モノクロ写真が切り取るリオ暗黒街の日常と暴力

    「五輪が終わった時に、リオがどうなっているのか、見てみるつもりです」

    「Gangland(暗黒街)」は、混乱の最中にあるブラジルの現実を写しとった写真シリーズだ。ブラジルの経済は低迷しており、大統領のジルマ・ルセフは不正経理問題で職務停止になり、弾劾裁判が開かれることになっている。

    シリーズを撮影した写真家のジョアン・ピナは、ブラジルを拠点とするポルトガル人のフォトジャーナリストだ。ピナはリオの日常と、その中に存在する暴力の姿を、9年にわたって、見事に切り取ってきた。

    BuzzFeed Newsは、ピナに話を聞くことができた。以下のインタビューは内容を凝縮するため、編集と要約が加えられている。

    なぜリオに興味を持ったのですか?

    リオは「驚くべき街」です。ブラジルで今起こっていることの鏡だと思っています。非常に魅力的です。

    ワールドカップ以降の数年間に、改善したことはありますか?

    インフラはいくらか改善しましたが、まだあるべき姿に至るまでは、ほど遠いと思います。階級と人種問題は根強くあります。ワールドカップ以降、人々の政治意識は高まりました。そして、階級と人種間の不平等に対する怒りも高まっています。母親たちは不公正について議論するため団結してきました。こうした変化が社会にどう影響するかは、まだわかりません。

    スラム街からドラッグの密売人を一掃するための政府の政策は今も継続中ですか?

    政府の政策は、失敗したのではないかという憶測が広まっています。今もギャングと警察官の抗争があるからです。警察の中に「平和回復部隊」ができましたが、警察は今では、以前とまったく同じように活動しています。ファベーラは地域から取り残されていています。警察は、ドラッグを密売しているギャングに気づかないふりをするか、賄賂を受け取っています。密売人たちが力を持っているエリアはまだあり、誰もスラム街の警察を本気で信じてはいません。

    あなたの写真プロジェクト「Gangland」を一言で説明するなら、どのように説明できますか?

    美しいけれど、無視されてきたところも多いリオの街についての、私の体験を描写したものです。私は無視されてきた光景に向き合い、そこにレンズを向けています。そのような地域では、人生はまた違う意味を持ちます。

    中流階級に生まれ育った人は、ここに住む人たちとは非常に異なった人生観を持ち、まったく違った機会に恵まれています。スラム街で生まれた若者は、教育や健康といった基本的サービスを受ける機会がなく、人種差別を受けたり、チャンスもほとんどありません。それで、ドラッグの密売業を始めることがあります。そうした若者の人生は短く、強烈なものになります。

    このプロジェクトを続けるつもりですか?

    五輪が終わった時に、リオがどうなっているのか、見てみるつもりです。皆が去った時に何が起こるのか。施設の代金を、私たちが負担しなければならない時、社会と政治がどう反応するのかを見ようと思います。