「ゴルフカートのゲイルさん」と命名されたある白人女性が、フロリダ州の子供のサッカーの試合を理由に、ある黒人男性を警察に通報した。その時の様子を写した動画がFacebookに投稿され、大きな議論を巻き起こした。白人がいつも通りに生活している有色人種を通報した例がまた一つ増えたと多くの人が考えている。
その黒人男性、ジェラルド・ジョーンズは、その女性がゴルフカートに乗って近くをうろうろするなかで、警察と話し合う羽目になった。最終的に彼は何のお咎めも受けずに解放されたが、ジョーンズは事態にひどく憤っていた。
緊急通報の音声録音は、セントジョンズ郡の保安官事務所によってBuzzFeedに提供された。録音を聞くと、今回のできごとは、ポンテ・ベドラ・パーム・バレー陸上競技協会の競技場管理人の女性が、ジョーンズともう一人の白人女性の対処に関して支援を求めて警察への緊急通報したことから始まったとわかる。競技場管理人は、広い施設内のさまざまな場所で問題が起きていないかを確認する役目を負っている。
10月14日午後、ジョーンズとその白人女性の子供たちは、フロリダ州セントジョンズ郡のデイビス・パークで試合をしていた。
試合中、観覧席はヒートアップしていったらしい。そこで協会スタッフは会場全体に注意を促そうとしていたという。競技場管理人は試合の開始後早い段階で、高校生程度の年齢の審判に暴言を吐いたとして、すでにある父親を施設内から退去処分にしていた。
ポンテ・べドラ陸上競技協会の会長ゲイリー・イーソンは、フロリダ州ジャクソンビルのテレビ局ファースト・コーストニュースの取材に対し、競技場管理人は観戦中にばちあたりな言葉を吐いたとして、ある母親に対しても正式に警告を出したとしている。
「許容できる以上に何度も騒ぎが起きていました」とイーソンは話す。そして、競技場管理者は退去処分にした父親や警告を出した母親に関しても協会に報告した、警察は通常の状態であれば呼ぶ必要はなかったと言い添えた。
警察は、こういった出来事の後にジョーンズがサッカーフィールドに近づいていき、彼の息子に大声で話しかけたと伝えている。BuzzFeedはジョーンズと競技場管理人の女性にコメントを求めたが、返答は得られていない。
ジョーンズは警察に、息子に対する審判の判定はひどいものだと思ったが、それでも判定を尊重するようにと伝えていたと述べている。
「審判は私の息子にひどい判定を下したんです。それで私は『なあ、審判はいつも正しい。いつも正しいんだよ』と息子に言ったんです」と彼は警察に伝えている。
「(競技場管理人は)私が審判に怒鳴ったと思って、急に施設外退去を言い渡してきたんです。それで私は『すみません、私は息子に話していたんですよ』と言いました」
子供が協会に入る際、親はサッカークラブの「親の行動規範」に同意と署名を求められる。そこには、「スポーツマンらしくない指示や激励は、青少年スポーツから言葉による、または身体的な虐待を取り除くために禁じられる」とある。親はまた、「観客席からのコーチング」も禁じられている。
のちにその時の様子を映した動画をFacebookに投稿し、注目を集めることになる「ジンジャー・ギャロル」ことエイミー・ウィリアムズは、現場を目撃。競技場管理人は「とてもしつこかった」と話す。
「ジョーンズさんは、自分の子供が審判に下された判定に対してイライラしているのを見て、『審判は正しいんだよ』と叫んでいました」とウィリアムズは書いている。「この女性をゴルフカートのゲイルさんとでも呼びましょう。ゴルフカートのゲイルさんは、それを聞くと急に動き始め、すばやくジョーンズさんに近づいていき、嫌がらせは見過ごせないと指摘しました。ジョーンズさんは、ただ息子と話していただけだと伝えましたが、ゴルフカートのゲイルさんはなぜかそこでやめはしませんでした。ジョーンズさんに嫌がらせを続け、つきまとったのです」
競技場管理人とのやり取りの後、ジョーンズは荷物をまとめて施設から出ていく準備を始めた。
「ジョーンズさんは面倒を避けるために、そこから立ち去ることを申し出ました」とウィリアムズはFacebookの投稿で書いている。
「ジョーンズさんが荷物をまとめ始めると、ゴルフカートのゲイルさんは、彼の威圧的な振る舞いに身の安全を感じられなくなったので、警察を呼んだと知らせたんです」
一方、マリア・ワルサーは、競技場管理人が警察に緊急通報をする様子を携帯で撮影し始めた。マリア・ワルサーは息子がジョーンズの息子と同じサッカーチームに所属している母親である。
ワルサーの動画は、警察の緊急通報前から始まる。ジョーンズがクーラーボックスと椅子を運びながら、自分の言い分をゴルフカートに乗った競技場管理人に伝える様子が映っている。
ジョーンズは競技場管理人が携帯を取り出して電話をしようとしているのを見て、「あなたに文句を言ったんじゃないんです」と彼は言っている。「あなたは審判に話しかけるなと言いました。でも私は審判に話しかけていたのではなく、自分の息子に話していたんです。まだ、誤解はとけないんですか?」そういってジョーンズは立ち去ったが、その数秒後に「こんなことは馬鹿げている」と言っているのが聞こえる。
ジョーンズが立ち去ると、競技場管理人は携帯で警察の緊急通報に電話をし始めた。
ワルサーはそこで状況を説明し始める。「彼は私の隣に立っていました。彼の息子に向かって話しかけていたんです。するとこの女性はなぜか横槍を入れ始め、彼は息子に話していただけなのに警察に通報しています」
この時点で、競技場管理人はワルサーに向かって「お母さん、あなたも施設から退去しなさい。あなたが退去する様子を撮影すればいいんです」と言い放った。
「私はここから動きませんよ。私のことを退去させたかったら、警察を呼ぶしかありませんよ」とワルサーは撮影対象を競技場管理人から写す前に言い、その後フレーム内に競技場管理人が入るようにしながら自分にカメラを向けている。
警察への緊急通報の記録では、競技管理人は「サッカーフィールドで保護者と問題が起こりました」と話し、警察官の出動を要請している。
「青少年のサッカーの試合から排除する必要がある、制御不能な保護者がいるんです」と彼女は警察の通話を対応するオペレーターに伝えている。
「保護者は二人ですか?」とオペレーターが聞く。
「そう」と競技場管理人は答える。
「男性と女性ですか?」
「男性は退去しようとしていますが、女性は拒否しています。だから警察に来てもらって、彼女を外まで送り出してほしいんです」と、競技管理人は明らかにワルサーについてそう言っている。
通話の最後の方では、競技場管理人がジョーンズの乗っている車の種類を見ることはできない、なぜなら「問題になりたくないから」と退去を拒否している女性と立っているからだと話している。競技場管理人が話している女性とは、ワルサーのことである。
その後、彼女はジョーンズがフィールドに戻ってくるのをみて、警察のオペレーターに「いやだ! 今、その地位と矢が戻って来ました。誰かここに今すぐに来てほしいです」と言っている。ジョーンズはそのときのことを、のちに警察官に「自分の息子ともう一人すでに競技場から退去処分になった保護者の子供のために送迎をアレンジしていた」と話している。
警察官が到着して電話を切る前に、競技場管理人はオペレーターに、別の女性が彼女の写真を撮っていると伝えている。
誰が写真を撮ったのかと聞かれて、競技場管理人は答える。「全くわかりません。この母親はただ歩いてきて、私の写真を撮ったのです」
「先ほどの母親ですか? それとも別の母親ですか?」とオペレーター。
「別の母親です。警察官が今すぐに必要です」と競技場管理人は言う。ウィリアムズのことだ。
そのとき警察官が到着し、競技場管理人は緊急通報の電話を切った。ウィリアムズはジョーンズと警察が話すのを撮影し始めた。
「私はこちらの男性が、今のこの全体の状況からひどい目に遭わせられないかどうか、きちんと確認したかったんです。それだけです」とウィリアムズは警察官に伝えている。その警察官は同僚も含め、ジョーンズに対して何もしないと応えている。
「よかった! よかった! なぜこの女性がこちらの男性に対して、警察に通報する必要があると感じたか、理解できません」とウィリアムズ。
警察官はのちにこう付け加えた。「いつでもどんな理由でも全ての人が警察に連絡していいのです。私たちはそれに対応して、その人たちと話します。妨害行為に対して審判を助けるために呼ばれれば、行ってそうするのです」
「私はあそこにいるゴルフカートに乗った女性が非常に威圧的だと感じました」とウィリアムズは言う。「そして、男性が『ねえ、私は出て行きますよ。面倒は避けたいです』と言っている時に、カートに座ったまま追いかけていたんです。あの女性はなぜ、彼が自発的に面倒を避けるべく退去しようとしているときに、警察への通報が必要だと感じたのでしょうか」
「彼女は通報してもいいんですよ。通報してもいいとされているんです」と警察官は答える。
その後、警察官はジョーンズと競技場管理人を特に処罰などを加えることなく解放。ウィリアムズは撮影を続けたまま、ジョーンズに車まで一緒に行ってよいかと訪ねた。ジョーンズが受け入れたので二人が歩き始めると、ジョーンズはウィリアムズに向かって「やりすぎですよね。やりすぎですよ」と話す。動画には、こういった様子が映されていた。
警察はBuzzFeedに、競技場管理人と彼女のオフィスには「ゴルフカートのゲイルさん」の投稿が議論を呼んだ結果、脅迫状を受け取ることになったと明かしている。
その後のインタビューで、ジョーンズは謝罪が必要だと話す。
ジョーンズはファーストコーストニュースの取材の中で、人種で判断されたと確信していると話し、話が15歳の息子に及ぶと、感情的になった。
「息子と話していたんです。彼には白人と黒人の両方の血が流れています。彼の人種は何でしょうか。白人ですか? 黒人ですか? こんなことはもうたくさんです。いったい、いつになったら黒人差別は終わるのでしょう」
彼は、競技場管理人が嫌がらせを受け、脅迫状を受け取っていると聞かされると、彼女のために祈ると話した。
「そんなものを受け取るべき人なんていないんです。それだけです」とジョーンズ。
警察は、この事件に関連する人は誰一人として法に触れたことをしていないと明言している。
セントジョンズ郡警察の報道官、チャック・マルガンはこの状況を「警察の介入できない組織内ルールについての話」であると表現した。
「何も犯罪的なことは起こっていません。誰も相手に怪我をさせたりしていませんし、誰も不法なことはしていないんです」
マルガンは競技場管理人が警察官に通報したのは、「子供の前で口げんかが次々に起こり、どんどん手に負えなくなってきて殴り合いの喧嘩になりそうだ」という心配が理由だったと話す。
マルガンによると、セントジョンズ州の警察署は、警察に誤った通報をしたことで逮捕されないのかと尋ねる電話がひっきりなしにかかってきているという。
「逮捕の基準はとても高いんです。意見の相違があっての緊急通報は、法律違反ではありません」
「多くの人が、犯罪以外のことで電話をかけてきます。毎日550から600本の電話を受けます。私たちは駆けつけて、その意見の相違などがヒートアップしておおごとにならないように、自体を沈静化します。それは警察の仕事です」
運動協議会は、この件について人種が原因ではないと主張している。
最初の見解のなかで、ポンテ・べドラ陸上競技協会の会長ゲイリー・イーソンは、ジョーンズが退去処分になったのは人種が理由ではなく、ジョーンズがフィールド上で息子を「コーチング」するという「親の行動規範」を違反したからだとしていた。
「子供を守るために作っているルールには、さまざまなものがあります。そのなかには、審判やコーチ、選手を非難したり、フィールド脇から子供をコーチングするなど、適切でない指導を禁止するものもあります。
残念ながら保護者はときどき、観戦中にルールを破ります。そういったルール違反が起こったときには、私たちのスタッフは違反者に指摘し、適切に振る舞うように求めます。もし警告後にも保護者が振る舞いを改めない場合には、スタッフには警察を呼ぶことしか方法が残されていないのです」と団体は述べている。
「めったに起こらない極端な状況が、今回は起こってしまったのです。警察は、ジョーンズさんに対してだけに呼ばれたわけではありません」とジョーンズについて言及する。「ジョーンズさんの問題だけではなく、問題は次々起こっていました。結果的にジョーンズさんのときに警察が到着したのです」