愛するペットの最期を看取った写真

    Last Moments」のねらいの一部は、ペットとのつらい別れに直面している飼い主に、自分はひとりではないと知ってもらうことだ。そしてその悲しみは、見過ごされたり、他の人によって軽んじられたりすべきではないということだ。

    コロラド大学ボルダ―校のアシスタント・プロフェッサーを務めるロス・テイラーは、フォトジャーナリストとして20年以上のキャリアを持つ。

    その間にテイラーは、世界でもっとも悲惨な住環境で暮らす人々の厳しい現実を写真におさめてきた。彼の写真はしばしば、心に深い傷を残す出来事と関係した社会問題や、トラウマになりそうな出来事がじかにもたらす結末に焦点を当てている。テイラーはBuzzFeed Newsに対し、「世界をとらえたこうしたドキュメンタリー作品で、人々が共有する境遇についてより踏み込んだ洞察を提供し、他人への共感を育む手助けができたらと思っています」と語った。

    テイラーが新シリーズ「Last Moments(最期の瞬間)」でカメラを向けたのは、多くの人が経験した、あるいは経験するであろうトラウマ――家族の一員であるペットの死だ。テイラーは、資格を持った獣医師の協力で、飼い主がペットに別れを告げるという、つらい最期の瞬間に立ち会う機会を得た。そうして撮影した写真では、人間と、そのそばに寄り添ってきた動物とのあいだに存在する紛れもない絆が、敬意とともに誠実に写し出されている。

    テイラーはこのほどBuzzFeed Newsに対して、「Last Moments」からの写真をいくつか紹介しながら、プロジェクトの進行中に自身の感情がどのような変化を辿ったのかを語ってくれた。

    Last Moments」のねらいの一部は、ペットとのつらい別れに直面している飼い主に、自分はひとりではないと知ってもらうことだ。そしてその悲しみは、見過ごされたり、他の人によって軽んじられたりすべきではないということだ。

    その悲しみは本物であり、苦しいものだ。

    アメリカでは毎年、多くの飼い主がペットを亡くしてつらい思いをしている。そして最近の傾向として、動物病院でペットを看取らずに、自宅で安楽死させるという決断を下す飼い主が増えている。

    このプロジェクトの制作過程は、かつてないほどの強烈な体験となった。以後、「ペットを亡くした」とか「ペットが病気で死にそうだ」という話を耳にしたときの私の反応は一変した。そうした状況にある人々にもっと心を開くようになったし、ペットの死に日々立ち会っている獣医に対して、心から尊敬の念を抱くようになった。

    ペットを看取った人々の感情を目の当たりにするたびに、私は心を大きく動かされた。ほぼすべての飼い主が涙を流した。泣きじゃくる人もいた。けれども、どの家族も、獣医のやさしさに心から感謝していた。悲痛さと思いやりが混在しているさまは印象的だ。獣医はとても重要な役割を担っている。

    ある1枚の写真には、飼い犬が死んだとわかった直後に、苦しみのあまり声をあげて泣く女性が写っている。右手で犬の顔を優しく支えている彼女に、夫と獣医のダニー・マクヴィティが、慰めようと手を差し出している。この家族に出会ったのは、プロジェクトを始めて間もないころだった。そしてこのときの体験が、私を大きく揺り動かした。絆の深さを記録することがいかに意義深いかを悟ったのはこの瞬間だ。

    私の心はあの瞬間、彼女の悲しみを思って引き裂かれた。

    このプロジェクトを思い立ったのは数年前のこと。親しい友人が、飼い犬が危篤になって、悩んだ末に自宅で安楽死させることを選んだのだ。病院に連れて行けば犬にストレスがかかってしまう、自宅のほうが犬にとって負担にならないだろうと考えたのだ。彼女にとっては胸がえぐられるようなことであり、多くの意味で、数年来でもっともつらい体験となった。

    この出来事に心を動かされた私は、ペットの安楽死について調査を始め、多くの団体に連絡を取った。最初に返事をくれたのは、フロリダ州タンパにある「Lap of Love(愛の膝)」だ。創業者で最高経営責任者(CEO)でもある獣医のマクヴィティが私の求めに応じてくれた。そして何よりも、このプロジェクトに取り組む理由を理解してくれた。連絡してから1カ月も経たないうちに、私はこの団体とともに活動を開始した。

    コロラド州デンバーの「Caring Pathways(思いやりの道)」も私のプロジェクトに協力してくれた団体だ。彼らも、心を込めて熱心に活動している。両団体に対して、心からお礼を言いたい。

    最後にもうひとつ。私をペットとの別れの場に立ち合わせてくれた家族のみなさんがいなければ、このプロジェクトを終えることはできなかった。みなさんに心からの敬意を表したい。私が立ち合うことを許されたのは、人はだれでも、語りたいストーリーを持っているということと、そのストーリーは語られるべきだということが大きいのだと思う。

    プロジェクトを開始した後に寄せられた反響の大きさたるや、驚くほどだった。自身の体験を語ってくれた人もかなりいる。ペットとの絆は普遍的なものであり、その絆が絶たれたときの悲しみは、多くの人が共感できる。人々からは、心を震わせるような感動的なメールや思い出の数々が届いた。素晴らしい体験だった。

    ペットを失った人に対して、「ただの犬でしょう」とか「たかが猫じゃない」「また飼えばいいでしょう」という言葉は絶対に口にしてほしくない。ペットの死に伴う悲しみを認め、尊重することが重要だ。最終的には、お互いに対する共感が育ってくれることを願っている。

    ロス・テイラーの作品は、RossTaylor.netで確認できる。

    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:遠藤康子/ガリレオ、編集:BuzzFeed Japan