シリア、空爆で失われていく医療の場

    世界保健機構の関連団体による内部報告書がBuzzFeed Newsに提供された。

    シリア北部で15日、国際的NGO「国境なき医師団(MSF)」が支援する病院などが、空爆を受けた。国連は45人以上が犠牲になっていると発表している。

    世界保健機関(WHO)が監督している医療施設の連合体が作成した内部報告書は、医療機関への爆撃が「前代未聞」の増加をたどっている、と伝えている。この報告書は、被害の死傷者数を記録するために急いで作成された。

    BuzzFeed Newsに独占提供されたこの報告書には、シリアの病院や他の医療施設を狙ったようにみえる一連の爆撃のことが記録されている。報告書は、7つの異なる医療施設で患者や医療スタッフを死亡させたとしており、月曜日は「たった1日のうちに、医療施設の攻撃回数が前代未聞の増え方をした」と付け加えている。

    月曜にBuzzFeed Newsは、国境なき医師団が運営する北部イドリブ県マアッラト・アン=ヌウマーン市の病院での大量殺戮を報告した。この大量殺戮では、最初の犠牲者を救おうとした救助隊員らも、時間的なずれのある攻撃の中で死亡した。内部報告書は、マアッラト・アン=ヌウマーンの他に、さらに6つの医療施設が攻撃されたことを明らかにしている。すなわち、イドリブ県でもう2カ所、近隣の県であるアレッポで別の2カ所、南部の県ダルアーで2カ所だ。これらはみな、シリアの反政府勢力が支配する地域にある。

    報告書は、爆撃による破壊がもたらした国内の医療サービスへの影響を「衝撃的なもの」とみなす。施設は、月に2万3000件以上の患者の治療に携わってきたと、報告書は述べている。これには、1000件以上の不妊治療など生殖医療と550件の出産も含まれる。「攻撃により、これらの医療サービスを提供できる場が失われた」と、報告書は伝える。

    現在、攻撃を受けた施設のうち、3つは使用不可能となっていて、他の4つは一時的に閉鎖されている。

    トルコとの国境の町で現地の支援組織を運営しているTaysir Ghalyonは、病院は月曜日の午前9時頃にミサイルで攻撃されたと話した。攻撃で少なくとも3人の民間人が死亡し、12人の医療スタッフが負傷したと彼は語る。そして彼は、攻撃の意図は医師や民間人の生活を困難にすることではないかと考えている。「攻撃は午前中に起こりましたが、彼らはこの時間、病院が患者でいっぱいだと知っていたのです」と、Ghalyonは電話インタビューで語った。「目的は民間人の殺害と、より多くの人々を立ち退かせることです。なぜなら医療は生活の動脈であり、それが止まってしまえば、人々は生きるために別の場所を探さなくてはならないからです」

    医療施設の攻撃はシリア北部の人道的状況をさらに悲惨なものにした。シリア政府とその同盟国が、シリア最大の都市アレッポの反政府側が保有する部分へと前進するにつれ、この地域は新たな最悪の状況に陥っている。先週ミュンヘンでアメリカとロシアが「停戦」に関する案を発表して以来、改善したことは何も報告されていない。「私たちはますます懸念を強めつつあると、あと何回言えるのか私にはわかりません」と、シリア北部で最大の支援団体の1つ、マーシーコー(Mercy Corps)の上級通信責任者Christy Delafieldは語る。

    現地の医療従事者と国際的NGOはこれまで、シリアのアサド大統領の政権が、反政府勢力が保有する地域に人が住めないようにする目的で、国際法を破り、組織的に病院を空爆の対象にしていると警告してきた。

    アサド軍の攻撃にロシア軍が加わった今も、その戦略は同じだとアナリストは言う。「反政府勢力が保有する地域の医療インフラを破壊するという、ロシアの戦略に見えるものが、モスクワとダマスカスの間の協力関係を強固にしています」と、ロンドンのVerisk Maplecroftの中東・北アフリカ部門主任Torbjorn SoltvedtはEメールに書いている。「(医療施設への)攻撃は、シリア政府の作戦が今も続いていることを表しています」