ビヨンセの公式サイトは障害者差別? 差別禁止法を根拠に提訴される

    訴状によると、ビヨンセの公式サイトは視覚障害者のオンラインアクセスを支援する機能が不十分なため、原告は使いたくても使えないそうだ。

    ある目の不自由な女性が米国時間1月3日、ビヨンセの所属事務所、Parkwood Entertainmentを相手取って民事訴訟を起こした。ビヨンセ公式サイト「beyonce.com」は米国の障害者差別禁止法(ADA)に違反しており、視覚障害者が使えないというのだ。

    ニューヨーク州南部連邦地方裁判所に提出された集団代表訴訟の訴状には、beyonce.comは視覚障害者のオンラインアクセスを支援する機能が不十分なため、原告は誰かの助けを借りなければ利用できない、とある。

    目の不自由な人へも平等なウェブアクセス権を提供すべきとADAに定められており、視覚障害者向けの支援機能を提供しないことがADA違反に該当する、というのが原告の主張である。

    訴状には、「音楽は、視覚障害者が健常者と完全に同じ立場で楽しめる唯一のエンターテインメントである」と記された。そして、ファンは公式サイトを通じてアーティストを知り、最新情報やツアーの情報を入手し、グッズを購入する、と指摘した。

    さらに「視覚障害を抱えているファンの場合、アーティストとファンとのつながりが不幸にもそこで断たれてしまう」と書かれていた。

    訴えを起こしたニューヨーク在住のメアリー・コナーは、矯正しても十分な視力の得られない法定盲人で、パソコンを使うには表示内容を音声出力させる画面読み上げソフトが必要不可欠だそうだ。

    訴状によると、何年も前からビヨンセのファンであるコナーさんは公式サイトを使おうとしたのだが、できなかったという。

    代替テキスト、情報入力を支援する機能、操作性の高いドロップダウンメニューなどが不十分なため、視覚障害者は入力すべき場所を見つけられず、オンラインフォームを埋められないのだ。

    「Parkwoodの運営しているBeyonce.comでは、多彩な商品、サービス、割引特典などが広く提供されている。ところが、視覚障害者にとっては、アクセスが不可能でないとしても、利用を困難にする障壁が多数存在する」(訴状)

    BuzzFeed NewsはParkwoodの担当者に問い合わせたが、1月5日時点でコメントは得られていない。

    1990年に制定されたADAには、ウェブサイトへの明確な言及はない。ただし、インターネットのアクセスビリティ向上を目指しているBureau of Internet Accessibility(BoIA)によると、ウェブ利用に困難を伴う人々も保護する法律だと拡大解釈されてきた

    ウェブサイトは事業運営の一環と考えられており、広くサービスを提供する政府機関や民間企業が障害の有無で差別することをADAは禁じている。そのため、ウェブサイトもADAに違反してはならない、という解釈につながるのだ。

    専門家によると、今回のビヨンセ公式サイトに対する訴訟と同じく、ウェブサイトのADA違反を理由に企業や政府機関を訴える事例が近年増えているという。2017年には、連邦裁判所で800件を超える提訴があり、Nike、Burger King、Pandoraなどが訴えられた。

    フロリダ州の連邦裁判所は2017年、そうした提訴の最初の事例と考えられる裁判でADA違反を訴えた視覚障害者に勝訴の判決を言い渡し、ウェブアクセシビリティ専門家の策定したガイドラインに合わせてサイトを改修するようスーパーマーケットチェーンのWinn-Dixieに命じた

    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:佐藤信彦 / 編集:BuzzFeed Japan