トルコ大統領は大嫌いだったSNSと反政府勢力に救われた それでも弾圧?

    「インターネットが許せない」はずだったが。

    土曜日にトルコで起きたクーデターは「未遂」に終わった。トルコ軍の兵士達がテレビ局を占拠する、という昔ながらの方法でクーデターを試みた一方、エルドアン大統領は、政府が権力を掌握しているとアピールするため、全く新しい方法を使った。FaceTimeだ。


    大統領は場所を明かさないまま、FaceTimeから、クーデターは失敗に終わるだろうと語りかけた。大統領が話している間じゅう、CNNトルコ支局のレポーターが、彼の姿が視聴者にみえるようにiPhoneの位置を手持ちで調整していた。

    大統領はTwitterを通じ、国民に外に出て、抗議の意思を示すように呼びかけた。

    かつて「私はインターネットが許せなくなっている」と話したエルドアン大統領。今回の行動は、SNS嫌いのイメージからかけ離れた行動だった。

    そして、エルドアン大統領が弾圧しようとしていたSNS、活動家、地元のジャーナリスト、反政府勢力が、彼の政権を救う手助けをする結果になった。

    大統領がSNS上で自身の姿と健在ぶりを拡散し、クーデターの首謀者が発信しようとした政権掌握のストーリーよりも、早く広まった。大統領の言葉を受け、市民は街路に出て戦車や兵士に群がり、自ら兵士を逮捕した人もいたと伝えられる。市民たちの抗議行動の多くはPeriscopeやFacebook Liveで生放送された。


    普段は政府の弾圧を受けている地元ジャーナリストたちも、自分たちの放送局や事務所が占拠されないよう、また、起きていることの事実関係を伝えるため、クーデターの勢力に刃向かった。

    トルコの反政府勢力の指導者たちは、クーデターをすぐに非難した。クーデターはトルコの民主主義に対する攻撃であるとも主張した。

    クルド系住民を基盤とする国民民主主義党(HDP)でさえも、クーデター非難の合唱に加わった。

    「この国はクーデターによって荒廃している」と、トルコ反政府勢力の指導者・Kemal Kilicdarogluはテレビでコメントした。

    Kilicdarogluはトルコには、軍事勢力に政権を奪われた長い歴史があると述べ、過去30年間で3度のクーデターが起きていると指摘した。そして、「私たちの共和国と民主主義を守る」と話した。

    エルドアン大統領は、近年さらに権威主義の傾向を高めている。トルコの民主主義的な機関を、権力拡大のために侵食しようとしていると批判されてきた。

    それでも、大統領にはまだ、トルコ国民に民主主義のためクーデターに立ち向かわせる力があったようだ。土曜の朝には、クーデターは失敗の様相を呈した。

    エルドアン大統領と政府は今、クーデターの首謀者を見つけ出し、この危機を終わらせようとしている。金曜日に人々がとった行動からすると、国民も大統領を支持しているようだ。

    トルコ政府は、クーデター後、2500人のトルコ軍の軍人たちを拘束したといわれる。また2500人の判事たちも免職となったようだ。

    今回の混乱を、エルドアン大統領が、自身の権力強化に利用するのではないかという心配の声が上がっている。

    「エルドアンはクーデターの首謀者を捕まえようとするだろう。それはまっとうな行動だ。しかし同時に、異議を唱える人たちと反政府勢力全員を取り締まろうと動き出すことが考えられる」と、米のトルコ情勢アナリストSoner Cagaptay指摘する

    クーデターを鎮圧した勢力が今後どのような道を進むか、注目される。