ハルク・ホーガンの「セックス動画」訴訟にあの大物投資家が資金提供している理由

    ピーター・ティール

    PayPalの共同設立者で、Facebook最初期の投資家でもあるシリコンバレーの億万長者、ピーター・ティール。

    彼は3つのベンチャーキャピタル、そして謎のデータ分析スタートアップ・Palantirを設立している。

    2007年、ゴシップサイトを手がけるゴーカー・メディア(Gawker Media)が、「みんな聞いてくれ。ピーター・ティールは間違いなくゲイだ」という見出しの記事を掲載した。

    何年にもわたってゴーカーは、ティールに関するゴシップ記事を数多く掲載してきた。

    そのためティールは「シリコンバレーのアルカイダだ...…奴らはライターでも記者でもなく、テロリストと評されるべきだ」と語っている

    2012年まで話を早送りしよう。ゴーカーは、伝説的プロレスラーのハルク・ホーガンが親友の妻とセックスをしている動画を入手し、公開した。この映像は「1分間であっても、ハルク・ホーガンが天蓋付きのベッドでセックスしているのを見れば仕事が手につかなくなる。とにかく見よう」という見出しで掲載された。

    これがホーガンとゴーカーの間での法廷闘争に火を点け、ホーガンはプライバシーが侵害されたと主張して1億ドル(約111億円)の損害賠償を要求。ゴーカーは米国憲法憲法第1修正条項の保護対象として自社を弁護した。

    裁判は最終的に2016年3月に始まり、ホーガンが証言台に立った。彼はセックス動画で「自尊心を完全に傷つけられた」と話した。

    3週間に及んだ裁判は、傑作だった。ゴーカーCEOのニック・デントンと元編集者で、ビデオを掲載したアルバート・ドーレリオは、ホーガンがラジオやテレビ番組で、性生活について非常に詳しく、オープンに議論していたため、ホーガンのプライベートは格好の話題だったと主張した。

    ホーガンは、インタビュー中はある役割を演じていて、真実ではないことを脚色していたと証言した。25センチのペニスを持っていると話していた時などがそうだ。ホーガンの本名はテリー・ボレア。彼はもっと控えめなモノを授かっている、と話した。

    フロリダの裁判所はホーガン側を支持し、1億1500万ドル(約128億円)もの多額の賠償金を彼に支払うよう命じた。それでも不十分と言わんばかりに、懲罰的損害賠償としてさらに2500万ドルを彼に支払うよう命じる評決が認められた

    これはホーガンが当初訴えていた額よりも4000万ドル(44億円)も多い。

    懲罰的損害賠償として、ゴーカーは1500万ドル(約17億円)、デントンは1000万ドル(約11億円)の支払いを命じられ、2万7000ドル(300万円)の借金を抱えるドーレリオは、10万ドル(約1100万円)の支払い命令を受けた。ゴーカーの弁護士は、控訴すると述べた。

    裁判中、隠れた支援者がホーガンの訴訟費用を支払っているという噂が流れた。

    今週前半、デントンはシリコンバレーの誰かが訴訟資金を提供していると思うと発言し、翌日、ティールであることが明らかになった

    ホーガンをきっかけに、ティールはゴーカーとの10年にも及ぶ闘いに、立ち戻ったのだ。

    ニューヨーク・タイムズとのインタビューの中で、ティールは、ゴーカーが「理由もなく、人々の人生をめちゃくちゃにした」と述べた。そして、数年前にゴーカーの「被害者」を見つけて支援する弁護団に資金提供を始めたという。

    「支援しなければ、わずかな和解金しか受け取れない原告たちと連絡を取りました。彼らは支援を受けて、とても喜んでいました」とティールは語った。

    彼は、ある友人が行動を促したとも語った。ショーン・パーカーだと推測されているが、ナップスターの生みの親であり、Facebook初代社長でもある彼は、自分ではないと否定している

    「最近まで彼がこんなことをしているとは知りませんでした」とパーカーはBuzzFeed Newsに送ったメールの中で述べた。

    ティールは、ホーガンの訴訟に約1000万ドル(11億円)を投じたと見積もっている。他にどの裁判に資金援助をしたのかについて、詳しくは話さなかったが、「報復というよりも、ある種の抑止効果を狙った」と述べた。

    ティールはゴーカーに対する訴訟は「これまで関わってきた慈善事業の中でも素晴らしいものだ」と語った。ゴーカーは控訴するとしている。

    ゴーカーは訴訟の資金援助をしているティールを調査する時間が欲しいとも話した。裁判官はゴーカーが申し立てをするまで、判決は下さないと語った。

    ウォール・ストリート・ジャーナルとニューヨーク・ポストは、デントンが会社を売却する可能性を検討し始めたと報じたが、一週間後、デントンは記事に反論した。

    また、デントンは公開書簡を執筆し、ティールのことを「誰もが夢見るような成功や社会的評価を得ているにも関わらず、批判に対して憤り、自分がより多くの資金を提供できる訴訟において、敵を妨害するために裏で手を引く、短気な億万長者」と評している。

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