NY連続爆破 アフガン移民のラハミ容疑者とは?

    家族が経営するレストランで働いていた容疑者。家族はイスラム教徒への差別に対して訴訟を起こしていた。

    米ニューヨーク市とニュージャージー州の連続爆破事件で、連邦捜査局(FBI)などは9月19日、アフマド・カーン・ラハミ容疑者(28)の身柄を拘束した。5件の殺人未遂の容疑がかけられている。

    アフガニスタン生まれでアメリカ国籍を持っていた容疑者は、どのような生活を送っていたのか。

    19日朝、ニュージャージー州リンデンでの銃撃戦の末、ラハミ容疑者は身柄を拘束された。

    ニューヨークのビル・デブラシオ市長は「テロ行為だ」と断定。「他に容疑者はいないとみられる」と話した。

    FBIのウイリアム・スゥイーニー副長官は「どのように過激思想に染まっていたかはまだわからない」と述べている。

    ラハミ容疑者

    アフガニスタンから

    ラハミ容疑者は、アメリカ国籍を持っている。1988年1月23日、アフガニスタンに生まれた。NBC Newsによると、7歳のときに家族とともにアメリカに亡命したという。

    2005年、ラハミ容疑者の父親は4万5千ドル(約460万円)の債務を抱えて個人破産している。そのときの書類によると、父親はすでに離婚していたが、8人の子どもがいた。

    ラハミ容疑者が1年のときに通った高校の同級生、ハキーム・エズへアリーさん(27)はBuzzFeed Newsの取材に「とても面白くて、クラスのお調子者だった。誰とも仲良くやって、とても親切なやつだった」と話した。

    ラハミ容疑者が同級生たちと冗談を言い合ったり、スポーツの話をしたりするのを思い出すという。

    「数年後、こんなことをするなんて、思いもしなかった」

    Fox Newsによると、ラハミ容疑者は高校で知り合った女性(26)との間に娘がいる。この女性は、容疑者は養育費を払っていなかったと話しているという。

    また、この女性はFox Newsに対し、容疑者は西洋の文化に苛立っていたと話す。

    「故郷はどう違うかをよく話していました。アフガニスタンにはホモセクシュアルはいないとも。あるとき(容疑者が)娘とテレビを見ていて、画面に(軍の)制服を着た女性が映ると『これはとても悪い人だよ』と言っていました」

    「アメリカ文化とは距離を置いているようでしたが、こんな一線を越えるとは思いませんでした」

    New York Timesによると、ラハミ容疑者は2014年、武器の所有と加重暴行の容疑で逮捕されている。2008年には交通反則金の不支払い、2012年には接近禁止令の違反で、収監されている。

    ここ数年で変化

    ラハミ容疑者はニュージャージー州エリザベス市にある、家族が経営するレストラン「ファースト・アメリカン・フライドチキン」で働いていた。店の上に住んでいたとみられる。

    ラハミ容疑者の知人、フリー・ジョーンズさんはNew York Timesの取材に、ラハミ容疑者は「ここ数年で急激に変わった」と振り返る。ジョーンズさんは、このレストランのために「チキン・ジョイント(チキン料理店)」という歌を作ったラッパーのひとりだ。

    ジョーンズさんによると、ラハミ容疑者は4年ほど前、アフガニスタンに渡った。アメリカに帰国すると、伝統的なイスラム教徒の服装をするようになったという。

    ヒゲをのばし、仕事中に祈るようになった。「態度が厳粛になり、心を閉ざすようになった。全く別人になったようだった」

    CNNによると、ラハミ容疑者はパキスタンも何度も訪れていた。うち、1回は1年ほどに渡った。パキスタン人女性と結婚したという。

    AP通信によると、ラハミ容疑者は2014年、アルビオ・シラズ下院議員の事務所に、妊娠中の妻にビザを発行するようにメールで頼んできたという。だが、この妻がアメリカに入国したかはわかっていない。

    店をめぐってトラブル

    容疑者の父親らは2011年、エリザベス市や警察、近隣住民らが、イスラム教徒への嫌がらせなど人権侵害をしたとして、訴訟を起こしている。

    訴状によると、ラハミ容疑者の父親と兄弟2人は2002年、「ファースト・アメリカン・フライドチキン」を始めた。

    店があるエリザベス市は翌2003年、住宅地区や商業地区において、住宅の階下にある小売店が午後10時から午前6時に営業することを原則禁止した。

    この営業時間をめぐって、同店は近隣住民らと対立してきた。

    New York Timesによると、エリザベス市のクリスチャン・ボルウェイジ市長は「近所から苦情が絶えなかった。市議会は午後10時に閉店するように議決した」と話した。

    2008年以降、営業時間の制限に反したとして、出頭命令などをたびたび受けた、と家族側は主張。2009年4月〜2011年2月、警察や地元の事業主たちが、午後10時に閉めさせようと「嫌がらせ、侮辱、脅し、報復」をしてきたという。

    警察からは「レストランは地域社会に危険。周辺では犯罪が多発している」、近所の人からは「イスラム教徒はここで営業するべきではない。イスラム教徒は厄介だ」と言われたこともあった、と主張している。

    BuzzFeed Newsの取材に、近所の人は「家族は周りと関わり合わなかった。誰かと話すこともなかった」と話した。

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    担架で運ばれる容疑者

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