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日常に蔓延しているセクハラ。過去の体験に向き合う写真プロジェクト

どんなに「ささいな」セクハラ体験でも、その瞬間はその女性の人生という大きな絵に殴り書きされた1本の線になる。

写真家Eliza Hatchの進行中のプロジェクト「Cheer Up Luv」では、 公共の場でセクハラを体験した女性に、その場所を再訪してもらい、嫌な思い出の場所となっているその場所をエンパワーメントの場として取り戻す機会を与えている。1枚1枚の写真はそれぞれがひとつひとつの重要な物語でありながら、合わせてみることでセクハラが身の毛もよだつほど蔓延していることが明らかになる。

このプロジェクトがどのようにして始まり、昨今のメディアにおける性的暴力の訴えを受けて、プロジェクトがどのように広がってきているのかを、Eliza HatchがBuzzFeed Newsに語った。

Cheer Up Luvは、セクハラを受けた女性の訴えを綴る進行中のプロジェクトだ。女性の声を届け、一度は自分ではどうにもできなかった体験の主導権を取り戻すためのプラットフォームである。セクハラの体験は、露出魔との遭遇だったり、言葉による性的被害だったり、実際に身体的に性的被害を受けたことだったりする。すべて公共の場で起きたことだ。セクハラ被害を受けた女性を写真に撮り、セクハラ体験を公表することで、セクハラがあった場所を自分のものとして取り戻す手助けをし、あまり語られることのない問題に光を当てる。これが、このプロジェクトの目的だ。

たくさんの女性の写真を撮ったが、知り合う前はまったく見ず知らずの人で、みんな共有したい体験談があると名乗り出てくれた。ひとりひとりまったく異なり、写真に撮られることを怯える人もいれば、とても心地よく撮らせてくれる人もいた。いつも試行錯誤ではあるが、セクハラの体験談を話してくれるときにリラックスしてもらえるように、常に心がけている。少し脱線するが、写真を撮っているときはほとんど、通りがかりの男のひとりやふたりには、セクハラを受けた。

Cheer Up Luvの「元気出して(Cheer up, love)」は、私の人生における普遍のテーマだ。2017年の初頭、道を歩いていたら、見知らぬ男に「元気出せよ(Cheer up)」とすれ違いざまに言われ、同じ言葉なのにものすごく嫌な気分になった。聞き慣れた「元気出して」という言葉に無性に苛立ち、いてもたってもいられなくなった。ハラスメントのことを女友だちにすぐに話して、結局1時間以上も互いの経験を話し合うことになり、まるでセクハラが日常茶飯事であるかのように話が止まらなかった。

ショックだった。セクハラについてこんなにも大胆に話せるなんて。でもプロジェクトを始めたのは、男友だちが不信や嫌悪で遮ってきてからだ。問題なのはハラスメントという行為だけではなく、ハラスメントを取り巻く意識でもあることに気づいた。

今の時代において、このプロジェクトはとても重要だと私は信じている。歴史を振り返ってみると、女性は日々経験するハラスメントについて、声を上げ、真面目に取り合ってもらえるプラットフォームや聞き手を持ったことがなかったからだ。どんなに「ささいな」セクハラ体験でも、その瞬間はその女性の人生という大きな絵に殴り書きされた1本の線になる。

セクハラはメディアでバイラルになった、とたくさんの友だちが言い続けている。理解するのが難しい奇妙な考えだが、一理ある。セクハラの主張や話はいつまでも止むことがなく表面化し続け、ここまで来るのは長かったし、セクハラを黙殺する沈黙が遂に破られたことは励みになる。#metoo の動きは、とても力強いものだと思う。ハラスメントを受けた人が性別を問わず、個人が晒されることなく、また、自分の経験を詳細に話すことなく、セクハラ被害を訴えることができるチャンスだ。ほどよい匿名性と連帯性があるのだ。

プロジェクトを始めるとき、知り合いの女性すべてに、セクハラを体験したことがあるか訊ねてみた。全員から返事がきて、答えは2通りだった。ひとつ目の答えは、「あるけど、5つのうち、どの話が聞きたい?」というもので、もうひとつは、「えっと、セクハラと呼べるほどひどい目にあったことがあるか分からない」というものだった。ふたつ目の解答からは、何がセクハラか自分自身でも分からない女性もいることが分かった。そこで、動いている車から男に大声で話しかけられたことはあるか、見知らぬ人から欲しくない褒め言葉をもらったことがあるかと訊ねたら、たくさんのセクハラ体験談が出てきた。

Cheer Up Luvへの反応には圧倒された。体験談を提供してくれる女性の数が、ここまで多いことは今までなかった。幅広い年代の女性が連絡をくれただけではなく、娘を心配する父親からメールをもらったり、過去のセクハラを謝罪したりする老人さえいた。伝えたいことを理解してもらえて、メッセージが広がっていることを感じることができ、とても心強く感じた。

このプロジェクトは、参加してくれた女性にとっても、私にとっても癒やしの効果があった。変えることができると実感できたし、目指している変化を起こせることを切に願っている。私の撮った写真、そしてこのプロジェクトから、前向きな気持ちを持ち帰って欲しい。「前向きな気持ちを持ち帰る」これはまさに、このプロジェクトに願っていることだ。一度は向き合えなくなってしまったセクハラの場所を、臆することなく話せる場、力を取り戻す場所へと変える。それが、私が常に目的としていることだ。

Eliza Hatchの話は、以下ウェブサイトでも紹介されている(elizahatch.comcheerupluv.com。)


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この記事は英語から翻訳されました。