「現代のアメリカで黒人男性として生きる意味」を写真で探る

    「彼らの息子や兄弟、父親たちも見てほしい。誰もがその物語に共感するはずです」

    ラマー・アレン(左)と、その父、グリン・シャーウッド・ガストン・ジュニア

    写真家ジョシュア・ラシャード・マクファデンの『自己に立ち返る(Come to Selfhood』は、現代のアメリカに生きる黒人男性にとって「男らしさ」とは何を意味するのか、その輪郭を浮き彫りにすることに取り組んだ写真シリーズだ。

    家族の古い写真と手書きの証言が添えられた一連の印象的なポートレート写真を通して、マクファデンは率直な対話を促し、「黒人の男らしさ」をめぐる社会的通念を長きにわたって根づかせてきたステレオタイプを打破しようと試みている。

    いまも続いているこのシリーズが形になったのは、武器を持たない黒人男性が警官に殺される事件が相次ぎ、全米のメディアの見出しを通じて、そうした事件に注目が集まり始めてからのことだ。

    マクファデンはBuzzFeed Newsに、「2012年に高校生のトレイボン・マーティンが自警団員によって射殺されたとき、アメリカで黒人男性として生きることについて父がいつも言っていたことを、本当の意味で理解しました」と語った。「その後の2014年にも、18歳のマイケル・ブラウンが警官に不当に射殺されました。それをきっかけに、ブラック・ライブズ・マター運動を60年代の公民権運動になぞらえるだけでなく、アフリカ系アメリカ人のイメージも描き出す作品の制作にとりかかりました。このプロジェクトは、自分自身のアイデンティティを問い、黒人男性の社会的イメージに立ち向かった中で生まれたものです」

    写実的な表現と正直さは、マクファデンの芸術制作にとって欠かせない要素になっている。「写真を見た人たちに、自分自身の姿を見てもらえたらいいと思っています」とマクファデンは言う。「彼らの息子や兄弟、父親たちも見てほしい。誰もがその物語に共感するはずです。私の作品が、何よりも、断固たる行動のきっかけになってくれたらと思います」

    ここでは、現在進行中の「自己に立ち返る」シリーズのなかから、マクファデンがBuzzFeed Newsに提供してくれた選りすぐりの写真と言葉を紹介しよう。

    ジェレミア・トンプソン(左)と、その父ジョセフ・トンプソン・シニア

    「これまでずっと、自分の本当のアイデンティティを表現するのが怖かった。ゲイの黒人男性である私には、脅されたり殴られたり、殺されたりするおそれがあるからだ。友人たちのなかには、アイデンティティを理由に攻撃されたり、ハラスメントを受けたりした人もいる。

    自分の本当の姿を恥じているとは言わないが、自分の身を守らないといけない。黒人であるということは、黒人のゲイであるということとは別の話だ。今回のことをきっかけに、自分の本当の姿を隠すのはやめた。そして、表現が大切だということもわかった。なぜなら、自分が自分らしくあることで、誰かを救うことになるかもしれないのだから。

    誰であれ、肌の色や性的指向のような、自分でコントロールできないことを理由にびくびくと怯えて暮らすべきではない。私は、黒人コミュニティの真の団結のためにも、おそれずに闘おうと思うようになった。何かを語らずにいたところで、その存在が消えてなくなるわけではない」

    ―ジェレミア・トンプソン

    ジョナサン・マーシャル(左)と、その父ジョン・マーシャル

    「ごくあたりまえに、シンプルに、人間であること。われわれは泣き、笑い、闘い、創造し、愛し、同情し、夢を見る。ほかの人種とまったく同じように。

    祖父は、私にとって男らしさの象徴だった。毎日毎日、祖父が働いて家族の食い扶持を稼ぎ、叔父やいとこたちを大人に育てあげるのを見てきた。祖父は控えめでひょうきんな人で、自分の男らしさに自信を持っていた。

    自分のことをポジティブに語り、目標を定める。それはずっと、アメリカの最低の部分が黒人に差し出すものを無視するのに役立ってきた。この国を支配する文化に頼る必要のない自分の居場所を見つけ、自分自身に頼る。それが、肯定的な自己認識を強めてくれる」

    ―ジョナサン・マーシャル

    ジョナサン・マギー(左)と、その父ウィレス・ディミトリス・マギー

    「人生のあらゆることが、私という人間、そして、私がなりたいと思う人間の型をつくるのに役立ってきた。あらゆる道が、私の個性に新たな変化を運んでくる。あらゆる出来事が、私の精神の本質を進化させる。これまでの人生で起きたことの何かひとつを、良いほうにせよ悪いほうにせよ変えることができるとしても、私はそうしないだろう。なぜなら、ひとつひとつのことすべてが、いまの私という人間を形づくってきたのだから。

    私にとって、黒人男性の男らしさを体現する理想の人は父だ。父はずっと懸命に働き、自分で自分を鼓舞し、いま手にしているすべてのものを手に入れてきた。家族を養い、男であることの意味について、いつも新しい教訓を私に与えてくれる。

    ほかの人のことは気にするな。おまえが何をしていようが、世界の誰かは、おまえを憎んだり、おまえの持っているものを欲しがったりする。だから、とにかく気にするな。自分をしっかり持って、自分を信じろ」

    ―ジョナサン・マギー

    ジャメル・ジョーンズ(左)と、その父ジェームズ・ジョーンズ

    「たぶん、私を感動させるのは、人間と性質の組み合わせなのだと思う。父はものすごく勤勉で、愛情深く、私の知る人のなかでも屈指の知性の持ち主だ。伯父のピートは、いつもリーダーとしてコミュニティに関わっている。祖父のアルバートは、人生を愛し、その人生をまっとうした。異常なほど記憶力が良くて、会話が途切れたまさにそのポイントから、また会話を始めることができた。7人の子どもとたくさんの孫がいるのに、ひとりひとり全員に気を配ることができたのは驚きだ。男であるというのはどういうことか、それをわかりやすく教えてくれた家族に感謝しないといけない。

    私は自分を黒人男性だと認識している。黒人であるということが、ネガティブなことだとは思っていない。私にとってそれは、闘争と勝利の豊かなレガシーの一部になるということだ。私は、この地球でもっとも創造的な人たちの集団、真の変化を導く集団の一員であり、それを嬉しく思っている。自分自身や家族、自分の歴史に対する見方を、他人に歪めさせるつもりはない。

    抑圧されていようが(そして抑圧されているにもかかわらず)、私たちは並外れた人々だ。たしかに、抑圧に対処せずに済んでいれば、もっと短い時間で、もっとたくさんのことを成し遂げられただろう。我々は団結した集団だが、多くの人はそれぞれの分野(芸術、科学、心理学など)で先頭に立ち、優れた結果をあげていると思う」

    ―ジェームズ・ジョーンズ

    マット・コーンウォール(左)と、その父デイビッド・アレクサンダー・コーンウォール

    「実を言えば、黒人男性の男らしさに関して、理想の人が存在するとは思っていない。男らしさは、特定のグループに分類される一連の性質だ。だが、100%男らしい人など、誰もいない。それは不可能だ。仮に存在するとしたら、皮肉な話だが、そうした理想を熱心に追い求めない黒人男性こそが、理想の人ということになるだろう。

    私からすれば、黒人の男らしさとは一種の幻影だ。個人的にはそれを目指しているが、完全につかまえることは絶対にできない。とはいえ、私の両親は黒人で、私は自分の身体に満足している。いまのところ、私にとってはこれでまったく申し分ない」

    ―マット・コーンウォール

    キャメロン・ゴインズ(左)と、その父キース・ゴインズ

    「黒人は暴力的だ、無知だ、犯罪者だ、騒々しい、攻撃的だ、ドラッグを売る、人を陥れる。そうした偏見は、毎日のように私に影響を及ぼしている。なぜなら、黒人男性の私は、性格ではなく肌の色を理由に、自動的に型にはめられてしまうからだ。いつだって、メディアの偏見にジャッジされている。

    そのおかげで、どうすればそれをはね返し、経験から学んで成長し、ネガティブなことを人生の教訓に変えられるのか、その方法がわかるようになった」

    ―キャメロン・ゴインズ

    クリスチャン・コディ(左)と、その父ヤーノス・コディ

    「最初に思い浮かんだのは、ヒップホップ歌手のアンドレ3000だった。だから、彼を例にして話そうと思う。私が彼をすごいと思うのは、ステレオタイプ的なラップアイコンとして自分を売り込まない状態でヒップホップ界に存在しているところだ。周囲のものに薄められていない、強固な自己表現の感覚を持っている。私は、自分自身を見せることをおそれない人たちが好きだ。

    私にとって、「黒人の男らしさ」という概念は、自由で流動的なものだ。さまざまな形をとりうるという意味で、簡単に操作できるものだ。私の考えでは、黒人男性としての私のアイデンティティの特徴は、知性、ハードワーク、愛情深さにあると思う。それが私の本質であり、私が経験してきたことだ」

    ―クリスチャン・コディ

    マーカス・マクファデン(左)と、その父クレイグ・マクファデン

    「人は特定の経験によって、状況について異なった考えを持つようになる。私の場合も、これまでに経験してきたことが私の考え方の下地をつくり、変えてきたように感じている。私は、教育を受けていた時期の大部分を通じて、白人が多数を占める学校へ通っていた。その経験は、人生のほかの局面で、多様性の欠如にぶつかったときにどう対応すればいいかを教えてくれた。そういったときには、黒人の声が存在しないような感じがする。

    抑圧の犠牲者ではないときの黒人は、流行やクールさを体現している。ほかの人たちは、私たちのファッションを身につけたがる。私たちには強烈なアイデンティティがあり、集団からくっきり浮かび上がっている。私たちは才能と可能性を備えている」

    ―マーカス・マクファデン


    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:梅田智世/ガリレオ、編集:BuzzFeed Japan