メキシコを横断する子どもたちが見た世界 6人にカメラを託して

    徒歩とヒッチハイクで数週間。アメリカ国境を目指す道のりを写真に記録

    ホンジュラスから出発しアメリカを目指していた移民集団(キャラバン)が11月後半、メキシコとの国境地帯へ続々と到着した。キャラバンには大勢の子どもたちも含まれる。

    政府当局によると、11月21日には4166人(うち794人が子ども)が国境の町ティファナへ入った。移民は大半がホンジュラス、グアテマラ、エルサルバドルの出身者で、徒歩やバス、あるいはトラックをヒッチハイクするなどしてメキシコを縦断し、北上を続けてきた。数週間をかけた移動は大人にとっても過酷な道のりだ。子どもたちは学校や仕事をやめ、親や保護者が暴力から逃れようとする姿を目の当たりにしてきた。大人の付き添いがない子どもたちが国境で庇護を求めたところ、アメリカ側の当局に追い返されたケースもある。

    私たちはキャラバンに参加した6人の子どもにカメラを託し、彼らが見た世界を写真に収めてもらうことにした。中米で移民キャラバンの動向を取材してきたアドルフォ・フローレス記者がカメラの使い方を説明し、道中の様子を記録してほしいと依頼した。

    後日返ってきたカメラには、グラウンドに野宿する家族やトラックの荷台に乗ってヒッチハイクする人々など、連日の報道でおなじみになった場面が収められていた。中には、報道記者のカメラでは見過ごしてしまうような瞬間をとらえたスナップもある。ときにシュールな構図には、子どもたちの好奇心がのぞく。競技場の裏で遊ぶ子どもたちを警察が監視したり、記者が現れて指示を出したりする不確かな世界に、子どもたちの好奇心が向けられる。

    6人の写真がつづるストーリーは、彼らならではの視点にあふれ、次の世代のために私たちが築いていく社会のありかたを考えさせられる。

    アギレラ家が移民キャラバンに加わるのは、今年に入って2回目だ。9歳、12歳、15歳になる3人の子どもがいる。


    春に国境越えを目指したときは、5月にメキシコのティファナまで行ったものの、庇護申請をするにはいったん引き返して待たなければならなかった。同行した子どもたちの叔父が未成年のため、保護者の付き添いがない未成年者として扱われる恐れがあったからだ。一家は彼をホンジュラスへ帰し、2回目のキャラバンに挑戦した。

    一家の大黒柱、マリア・アギレラは言う。「今の大統領が再選されてから、暴力、貧困、食料不足がさらに深刻になりました。ホンジュラスは美しい国だけど、出て行く以外に選択肢はありません」

    14歳のイミ・バスケスはホンジュラスの家具工場で働いていた。朝6時から夕方5時まで木材にやすりをかけ、週12ドルほどを稼いだ。

    学校で勉強できたのは6年生までだった。マキラドーラと呼ばれる外国資本の加工・製造工場で働いていた両親が失業し、学費が出せなくなったからだ。

    オアハカ州フチタンで野営しているバスケスに話を聞いた。キャラバンで移動中、一番怖かったのはグアテマラとメキシコ国境の川を渡ったときだという。「でもやるしかなかった。まだ先は長いし、不安です」

    17歳のアンヘルは昨年、移民集団に加わり、すでに国外へ出ているが、今回のキャラバンをサポートするために帰ってきた。支援団体Pueblo Sin Fronterasとともに活動するメンバーの一人だ。メキシコ政府から報復される恐れがあるため名前を明かさないでほしいという。

    アンヘルは2017年、家族とともにホンジュラスを出た。21歳の兄がギャングに殺された後のことだ。

    「残ったきょうだいも殺されるんじゃないかと母親が恐れて、メキシコへ行くことになりました」

    「とにかく歩くのが一番大変です。車に乗せてもらえるまで、長い間ずっと歩かなくちゃいけないときもあるから」。アシュレル・アギレラ(12歳)は言う。

    アントニオ(15歳)とトラックの後ろに乗り、メキシコ南部を行くアシュレル。

    ハンシ・ナタレンはレズビアンの母親と一緒に、LGBTの移民集団の一員としてキャラバンに加わった。

    LGBTの参加者の中には、キャラバン内やメキシコ国内で差別を受け、集団から離れる人もいた。

    ナタレンはサッカーとスケートボードが好きだ。カメラの向こうにいる相手が何をしているのか見るのが好きで、撮影は楽しかったという。移民キャラバンの旅はどうだったかとたずねると、その話はしたくない、と答えた。

    歩いていて、車に乗せてくれる人が現れるとみんな元気が出た、とアシュレルは言う。

    「行く先々でよくしてもらいました。すごく温かく迎えてもらえると、私たちもうれしくなります」



    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:石垣賀子 / 編集:BuzzFeed Japan