10月11日、ロシアの宇宙船ソユーズが打ち上げに失敗し、搭乗していたアメリカのニック・ヘイグ宇宙飛行士とロシアのアレクセイ・オフチニン宇宙飛行士は脱出カプセルに乗って生還した。
2名はNASAの宇宙飛行士で、ソユーズMS-10に乗って国際宇宙ステーションへ向かっていた。しかし、ロケット離陸直後に打ち上げに失敗したため「急降下モード」に入り緊急着陸した。
ニュースサイト「NASASpaceFlight.com」 の編集長であるクリス・バージンによると、乗組員2名は揺れを感じており、本来であれば座席に押し付けられるような重力を感じる場面で、まるで自分たちが無重力状態にいるようだとコントロールセンターへ報告していたという。
彼らはカザフスタンのジェスカスガンから約20km東側に緊急着陸。その後、救助用のヘリコプターで無事救助された。
「ソユーズのカプセルは急降下して地球へ戻りましたが、その角度は通常の着陸時よりも急なものでした」とNASA は明かしている。
宇宙開発を行うロシアの国営企業・ロスコスモスのドミトリー・ロゴージン社長は次のようにツイートした。「乗組員たちが着陸しました。全員無事です」
ジム・ブライデンズティーンNASA長官はヘイグとオフチニンの「状態は良好」だと報告が入っていると話した。しかし、ロシアの通信社TASSは、匿名の情報源を引用し、異なった報告をしている。
ブライデンズティーンによると、2人はロシアに輸送されるとのことだ。
専門家たちはヘーグとオフチニンが無事だった一方で、ソユーズの失敗がISS(国際宇宙ステーション)へのアクセスに支障をきたすことを恐れている。
ノースカロライナ州立大学の宇宙物理学者キャサリン・マックは、あの宇宙船が「人間がISSを行き来する唯一の方法だ」とコメント。
NASA ジョンソン宇宙センターで行われた記者会見で、NASA はロシアと協力して打ち上げに失敗したロケットの調査をすると発表している。
BuzzFeed Newsの質問に対し、担当者は調査がどれくらい続くかは答えられないとした上で、過去の打ち上げで発生した異常を調査したときは数週間から半年かかったと明かしている。
現在、ISSには前回乗組員を運んできたロケットが6月から連結されているが、軌道上での寿命は約200日とされており、来年1月には「使用期間切れ」になる予定だ。もし飛行失敗の原因がすぐに見つかれなければ、軌道を周回するISSからの撤退が必要となる。ISSが無人となった場合、不具合が発生した際の修理は不可能だ。
「このことはNASA について一時的に問題になります。しかしどれくらい大きな問題か判断するには時期が早い」とジョージ・ワシントン大学の宇宙政策専門家のジョン・ロッグスドンはBuzzFeed Newsの取材に対してコメントした。
今回の打ち上げが中止になったことで、スペースX社とボーイング社の業務協力の元で宇宙飛行士を乗せられるロケットの開発を急がなくてはならないというプレッシャーがNASA にかかることは間違いない。
NASAは2011年にスペースシャトル計画を終了しており、それ以降NASAは宇宙飛行士をISSへ送り込むために有償でロシアのロケットに乗り込んでいる。ロシアに対して支払う金額は1席8100万ドル(約90億円)ほどだと言われており、非常に高額だ。
ロシアでは1971年以降、死亡事故は発生していないものの、2011年から2016年の間に衛星打ち上げロケットの爆発から衛星軌道突入のミスまで15件の事故が発生した。
「このプレッシャーに対抗して宇宙飛行士の安全に集中するかどうかはNASA 次第です」とロッグスドンは語っている。
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この記事は英語から翻訳・編集しました。