トランプが米国で生まれた赤ちゃんへの国籍付与を止めると言いだした....けど、きっと無理だ

    米国憲法に違反しかねず、実行には高い壁。「選挙対策では」との指摘も。

    トランプ大統領は10月30日にリリースされたAXIOSのインタビューで、米国内で生まれた全ての子どもに国籍を自動的に与えることを取りやめるという考えを示した。これは、憲法で定められた権利だが、大統領令を出して無効にするという。

    「いつも憲法改正が必要だと言われてきたが、見てみろ、いらないんだよ」とトランプ氏は語った。

    「議会が法律を制定すれば確実に可能だ。だが今や、大統領令でもできると言われている」

    これは、ある意味で不正確だ。トランプ氏が大統領令に署名したとしても、それは間違いなく裁判所に回ることになる。そして最高裁判所は、米国で生まれた人には米国の市民権(国籍)を得る権利があるという明確な判例を示している。

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    米国憲法修正第14条は、以下のように規定している。

    アメリカ合衆国で生まれ、あるいは帰化した者、およびその司法権に属することになった者全ては、アメリカ合衆国の市民であり、その住む州の市民である。


    いかなる州もアメリカ合衆国の市民の特権あるいは免除権を制限する法を作り、あるいは強制してはならない。


    また、いかなる州も法の適正手続き無しに個人の生命、自由あるいは財産を奪ってはならない。


    さらに、その司法権の範囲で個人に対する法の平等保護を否定してはならない。

    最高裁は1898年、連邦政府は国内で生まれた人間の市民権を否定することはできないという判決を出している。最高裁はこの判例を見直すこともできるが、判事らがこの先例を覆しそうな状況にはない。

    ポール・ライアン下院議長(共和党)は30日、「大統領令で出生地主義を覆すことはできない。オバマが大統領令で移民法を変えようとした時も抵抗した。保守派として、我々は憲法を信じている」

    「修正14条が述べていることは非常に明確だ。変えるならば、非常に、非常に長い憲法改正プロセスを通ることになる」と発言した。

    インタビューでトランプ氏は、その地で産まれた人間に国籍を自動的に与えるのは世界で米国だけだ、という虚偽の内容の発言を行った。

    「だれかがやってきて赤ちゃんが産まれれば、全ての福祉を受ける権利を持った米国民になれるという世界で唯一の国だ。こんなのは馬鹿げてる。実に馬鹿げている。変えないといけない」

    これは、間違いだ。

    隣接するカナダやメキシコを含め世界30以上の国が、その地で生まれた子には国籍を与えるという、いわゆる出生地主義を採っている。

    トランプ氏の発言は、11月の中間選挙を控えて憎悪を煽る発言だと批判された。

    トランプ政権の国家安全保障担当者だったマイケル・アントン氏は7月、ワシントン・ポスト紙で、出生地主義を批判する意見を書いている。

    「とうに改められるべきだった過ち」として、トランプ大統領に「国籍を持っていない人の子どもに国籍を認めない」という大統領令を出すように求めた。

    アントン氏の議論は、トランプ氏のスタンスに近いと思われる。1898年の合衆国対ウォン・キム・アーク事件の際に最高裁が指摘したのは、合法的手段で米国に移民した両親の子どもに国籍を保障するという点であり、それは非合法移民を含まない、という主張だ。

    「どうして憲法擁護を誓う大統領が、修正14条の本当の意味を守るために立ち上がらないのか。判事たちは大統領に同意する以外ないだろう」

    この意見は、憲法学者や有識者の広い批判を浴びている。

    進歩主義のシンクタンク、憲法アカウンタビリティセンターのエリザベス・ワイドラ所長は「いま出生地主義を否定する人々の主張はおおむね、150年前にこの問題が起きた時にすでに出ていたものばかりだ」と、アントン氏への反論として書いている。

    「彼らは敗れ、憲法が勝った。親の入国の経緯を問わず、米国で生まれた全ての人間に、米国籍が保障されている」

    この記事は英語から翻訳・編集しました。