6月1日、パレスチナ自治区ガザ地区での抗議デモで負傷者の救護にあたっていた医療ボランティア、ラザン・ナジャルさん(21)が、イスラエル軍の発砲で胸を撃たれ亡くなった。翌週7日、イスラエル軍は生前のナジャルさんが取材に答える動画に編集を加えてTwitterに投稿、波紋を呼んだ。
ナジャルさんの死を受けて、Twitterでは多くの人が#AngelOfMercy(慈悲の天使)のハッシュタグをつけて彼女を悼んだ。
イスラエル軍の動画には「ハマスが人間の盾を使うのをやめさせるべき」の文言がある。
30秒ほどに編集された短い動画の字幕では、ナジャルさんがハマスのために「人間の盾」になる、と発言しているように書かれている。ハマスは反イスラエルの立場を取る武装組織で、米国等がテロ組織として指定している。
しかし、レバノンのマヤディーンテレビの取材に答えた編集前の動画を見ると、実際にはナジャルさんが「私は救護にあたる人間の盾として、前線で負傷した人を保護、救助するためにここに来ています」と話しているのがわかる。
「ラザン・ナジャルはハマスのプロパガンダが作り上げた慈悲の天使などではない」。イスラエル軍のアヴィハイ・アドライ報道官は、細部を編集した動画をTwitterに投稿し、そう書いている。
イスラエル首相府のオフィル・ゲンデルマン報道官も、ハマスがナジャルさんを「人間の盾」に使ったとTwitterで批判した。
ゲンデルマン報道官はAFP通信に対し、編集された動画の使用を擁護した上で、「人間の盾として行動した以上、彼女は医療要員ではないということだ」と述べた。
イスラエル軍が投稿した動画には、すぐに批判が集まった。
イスラエル軍報道官はBuzzFeed Newsに対し次のように話している。「これはパレスチナ側がナジャルさんの行動を『白衣の天使』として宣伝するためにソーシャルメディアで拡散した映像だ」
「だが現実にこの動画が示しているのは、ハマスが一般市民を利己的に利用し、危険地域に送り込んで、イスラエル市民と治安部隊へのテロ行為を行う者に対する人間の盾にしているという事実だ」