昨年、アメリカの非営利団体カスカディア・リサーチ・コレクティブの海洋研究者らが、ハワイ州カウアイ島周辺の海域に住む海洋哺乳類を調査していたところ、ふたつの異なる種の特徴を合わせ持った海洋生物を発見した。
この珍しい生物の背びれは、勾配が急で、カズハゴンドウの背びれに似ていた。しかし、顔はクジラの仲間のように丸くはなく、むしろシワハイルカの顔の形に似ていることに、研究者らは気づいた。
この動物が交配種であることを示すもうひとつのヒントがあった。身体の下側は、シワハイルカの斑点がある色合いで、上半分は、カズハゴンドウの明るい灰色に近い。
斑模様があるため、船員は、このイルカを「オレオ」と名づけた、とガーデン・アイランド紙は報じている。同紙は、カスカディア・リサーチのプロジェクト・リーダーであるロビン・ベアードさんに取材している。
この動物が珍しいことを示すもうひとつの指標は、一緒に泳いでいたのは、カズハゴンドウ1頭だけだったことである。
カズハゴンドウは、通常は少なくとも100頭の大きな群れで泳ぎ、カウアイ島周辺ではあまり見かけない。その代わりに、カズハゴンドウ1頭とこの交配種は、シワハイルカの群れの近くで泳いでいるところを目撃された。
研究者らは7月27日に新しい報告書を発表。生体組織検査を行なった結果、発見した生物はカズハゴンドウとシワハイルカの交配種であり、この2種の交配種が発見されたのは初めてのことである、と述べている。
遺伝子調査では、この雄の交配種は、雌のカズハゴンドウと雄のシワハイルカが交尾して生まれたらしいことが示されている。
研究チームは、8月にカウアイ島に戻る予定で、またこの2頭に会えることを期待している、とベアードさんは、BuzzFeed Newsに話した。
この雌のカズハゴンドウが、交配種の母親であるかを見極めること、「親の種との形態的な相違点をさらに評価」できるように水中でもっといい写真を撮ることが目的だという。
カズハゴンドウは英語で「melon-headed whale」と名前に「クジラ(whale)」が含まれているが、実はイルカの仲間である。
また、マイルカ科には、通常はイルカとは思われていない生物も含まれている。
黒いクジラ(ブラックフィッシュ)として知られているユメゴンドウ(pygmy killer whale)、オキゴンドウ(false killer whale)、ゴンドウクジラ(pilot whale)、シャチなどだ。そのため、この新しい生物を、クジラとイルカのミックスと呼ぶのは間違っている、という指摘もある。
「この交配は、2種類のイルカ間によるもの」で、その片方の「俗称に『クジラ』と入っているだけ」であることを指摘するのは重要だ、とベアードさんはBuzzFeed Newsに話す。
「分類学上の関係がよく理解されるようになるまでは、『クジラ』という用語は、多くの中型~大型のクジラ目の生物にこれまで使われてきました」とベアードさんは話す。
たくさんの人が、この海での発見に対して、さまざまな感情を抱いている。
カスカディア・リサーチは、たくさんの交配種生物の撮影に成功しているようで、Facebookページで今までの印象的な記事やツイートを紹介している。
報告書によると、この生物は、マイルカ科のふたつの異なる種間で野生で生まれた3例目の交配種であるだけ、とのこと。しかし、なんと呼ぼうと、この発見がかなり意義深いことには変わりはない。
雑種形成の後に、ひとつの種の遺伝子データが、別の種のゲノムに浸食する “浸透交雑”の仮説を、この発見は支持している、と報告書には記載されている。これは、マイルカ科における分類学上の不確実性を生じさせる。
ハワイ州立大学ハワイ海洋生物研究所で准研究教授を務めるマーク・ラマーズさんは、自然界における交配種は、それほど珍しいことではない、とBuzzFeed Newsに話している。
「植物の間では、とても一般的です」とラマーズ准教授は、交配種の頻度について話す。
「動物では植物ほど頻発しませんが、私たちが考えているよりも恐らく多く、特に近縁の種の間で発生しているでしょう。遠縁の種の間で発生したり、形態学的に異なる種の間で発生したりしたときに、注目されやすいだけです」
以前、ハワイ沖で、バンドウイルカとミナミハンドウイルカの交配種が報告されており、ワシントン州では、ネズミイルカ2種の間の交配種が見つかっている。
今回の発見では、カズハゴンドウとシワハイルカの交配種が初めて確認された。