欧州各地にいるIS帰還兵たち 当局も把握しきれず

    戦闘員の多くは、武器や爆弾の専門知識と、過激なイデオロギーを身につけてきた。

    IS(イスラム国)の戦闘員として、シリアやイラクで戦った何百人ものヨーロッパ人が今、欧州大陸に帰ってきている。しかし、欧州の治安および情報当局は、その全員を監視することができていない。

    欧州当局は、パリとブリュッセルでのテロ攻撃をISの継続的なテロ活動の一環だととらえている。一方で、欧州に帰還した戦闘員たちの追跡は大きな課題となっている。

    これまで、 4千人から6千人の人々が ISの戦闘員としてシリア、イラク、リビアで戦うため、欧州各国から旅立っていった。そのうち約10%が、既にヨーロッパ大陸に帰って来たといわれている。多くは、武器や爆弾についての専門知識と、過激なイデオロギーを身につけて戻ってきた。

    「ISに加わった人々は、戦士としての訓練を受けています」と、フランスでイスラム戦闘員追跡の任務を指揮する上院議員ナタリー・グレは、BuzzFeed Newsに語る。「私たちは、これを新しい脅威ととらえています」

    欧州各地に、400~600人いると推定される帰還戦闘員。ヨーロッパ各国が共有している情報は乏しく、 当局は監視することができていない。「トルコはベルギーに情報を送ったと言っていますが、誰もそれに注意を払っていませんでした」とグレ。「私たちはもっと協力する必要があります」

    IS戦闘員の中には、負傷して戦場にうんざりした者や、ISに幻滅した者もいたかもしれない。そうだとしても、帰国した戦闘員の大半は、その国の情報当局に難題をもたらすと米のテロ対策の専門家、マルコム・ナンスは指摘する。ナンスは、フランス情報当局が自国内にいる戦闘員を「非常によく把握している」と言いつつ、「国内にいる人なら誰でも追跡できるというわけではない」と付け加えた。

    グレは、仏当局が国内にいる戦闘員を把握する能力について「当面は非常に不安に思っています」と懸念する。

    ナンスは、ヨーロッパにいるISの工作員の人数は70人程度であり、彼らのテロを実行する能力は、様々だと語った。また20〜30人の小さなグループの人たちでも大惨事をもたらしうるとも語った。

    ヨーロッパでテロが起こる可能性はこれからも高い、と米ランド研究所国際安全保障・防衛政策センターの、セス・ジョーンズ局長もBuzzFeed Newsに語った。

    「ISはヨーロッパに、影響力のあるメンバーを置いています。彼らは、ヨーロッパは異教徒の国であり、攻撃対象だと見ているのです」

    イラクやシリアで領土を失いつづけているISは、自分たちの領土の外での攻撃に比重を移していると、ジョーンズは言う。領土が縮小すれば戦闘員が余剰となるため、多くの戦闘員たちが怒りの矛先をヨーロッパに向けることも想定できる。

    ISがヨーロッパを標的にしているという、明確な情報はない。しかし、グレはフランスと周辺諸国は、いまだ危険にさらされていると語った。「全ての政府が、警戒レベルをかなり高いレベルに設定するべきだと考えています」とグレ。「私たちが非常に危険な状況にいることは、疑う余地もありません」

    ジョーンズは、ヨーロッパの緊張状態はしばらく続くだろうと語る。

    「当局が監視できる人数よりも多くの監視すべき人たちが、欧州にいるのです」