シリア難民たち、祖国の遺跡を模型で再現

    「ここはシリア人のみならず、人類の歴史と文化を表す場所です」

    シリアの激しい内戦によって、古代遺跡もまた犠牲となった。イスラム国(IS)や彼らを狙ったシリア政府の爆撃により、破壊されてしまったのである。

    8月、ISはパルミラの古代都市を破壊し、その地で50年以上も研究を続けていたシリアの考古学者・ハレド・アル・アサドの首をはね、殺害した。

    パルミラは紀元1、2世紀頃、世界の最も重要な文化の中心地であったとされ、UNESCOにより世界文化遺産に指定されている。

    そこで、祖国の失われてしまった遺産の記憶を復元しようと、ヨルダンにあるザータリ難民キャンプのアーティストたちが団結した。

    これは国連と米のNGO・International Relief and Developmentにより支えられたプロジェクトである。

    2014年11月以来、シリアを逃れたアーティスト達はSyria History and Civilizationというプロジェクトを通じ、祖国の古代建築物のミニチュアを作りあげてきた。

    このプロジェクトの目的は「平和と文化に対する意識を高めること」。コーディネーターであるAhmad al-Hariri はBuzzFeed Newsに語った。

    「破壊されてしまった文化遺産はシリアにとってだけでなく、全世界にとっての損失です」と彼は語る。「このプロジェクトのゴールは、シリア人への定義と遺産の保存、シリア人のアイデンティティーの証明、そして何より重要なメッセージは、この戦争を止めることです」

    Al-Haririが投稿したUNのブログの中で、彼はこのプロジェクトは本当に重要なものだと語る。というのも、難民キャンプには「シリアにいったことがなかったり、シリアの記憶がない子供」がいるからだという。

    「自分の祖国よりも、ヨルダンについてよく知っているのです」と彼は言う。

    このプロジェクトは、遺産保存への取り組み以上のものになった。シリア南西部のダルアー出身で、この取り組みに参加しているアーティストの一人、Mahmoud Haririは、プロジェクトが自分の技術を維持するのに役立っていると言う。

    25歳のHaririは、2013年にこのZa'atari難民キャンプに逃れてくる以前、教師であり画家であった。

    「このキャンプにたどり着いた当初は1〜2週間しか滞在しないでしたから、自分の仕事を続けるかどうかは考えていませんでした」と、彼は国連のブログを書いたCharlie Dunmoreに語った。「でもこの生活が何年も続くかもしれないと気づいたとき、技術を失ってしまう前に、何かしようと思ったのです」

    同姓のIsmail Haririという別のアーティストは、最初このプロジェクトにあまり乗り気ではなかった。しかし結局彼は、プロジェクトを通じ、芸術への情熱を再発見した。

    44歳のHaririは、若い頃から長く彫刻の仕事をしており、戦争の前はインテリアデザイナーであった。

    2013年、彼は妻と7人の子供と一緒に、このザータリ難民キャンプに逃れてきた。

    彼が一番気に入っているプロジェクトは、キャンプ内で発見された火山石を掘り出して作ったNabatean Gateの模型だ。この火山石は実物の門にも使われている。

    「非常に大きな石で、私の持っていた簡単な道具を使って完成まで2カ月もかかりました」と彼は語る。「この作品で久しぶりに仕事をしました。最初の何日かは石を彫るというより、手を彫っているような状態でしたよ」

    Al-HaririがBuzzFeed Newsに語ったところによると、各作品にかかる日数は15日〜3カ月ほどだという。

    現在8人のアーティストがプロジェクトの第一段階に取り組んでいる。

    次の目標は、シリア民族の伝統と「戦争の悲惨さ」を表す模型を作ることだとAl-Haririは語る。

    「シリアの現状が非常に心配です」とMahmoud Haririは語る。「この遺産はシリア人のみならず、全人類の歴史と文化を表すものです。一度破壊されてしまったら、二度と再建することができないのです」