親子引き離す移民政策の現状を訴えた「泣きじゃくる女児」の写真。その後、彼女はどうなった?

    新聞や雑誌の表紙を飾った泣きじゃくる女児は誰なのか。

    トランプ大統領は、メキシコ国境を越えてアメリカに不法入国する親子を引き離す措置を導入した。それに対して、一般市民から激しい怒りの声が上がったが、ある少女の写真が拡散したことで、その怒りは頂点に達した。

    この写真は、ゲッティ・イメージズのカメラマン、ジョン・ムーア氏が6月11日にテキサス州の国境で撮影したもの。ホンジュラスから難民として入国しようとした母親が身体検査を受けている横で、2歳の女児が泣きじゃくっているところだという。

    ムーア氏によれば、この母子はリオ・グランデ川をいかだで渡って、メキシコからアメリカに入国したが、テキサス州マッカレンで拘留された。「移民手続きセンターに送られたが、引き離される可能性がある」という。写真は、ムーア氏が税関・国境取締局(Customs and Border Protection, CBP)に同行した際に撮影した。

    (トランプ大統領はその後の6月20日に、不法入国した親子を引き離して拘留する措置を取りやめるとする大統領令に署名した。しかし、それによって何が変わるのかはわかっていない)

    この写真は大きく報道され、米紙「ニューヨーク・デイリー・ニュース」や「ニューヨーク・タイムズ」の一面を飾った。

    This is Trump’s America. What’s going to happen to this 2-year-old Honduran girl? The new policy is to separate her from her mother. Shame!!! https://t.co/vy6HtRupQE

    「これがトランプのアメリカだ。ホンジュラス出身のこの2歳の少女はいったいどうなるのだろう? 新しい政策のせいで、少女は母親から引き離されてしまう。ひどい!!!」

    BuzzFeed Newsは6月16日、まずは税関・国境取締局に対して、女児とその母親の所在、ならびに親子が引き離されているのかどうかを尋ねた。

    すると同局の広報担当者から、「まだ確認中なので、改めて連絡します」という回答を得た。

    広報担当者はその際、次のように述べた。「女児はまだ幼いので、母親から引き離されることはないでしょう。ただし、世帯の中に犯罪歴や入国歴を持つ大人がいたり、女児の安全が脅かされていることを示す虐待の証拠や疑わしい家族関係(不正行為)が存在したり、あるいは、両方の親がいる世帯を収容するための家族用スペースが不足していたりする場合は別です」

    改めて連絡すると言われたものの、返事は来ていない。

    BuzzFeed Newsは、幼い子どもたちが親から引き離され、「乳幼児シェルター」に収容されているという6月20日付けAP通信の報道を受けて、税関・国境取締局に再度問い合わせた。

    広報担当者は、ホンジュラスのその女児と母親は引き離されておらず、現在は移民税関捜査局(Immigration adn Customs Enforcement, ICE)で拘留されていると述べた。

    とはいえ、2人が現在どこにいるのか、母親が起訴されたかどうかは明言できないと述べ、詳細は移民税関捜査局に問い合わせてほしいと言われた。

    そこで移民税関捜査局に問い合わせたところ、広報担当者マシュー・ボーク氏は、その母親と女児が誰なのかはわからないと述べた。BuzzFeed Newsが母親の氏名と生年月日を提供しない限り、所在は明らかにできないという答えだった。

    この段階では、母親の名前どころか、生年月日でさえわからない。

    移民税関捜査局のボーク氏は、「その写真を見たことがあるものの、母親の氏名はわかりません。この件は、最近まで税関・国境取締局が対処していました」と主張した。

    (しかし税関・国境取締局は、詳しいことは移民税関捜査局に尋ねるよう言っていた)

    「すでにお話ししたとおり、母親の氏名と生年月日を教えていただければ調査可能です」

    移民税関捜査局の2人目の広報担当アデリーナ・プルネダ氏からも、「その人物が誰なのかはわかりません」という答えが返ってきた。

    プルネダ氏によれば、詳しく調査するためには「外国人登録番号」も必要だというのだ。

    そこでBuzzFeed Newsは、税関・国境取締局の広報担当者に再び問い合わせて、母親の氏名と生年月日、そして「外国人登録番号」を教えてもらえないか頼んだ。

    ユニビジョン報道後の6月21日夜、BuzzFeed Newsのもとに移民税関捜査局から、母親についての声明文が届いた。しかし、女児に関してはプライバシーを理由に何の情報も提供されていない。

    移民税関捜査局からの声明文は以下のとおり。

    2018年6月12日、ホンジュラスへ強制送還されたことのあるサンドラ・マリア・サンチェス氏(32)が再びアメリカに不法入国しました。サンチェスは、家族1名とともにいるところを、テキサス州ヒダルゴ近くで国境を警備中だった税関・国境取締局の職員に逮捕されました。2018年6月17日、サンチェス氏は移民税関捜査局に拘留され、現在はテキサス州ディリーにあるサウス・テキサス家族用居住センターに収容されています。サンチェス氏は現在、移民の申請手続き中です。

    サンチェス氏は2013年7月3日、テキサス州ヘブロンビルの移民局職員と遭遇。2013年7月9日に、移民税関捜査局の送還業務を行う機関(Endorcement and Removal Operations, ERO)に拘束されました。その後の2013年7月18日に、簡易送還手続きに従ってホンジュラスに送還されました。

    女児の父親ヘルナンデス氏は「デイリー・メール」紙に対し、妻と娘から数週間にわたって連絡がないところに、2人が逮捕される写真を目にしたと述べた

    ヘルナンデス氏はユニビジョンのインタビューで、「娘の写真を見て……心が張り裂けました」と語っている。「写真を見た瞬間、娘だとわかりました」

    ヘルナンデス氏は現在、ホンジュラスにおり、アメリカへ向かった妻の決断には賛成できないと述べた。

    「ここ(ホンジュラス)の暮らしはとても大変です。本当にとても大変ですよ。けれども、自らを危険にさらすほどではありません。ましてや娘の命を危険にさらすなんて」

    女児が泣きじゃくるこの写真は、移民の親子を再会させるために活動する移民支援団体のFacebookでの募金活動で、メイン画像として使われている。これまでに1500万ドルを超える募金が集まったという。

    女児は6月21日に、「タイム」誌の表紙にも登場している。

    Trump is on the cover of Time again, but it’s not one he’ll like.

    「トランプは再びタイム誌の表紙を飾ったが、今度は嬉しくないだろう」

    この記事は英語から翻訳されました。翻訳:遠藤康子/ガリレオ、編集:BuzzFeed Japan