サイの角とトラの骨の一般利用を目的とした取引は、今でも違法だが、「医療研究および治療」目的での取引は認める、と中国政府は発表した。
この新しい方針では、「農場で飼育されているサイとトラから採取した骨と角のみが対象で、動物園で飼育されているサイとトラは対象外」であることが明確に記載されている。
サイの角とトラの骨は、伝統的な中国医学(漢方)において、粉末状にして使用されるが、「国家中医薬管理局が認可した病院と医師だけが使用できる」
サイの角は昔から、「発熱、リューマチ、痛風など」の治療に用いられてきた。〈ナショナルジオグラフィック〉によると、トラの骨は、リューマチ、関節炎、勃起不全、精力減退に対する予防として使用されている。だが、前脚の骨は、トラの骨の中でももっとも人気がある。この上腕骨は、治癒力が一番強いと信じられているからだ。
だが、世界自然保護基金(WWF)などの活動家にとって、中国のガイドラインは、慰めとはほど遠い。
「衝撃的な決定です」と世界自然保護基金(WWF)で野生生物政策のディレクターを務めるリー・ヘンリー氏はニューヨーク・タイムズの取材に答えている。「潜在的な影響は計り知れません」
「野生のトラとサイの数がここまで減少し、様々な脅威に直面している現在、トラとサイの部位の取引を合法化することは、中国にとって危険すぎる賭けです」とWWFでグローバル・ワイルドライフ・プラクティス・リーダーを務めるマーガレット・キネアード氏は、BuzzFeed Newsへ提供された声明の中で書いている。
「中国のサイとトラに関する決定は、既に絶滅の危機にあるこれらの動物の保護において、大きく逆行するものです」と米国環境NGOである生物多様性センターの国際法務ディレクターを務めるターニャ・セイナリブ氏は文書でBuzzFeed Newsに答えている。
「密猟の危機に瀕している中、中国は需要を食い止めるべきで、立証されていない医療にサイの角やトラの骨の使用を許すべきではありません」とセイナリブ氏は続けている。
2016年、中国は象牙取引の禁止を発表した。ゾウの密猟を減らす試みの一環だ。この動きは、環境保護主義者から賞賛されたが、10月29日に発表された今回の合法化は、今までの進展を台なしにする恐れがあると、自然保護活動家は警告している。
象牙は禁止しているが、中国の上級高官は伝統医学における動物の部位の使用を擁護している。
「将来的に、野生動物由来の原料がすべて代替されたら、中国医学(漢方)は恐らく役に立たなくなります。この問題は、私たち、中国人で話し合う必要があります」と全国人民代表大会の環境資源保護委員会の法制定部門の長を務めるZhai Yong氏が、象牙に取引禁止が発効された同じ年に話している。
中国が海外への輸出に熱心な伝統医学産業は、推定で約1000億ドル(約11.4兆円)の市場規模がある。