妊娠中絶を選ぶ女性の権利。医師、医学生10名の意見

    「アラバマを出て、医師になる訓練を受けました。そして今、アラバマの女性の役に立とうと、戻ってきました。アラバマの女性には、もっとよいヘルスケア(合法な中絶)を受ける権利があります」

    このところ米国で、妊娠中絶を選ぶ女性の権利を制限する州が急増している。中絶は、米国では医療を巡る問題というよりも政治問題となっており、その議論から医師が取り残されることが多い。

    アラバマ州では2019年5月15日、米国で最も厳しいと言われる中絶禁止法が成立した。5月19日、同州バーミングハムで行われた抗議デモに、写真家メリッサ・ゴールデンが加わり、この新しい規制に関する意見を医師や医学生に尋ねてみた。

    ソフィア・ブエナベンチュラ(医学博士、産科・婦人科)

    「ここに来た理由は、ひとつです。患者のためで、安全な妊娠中絶を受ける選択肢を確実に残すためです。この権利を奪われるべきではありません」

    オードラ・ウィリアムズ(医学博士、公衆衛生学修士、産科・婦人科)

    「アラバマで生まれ育ちました。アラバマを出て、州外で医師になる訓練を受けました。そして今、アラバマの女性の役に立とうと、戻ってきました。アラバマの女性には、もっとよいヘルスケア(合法な中絶)を受ける権利があります。そのために今日、ここに来ました」

    ホイットニー・ゴールズベリイ(医学博士、婦人科腫瘍学)

    「妊娠中絶を禁止したからと言って、中絶は減りません。安全な状態で中絶を受けられなくなるだけで、苦しむ女性が増え、その結果として、亡くなる女性が増えるだけです」

    ロドリゴ・D・ムニョス(医学部4年生)

    「産科・婦人科の医療で手を尽くせるように、患者のために戦うことは、産婦人科医を目指す者の義務と考えています」

    サラ・ディリー(医学博士、公衆衛生学修士、婦人科腫瘍学)

    「アフリカにいたときに、妊娠中絶の提供者になる決心をしました。アフリカでは、アラバマで可決した法案ととてもよく似た妊娠中絶を禁止する法律があり、安全ではない中絶手術を受けて亡くなる女性を見ました。安全な中絶手術を提供することを、名誉に思います」

    「成人してから殆どの時間、女性の人生におけるあらゆるライフステージで女性の身体の医療措置をする訓練を受けてきました。12歳で初潮を迎えることであったり、35歳で不妊で悩むことであったり、20代で初産であったり、60代でがんの宣告を受けたりすることです。女性の生殖に関するありとあらゆるライフステージで、女性の診療に従事していることを栄誉に思います」

    「妊娠中絶は、女性の人生におけるその他のさまざまなまさに素晴らしい(出産などの)出来事と同じように、女性の人生の一部なのです。妊娠中絶の意味合いや重要性を理解している医師が患者のために立ち上がらなければ、誰が立ち上がるというのでしょうか」

    レベッカ・アーレンド(医学博士、婦人科腫瘍学)

    「アラバマ大学バーミングハム校で婦人科の腫瘍専門医を務めています。コロンビア大で研修医を務め、そこで家族計画について深く学びました。妊娠初期(妊娠1~3か月)、妊娠中期(妊娠4~6か月)で中絶手術を受けなければならない女性に安全に処置をできるように、私を訓練してくれた女性たちに大きな借りがあります」

    「腫瘍専門医として、女性の健康管理に情熱を注いでいます。妊娠初期に、子宮頚癌などの癌が見つかり、法律のせいで治療をする選択肢がなくなる可能性があり、治療をするために中絶をしたら、執刀医師が禁固99年の罪に問われるというのは、かなり動揺します。ですから、女性、患者、仲間を代表して、ここにきました」

    マーガレット・リャン(医学博士、婦人科腫瘍学)

    「女性に医療を提供する者として、今日はここにきました。抗議集会やデモ行進にきたのは、今回が初めてです。実に、衝撃的な経験でした。女性の安全のために、女性が、生殖の自由も含めた自分の健康管理のために、事実に基づいた、患者中心の決断をくだせるよう戦うために、今日はここにきました」

    ハリエット・ワシントン(医学部4年生)

    「女性の健康、女性に関すること、女性の権利に情熱を傾けています。ですから、今日ここにきました。女性について、女性の健康管理、全般的にありとあらゆる『人』にとても関心があるため、医学部に通い、医師になろうとしています。アラバマ州、この州におけるヘルスケアに影響を与えたかったので、今日ここにきました。ヘルスケアにとても力を入れているからです」

    「妊娠中絶は、ヘルスケアです。産科もそうです。避妊や家族計画もヘルスケアの一部です。そのことを伝えたくて、今日ここにきました」

    シュトルム・マホーター(医学部4年生)

    「妊娠中絶は、ヘルスケアの一部なので、今日ここにきました。性別、人種、社会経済的な地位にかかわらず、個人のヘルスケアにおける選択を制限する力を、他人が持つべきではありません」

    サバンナ・N・ジョンソン(医学部4年生)

    「医師を目指す者として、患者に影響を与える問題に関する情報を知っておく義務があると考え、今日ここにきました。私には、患者にとって正しい選択だと思うもののために、立ち上がる義務もあります。それが、妊娠中絶であれ、低所得者の医療扶助制度(メディケード)の拡大であれ、質のよい教育へのアクセスであれ、患者の健康に影響を及ぼすものはすべて、私は積極的に議論に参加すべきだと考えています」


    メリッサ・ゴールデンは、アトランタを拠点とする写真家。ゴールデンの写真は、ウェブサイトで紹介されている。

    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:五十川勇気 / 編集:BuzzFeed Japan