こちらはライアン・ロクテ。リオ五輪競泳アメリカ代表の中でも、マイケル・フェルプスに次ぐスター選手だ。
ロクテはリオで強盗にあったと証言した。14日早朝、ロクテを含む米リレーチームの4人でいたところ、銃を突き付けられ、金を奪われたというのだ。しかし、この話はその後、嘘だとわかった。
監視カメラの映像などから、これまでの流れを見てみよう。
8月14日、午前1時47分。ロクテたち選手は、リオ五輪のパーティー会場に到着。
午前5時47分。4人の選手たちは会場をでて、タクシーの方へと歩いていく。
4人は、ライアン・ロクテに加え、ガナー・ベンツ、ジャック・コンガーとジミー・ファーゲンだ。
午前6時ごろ。選手たちはガソリンスタンドに到着。トイレを壊し、スタンドのスタッフと口論になった。
監視カメラの映像では、トイレ近くの廊下を歩きまわっている4人が見える。しかし、何が起こっているのかは、はっきりとは分からない。
トイレから出て、男性たちがタクシーに再び乗り込んだところに、スタンドのスタッフがやってくる。男性たちはタクシーから出て、一人は手を挙げている。
午前6時13分。ガソリンスタンドのスタッフが、トイレ付近から枠のようなものを持って出てくる様子が映っている。
ブラジル警察は18日の記者会見で、ガソリンスタンドのスタッフや警備員が、選手たちに通訳者を通じて、選手たちがトイレのドアや鏡を壊したので、弁償してほしいと伝えた、と話した。
警察によると、選手たちは20ドルと100レアル(日本円で約5000円)を渡し、選手村に戻っていったという。4人のうちロクテが最も攻撃的で、明らかに酔っ払っているようだったという。
警察は、選手たちがあまりにも攻撃的だったため、警備員が一時彼らに向かって銃を構えたことは事実だとも付け加えた。
午前6時15分から7時の間。ロクテは母親に電話し、チームメイトと一緒にいたところ、強盗に遭って、銃を突きつけられたと伝えた。
午前7時ごろ。4人は選手村に戻った。ロクテはジミー・ファーゲンの頭に自分のIDカードを打ちつけている。
午前9時27分。ロクテが銃を突きつけられ、強盗被害に遭った、とFOXスポーツが報道。
BREAKING: @USASwimming Gold medallist Ryan Lochte has been held up at gunpoint at a party in Brazil. Details on @FOXSportsNews 500.
午前10時27分。国際オリンピック委員会(IOC)の広報担当者がロクテの話は「事実ではない」と話す。
IOC director of comms Mark Adams has just said Lochte gunpoint story is "not true."
午後12時45分。ロクテはNBCの取材に、警官のフリをした強盗が額に銃を突きつけたと話した。これが、ロクテが公に語った最初の証言だ。
タクシーに乗っていたら、警官のバッジをつけた人たちに、車を路肩に止めるように言われた。銃を突きつけられ、他の3人の選手たちに地面に伏せるように言ったので、3人は言う通りにした。私は拒否した。自分たちは何も悪いことをしていないのだから、地面に伏せる理由はないと思った。
そうしたら、額に銃を突きつけられて「伏せろ」と言われた。私は手を挙げ、どうにでもしてくれ、という気持ちだった。男は金を奪った。財布は取られたが、携帯電話とIDは置いていった。
午後5時57分。ロクテはTwitterで自分たちは被害者であると強調した。
8月16日。ロクテは、予定よりも早くアメリカに帰国。
8月17日。ブラジルの裁判所が、ロクテとファーゲンが出国できないよう、2人のパスポートの押収命令を出す。しかし、ロクテはすでに帰国していた。
17日の晩、ベンツとコンガーは、アメリカ行きの飛行機から降ろされ、ブラジル警察に拘束される。
8月18日。NBCとのインタビューで、ロクテは、額に銃を突きつけられてはいないと、話の内容を少し変える。しかし強盗被害に遭ったことは翻さなかった。
BREAKING NEWS: @MLauer reports after speaking with Ryan Lochte directly: https://t.co/YQHTMLeQfi https://t.co/Y6mWRIuwte
NBCのマット・ラウアーが話が変わったことを質問したところ、ロクテは「こんな話を作り上げることはないし、他の選手たちだってしない」と語った。
18日の晩。ベンツとコンガーは強盗話を取り下げ、パスポートを返された。
18日。米国オリンピック委員会(USOC)は選手たちの行動についての声明を出した。
「4人の選手の行動は到底受け入れられるものではなく、大半のアメリカ代表チームメンバーの価値観や行動を表すものではありません」
そして、19日。ロクテがTwitterで謝罪した。
ロクテは20日、NBCの番組に出演し、先週末の出来事について「大げさに話しすぎた」と語っている。
帰国の途についたチームメイトたちも、口を開き始めた。警察の話とは少し食い違う部分もある。
ロクテが強盗被害の話を嘘をついた理由は、わかっていない。しかし批判は広がっている。
ワシントン・ポストは、ロクテの謝罪文について、「誠実さが全くなく、ブラジルを自分が無意識に侮辱していることに気がついていない」と酷評。
ニューヨーク・ポストは、ロクテを世界で嫌われる傲慢で醜いアメリカ人を体現していると表現した。
また、ニューヨーカーは「ブラジル人がなぜこれほどまでにライアン・ロクテの一件にこだわるのか」というタイトルの記事を掲載。治安の悪いブラジルの評判につけこんだとも取れるロクテの一件は、先進国に仲間入りしきれないブラジル人の自信の無さを刺激したとしている。
ブラジルの大会組織員会の広報責任者、マリオ・アンドラーダは、ロクテの謝罪を受け、「ブラジルの人々は恥をかかされたと感じていた。謝罪に感謝する。過去のこととしたい」と記者会見で話したとNHKが報じている。また、IOCのマーク・アダムス広報部長は19日の定例会見で、「ブラジル国民が憤慨していることは理解できる」と述べたという。