンズの隣に横たわっているところを発見した。2人が銃弾によって死亡したことは明らかだった。

    室内には複数のメモが残されていた。パトリシア・ホイットニー=ジョーンズがずっと重い病気を患っていたことに加え、医療費を払う余裕がもうないことへの不安がつづられていたと、保安官事務所は述べている。

    当局によれば、近親者に宛てたメモも残されていた。また、住宅内にいた飼い犬2匹は、動物愛護協会に引き渡された。

    保安官事務所は、無理心中だった可能性が高いとみて捜査している。

    保安官ビル・エルフォは声明で、「大変痛ましいことに、ワットコム郡に住んでいる高齢者が、心中するしか方法はないと考えるほど絶望的な状況に追い詰められてしまった」と述べた。「助けがほしかったら、いつでも911に通報してほしい」

    アメリカでは、高齢者の医療費支出が数十年にわたって増加し続けている。2014年には、アメリカ全人口における高齢者の割合はほぼ15%だったが、全体の医療費支出における割合はおよそ34%だったことが、米メディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)によって明らかになっている。

    同じく2014年には、65歳以上の高齢者1人あたりの医療費支出額は2万ドル近くに上っていた。この額は、子ども1人あたりの支出額3749ドルの5倍以上、成人19~64歳の1人あたりの支出額のほぼ3倍だ。

    CMSの2014年データによれば、65歳以上の高齢者が自己負担した1人あたりの医療費は2925ドル、85歳以上の場合は5925ドルと、こちらもほかの年齢層より多くなっていた。


    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:遠藤康子/ガリレオ、編集:BuzzFeed Japan