銃社会に警鐘を鳴らした少女が、銃の犠牲になり死亡

    「小さな子供たちが、分別のない銃の暴力の犠牲になっています」

    「私たちはカオスの中で暮らしている」――13歳のサンドラ・パークスさんは2年前、そう書いた。マーティン・ルーサー・キング牧師に敬意を評して開催された作文コンクールで3位に入賞した作品だ。

    「私が住んでいる街では、毎日のようにカオスの事例を耳にし、目にします。小さな子供たちが、分別のない銃の暴力の犠牲になっています」

    11月19日の夜、サンドラさんは流れ弾に当たって亡くなった。米ウィスコンシン州ミルウォーキーにある自宅の自室でテレビを見ていたところだった。

    地元紙ミルウォーキー・ジャーナル・センティネルによると、サンドラさんの母、バーニス・パークスさんは警察に対し、その夜は早めに床に就いたが、夜7時45分ごろ、銃声で目が覚めたと説明した。そして娘サンドラさんの「撃たれた」と言う声が聞こえたのだと言う。

    サンドラさんは右脇腹に1発の銃弾を受けて血を流して床に倒れており、母のバーニスさんは緊急電話に通報。しかし救急隊は救うことができず、サンドラさんは自宅で亡くなった。

    「妹はまるで兵士のようでした」。サンドラさんの姉のタティアナ・イングラムさんは、地元メディアにこう話した。

    「部屋に入ってきて、こう言ったんです。『ママ、撃たれた』」

    前述のジャーナル・センティネルによるとアイザック・D・バーンズ容疑者(26)とアントレル・オーデン容疑者(27)は、この発砲から数時間以内に逮捕された。

    AP通信によるとバーンズ容疑者は、第一級過失致死罪、建物への発砲、重罪犯による銃所持の容疑で11月21日に起訴された。オーデン容疑者は、2つの事件で、重罪犯による銃所持の容疑がかかっている。

    AP通信によると、バーンズ容疑者とオーデン容疑者は事件の夜、バーンズ容疑者の元交際相手の女性を銃撃しようと計画してパークスさん宅の近所にいた。元交際相手はこの日、きょうだいを訪ねていたという。

    21日に提出された起訴状によると、黒い覆面をしたバーンズ容疑者は「AK-47のような大型の銃」を持って近づいてきた、と元交際相手は話しているという。

    バーンズ容疑者は元交際相手に対し、「お前を火あぶりにしてやろうかと思っていた」と言ったが、駐車中の車に元交際相手の子供たちがいたため、発砲しなかったとAP通信は報じている。

    母親のバーニス・パークスさんはサンドラさんについて、「この世界とは正反対の子でした」と述べた。「うちの子は暴力的じゃなかった。うちの子は暴力なんか嫌いだった」

    Mike De Sisti/The Milwaukee Journal Sentinel / Via jsonline.com

    ミルウォーキー市のトム・バレット市長は20日に行われた記者会見で、今回の銃撃を非難した。

    「13歳のサンドラ・パークスさんは自分の寝室へ行き、2度と出てくることはありませんでした」とバレット市長は述べた。

    「悲劇にも、パークス家に銃弾を撃ち込もうと思い立った人物によって、彼女の死は決められてしまいました。これは、私たちがミルウォーキーで目にする狂気の一部です。昨日もデンバーでありました。どこででも起きています。都市でも、農村地帯でも、郊外でも、繰り返し何度も起きているのです」

    Mike De Sisti/The Milwaukee Journal Sentinel / Via jsonline.com

    バーニス・パークスさんは、娘の追悼式のためにクラウドファンディングのサイト「GoFundMe」のページを立ち上げた。

    「娘は8年生(訳注:日本の中学2年生)で、作家になるために大学へ行きたいと希望していました」とパークスさんは書いた。「娘は何の罪もない子でした」

    サンドラさんが書いた作文の和訳は下記の通りだ。

    私たちの真実

    私は時々、ただ深く座って、自分が毎日見聞きすることから逃げなければならなくなるときがあります。ヘッドホンを付けて、音楽に身をまかせるのです。ビートに合わせて体を動かし、人生について、そして全てが何を意味するのかについて考えてみます。そうすると、いつも同じ結論に至ります。私たちは、カオスの中にいます。私が住んでいる街では、毎日のようにカオスの事例を耳にし、目にします。小さな子供たちが、分別のない銃の暴力の犠牲になっています。黒人同士の犯罪が多すぎます。私はアフリカ系アメリカ人として、とても悲しくなってしまいます。多くの人が、アメリカそのものを、そしてキング牧師の夢を生きる手本になる力をアメリカが持っているということを、信じられなくなっているのです!

    「私たちができること」に対する信念と希望は、私たちがお粗末な選択をしてきたせいで失われてしまいました。『We shall overcome』(訳注:「乗り越えられる」という意味。米公民権運動のスローガンで、「勝利を我らの手に」と訳されることが多い)は、現代アメリカ人の嘘の中に失われてしまいました。そのため今の本当の真実とは、物語を書き直さなければいけないということです。そうすれば、よりよい明日への信念と希望は私たちの内側だけにとどまりません。私たちがそれを信じて行動に移せるようになるのです。

    私たちにとっての最初の真実は、お互いを大切にしなければいけないということです。親身になり、お互いの立場になって考えるよう努力しなければいけません。お互いを理解し、受け入れられるようになったときに、私たちは乗り越えられるのです。お互いに対して否定的で意地悪なコメントをしなくなったときに、私たちは乗り越えられるのです。自分自身と周りの人たちを愛せるようになったときに、私たちは乗り越えられるのです。そうすれば、私たちはお互いに責任を持つ存在になれるのです。

    2つ目の真実は、目的を持つ必要があるということです。私たちは未来の世代です。ですから、世界に良い影響を与えられるよう教育を受けなければいけません。私たちは未来の指導者なのです。しかし教育がなければ、何も成し遂げられません。教育を使って世界をより良い場所に変えたとき、私たちは乗り越えられるのです。私たちは、次の大統領、法執行官、教師、医師、法律家、立法者になります。責任を他の人に押し付け続けることはできません。これは未来の指導者としての私たちの責任です!

    暴力、人種差別、偏見といった嘘を私たちの真実にしてはいけません。真実は私たちから始まります。お互いを行きずりの相手として扱う代わりに、私たちの真実が世界の隅々まで届くそのときまで戦わなければいけないのです。

    この記事は英語から翻訳・編集しました。
    翻訳:松丸さとみ / 編集:BuzzFeed Japan