米国で高性能マスクを求めた看護師らが停職処分「看護師よりも医師の命を大切にしている」

    米カリフォルニア州の病院に務める看護師が、新型コロナウイルス感染リスクを低減する「N95マスク」無しでは陽性患者と接することを拒否した結果、停職処分となった。


    米カリフォルニア州の病院に務める看護師10人が、N95マスクが支給されるまで新型コロナウイルス陽性患者に接することを拒否した。その後、病院から停職を言い渡された。

    N95マスクは、空気中の粒子の95%を捕集し、着用者の呼吸器感染のリスクを低減することができる。

    チェルシー・ハルミーさんは、カリフォルニア州サンタモニカの「プロビデンス・セントジョンズ・ヘルスセンター」で停職処分を受けた看護師の1人だ。

    「職場の病院には、十分なPPE(個人防護具)がありませんでした。今は、いつ職場に戻れるかは全く分かりません」とBuzzFeed Newsに語った。

    プロビデンス・セントジョンズ・ヘルスセンターでは、医師のためにはN95マスクが確保されていた。

    しかし、看護師にはN95マスクと比べると防護力が低い一般のマスクが与えられていた、と看護師たちは話している。

    「私たち看護師は医師と比べ、患者と直接接する時間がはるかに長いのに」とハルミーさんは語る。

    「病院側は、私たち看護師よりも医師の命を大切にしているように感じました」

    去年の秋から看護師として働き始めたハルミーさんは4月11日、夜勤の引き継ぎ時に看護師にもN95マスクを支給するよう病院に要求したが、拒否された。

    そのため、ハルミーさんは看護師長に「N95マスク無しでは、コロナウイルス陽性患者と接することはできない」主旨を伝えた。

    すると、病院の上層部がすぐに書類を持って現れ、ハルミーさんに署名をするよう求めてきたという。

    書類には、こう記されていたそうだ。

    「上司からの直接の指示に従わないことは、私たちの病院の方針に違反するとみなす」

    「さらに、その行為が患者の放棄、またはその他の医療専門家による不正行為になるか検討し、必要があれば看護師資格の発行機関に報告する」

    ハルミーさんは、彼女の事情をBuzzFeed Newsに語った。

    「私は病院を辞めたくありません。今後も病院に残って患者さんのケアをしたいのです」

    「しかし、N95マスクが無い環境は安全だとは思えません。やはり、私にはN95マスクが必要です」

    病院側は「14日の時点で、コロナウイルス陽性患者のケアを行うすべての看護師に、N95マスクを支給している」と声明を出した。

    「個人防護具が全国規模で不足していることは、すでによく知られているはずだ」と声明には付け加えられていた。

    ハルミーさんは病院だけではなく、政府系機関の米疾病予防管理センター(CDC)にも原因があると考えている。

    CDCは、N95マスクや他の個人防護具の需要が高まり続けていることを受け、コロナウイルス陽性患者と直接接する看護師やその他の医療提供者の防護具の基準を引き下げたのだ。

    「一般の人に対して、スーパーに行く時に付けるよう推奨しているマスクを、私たち看護師にも付けろと言うのはおかしいと思います」とハルミーさんは語る。

    「私たちは、咳をしている非常に容態の悪いコロナウイルス陽性患者と、狭く密閉された部屋に12時間も一緒にいるのです」

    「この状況にも関わらず、適切な防護具が支給されないというのは本当にどういうことでしょうか?」

    CDCを批判しているのは、ハルミーさんだけではない。

    全米看護師連盟の共同代表であるジャン・ロスさんは、「CDCの指導は、パンデミック時に医療従事者を保護するためのものではない」と語った。

    現在、ハルミーさんが働く病院ではN95マスクを提供しており、彼女自身も仕事に戻る準備はできている。しかし、ハルミーさんは未だ職場に戻ることを許可されていない。

    ハルミーさんと他の看護師らは、この停職期間中でも給与が支払われている。しかし、病院の人事調査が完了すれば、懲戒処分を受ける可能性もあるという通知を受けた。

    「私はあまり目立たないようにし、患者さんのケアをしたかっただけなのです。私が求めていたのは、自分の『身の安全』を守るのに必要な個人防護具だけでした」

    ハルミ―さんは、自身の祖母が何十年もこのプロビデンス・セントジョンズ・ヘルスセンターで働いていたため、この病院で働けることが決まったときは「本当に嬉しかった」と語る。

    「私の勤める病院は、私に正しい手助けを提供してくれなかった。本当に悲しいです」

    この記事は英語から翻訳・編集しました。