ポップ界のスーパースター、アリアナ・グランデと、人気コメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ(SNL)」の出演者であるピート・デヴィッドソンが破局した後、米ウィスコンシン州マーケット大学のソーシャル・メディア・ディレクターであり特任教授のティム・シゲルスキーさん(37)が、両者の関係が破局した理由をほのめかすリンクをツイートした。
「アリアナ・グランデとピート・デヴィッドソンが別れた理由がこれだなんて信じられない」とミルウォーキーに住むティムさんは書いている。
他の人も引用ツイートで、ティムさんのアイデアに便乗し、後に続いている。
「これは必読。びっくりした」と書いている人もいる。
だが、リンクをクリックすると、ゴシップ記事ではなくVote.orgの有権者登録ページが開く。
この試みはTwitter上で広がって、ファッション誌の『Elle』でさえも、公式アカウントを使って有権者登録ページへ誘導するいたずらをし始めた。10月18日の午後、キム・カーダシアンとカニエ・ウェストが離婚というフェイク・ニュースをリンク付きでTwitterに投稿し、Twitter上は騒然となった。
同日の夜には、同誌は当該ツイートの件を謝罪した。
「悪い冗談でした。有権者登録のことで夢中になり、判断力に曇りがありました。誠に申し訳ございません」
全体として、この作戦がどのくらい成功しているかは定かではない。
だが、デヴィッドソンとグランデ破局のトリックで、実際に有権者登録をする気になった、中間選挙で投票する気になった、という人の話をBuzzFeed Newsは聞いてきた。
カリフォルニア州ヴィクタービル在住のトニーさん(29)は、まんまと引っ掛かって「2分は優に笑って」有権者登録をした、とのことだ。
「登録するのをいつも先延ばしにしていたのですが、いざ登録ページに誘導されてしまったら、登録してしまえ、と思いました。登録してよかったです」とトニーさんはBuzzFeed Newsに話している。
「セレブのゴシップでしかみんなの注目を集められないのは残念ですが」
Twitter上でトニーさんは、「まんまと騙された」と書いている。
ケンタッキー州レキシントンからのトーリーさんは、この仕掛けに感謝しているとBuzzFeed Newsに話している。
「あの選挙区にはもう住んでいないので、(登録していなければ)どうなっていたかよく分かりません」とトーリーさん(27)は話している。トーリーさんは住所変更についてTwitterに投稿している。
「住所変更をしていなければ、投票し損なっていたかもしれない」と釣り見出しの記事に感謝している。
カリフォルニア州チコ在住のジャレドさん(19)も、引っ掛かった人のひとりだ。ジャレドさんは登録は済ませていたが、11月6日に投票することを思い出させてくれた、とBuzzFeed Newsに話している。
リンクのおかげで、「投票手続きに戻る気になった」と話している。
「17歳のときに事前登録は済ませていたので、投票ができなくなるという状態ではありませんでしたが、アメリカに住む若者のひとりとして、政治で選択権があることに本当に感謝すべきだということを思い出しました」とジャレドさんは話す。
デヴィッドソンとグランデの破局について知ろうと思わなかったら、投票のことは忘れていただろう、とアザリアンさん(20)は話している。
「リンクに感謝しています」とニューオーリンズのアザリアンさん(20)はBuzzFeed Newsに話す。
「Twitterに夢中で気を取られている人が多いので、みんなに投票させるには賢い方法だと思いますが、重要なことに参加するのが難しいと感じます。正直なところ、リンクがなければ、投票のことは忘れていて、日々の生活に気を取られていたと思います」
「騙された。登録したよ」とアザリアンさんはTwitterに投稿している。
シゲルスキーさん同様、マーケット大学に勤務しているクリスティン・リビエッキーさんもまた、リンクのおかげで登録した。「正直に話します。ティムが投稿したリンクをクリックして、最初は笑いました。だって、有権者登録ページに飛ばされたのですもの」とクリスティンさんはBuzzFeed Newsに話している。「私はまさにティムのターゲット層だったわけです」
「最近引っ越しをして、新しい住所で登録が済んでいなかった」とクリスティンさんは話す。
他の人からはコメントはもらえなかったが、デヴィッドソンとグランデのガセネタのおかげで有権者登録をしたとツイートしている。
「アリアナとピートの破局の話だと思ったツイートを通して、有権者登録をしたことを認める」と書いている人もいる。
ツイートで「実際に」登録する気になった、と話している。
「このツイートで、ふざけるのはやめて、実際に登録した」と書いている人がいる。
「くそ!」と書いている人もいる。その後に、実際に登録したのは、ツイートのおかげだと書いている。
この人も、ツイートをきっかけに「実際に」登録したと話している。
選挙への参加を増やそうとする釣り見出しに好意的な人も多いが、リンクに誘われて登録をする新しい有権者に感激とは言えない人達もいる。
「このリンクをクリックするような人に投票して欲しくないな」と書いている人もいる。
ティムさんが使った戦略に否定的な反応をしている人達に関して、ティムさんは次のように話している。
「ネット上で拡散されるすべてのもののライフサイクルには、バックラッシュ(反動)があります。でも、今のところ受け取っているフィードバックは、圧倒的に肯定的なものです」
ティムさんは、自身のツイートと『Elle』のツイートは区別している。
「今日、『Elle』が同じことをツイートしたとき、原動力に変化が起こりました」とティムさんは話す。
「私のような "どこかの誰か" がツイートするのと、ブランドがトレンドに乗じるのは異なります」
他にも多くの人が、『Elle』がトレンドに乗っかることを問題にしている。同誌が投稿したツイートを、作家のロクサーヌ・ゲイさんは「くだらない愚行」と呼んでおり、「道徳的、適切」ではないと言っている人もいる。
バックラッシュについて、BuzzFeed Newsは同誌にコメントを求めたが、すぐには回答を得られなかった。
10月12日以来、30歳未満の人が10万人以上、有権者登録をしたとVote.orgの広報担当者は話している。
拡散に関しては、「登録がすべてこのせいだとは言えませんが、投票に関する文化的な会話はすべて、若い有権者の参加が急増していることに関連しているとはいえます」と広報担当者は話す。
有権者登録を促すセレブ破局のゴシップを釣りにしたものは、ピートとアリアナのツイートだけではなかった。
実は、Vote.govのサイトに誘導する次のツイートを見て、自分もやってみようと思った、とティムさんは書いている。
この人は、「イーロン・マスクのヌード」で釣る別のネタを試みている。
ピートとアリアナの破局の理由に関しては、まだ多くの人が真相を知りたがっている。
「中間選挙の後に分かるよ」とティムさんはツイートで答えている。