アメリカに住むLGBTQたちの意識調査

    「ホイットマン・インサイト・ストラテジーズ(Whitman Insight Strategies)」とBuzzFeed Newsがプライド月間のために実施した全米世論調査から、LGBTQの人たちは、人口に占める自分たちの割合を高く見積もっていることと、インスタグラムを見ていると悲しい気持ちになることなどが明らかになった。

    米コミュニケーション・コンサルティング企業「ホイットマン・インサイト・ストラテジーズ(Whitman Insight Strategies)」とBuzzFeed Newsはこのほど、アメリカに住むLGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、クエスチョニングならびにクィアの性的少数派)の人たちを対象に調査を行った。その結果、警察や企業がプライドパレードに参加することを望んでいる人と望んでいない人の比率が8対1であることがわかった。賛成派が圧倒的に優勢であり、強硬な反対派とは大きな隔たりがある。

    全米規模で実施されたこの調査からは、LGBTQの多くが、自分たちの全人口に占める割合を、実際よりはるかに大きく見積もるという思い違いをしていることも明らかになった(40%以上だと考えている人もかなり多かった)。

    調査からはさらに、ハードコアな服装を好む人や家族もプライドパレードに参加すべきだと考えているLGBTQが圧倒的に多いこと、インスタグラムなどのソーシャルメディアプラットフォームが彼らの身体イメージを傷つけていること、テイラー・スウィフトはゲイのアイコン的存在ではないと考えられていることもわかった。

    この調査は2019年6月、801人に上るアメリカに住むLGBTQを対象に実施された。同種の試みのなかで最も広範囲にわたる調査内容であり、100を超える質問で、ジェンダーやセックス、政治、家族、差別について尋ねている。

    警察官がプライドパレードでマーチを行うなど、警察官参加の是非について

    企業のプライドパレード参加について

    今回のLGBTQ調査は、「プライド月間」に焦点が当てられている。50年前の6月に同性愛者らが起こした「ストーンウォールの反乱」を記念し、毎年6月がプライド月間とされ、各地でパレードなどが行われるものだ(1969年6月、ニューヨークにあるゲイバー「ストーンウォール・イン」で警察による強制捜査が行われたとき、同性愛者たちが初めて抵抗し暴動が発生。権利獲得運動の転換点になったとされる)。

    しかし、50年前に警察と歴史に残る衝突が発生したからといって、クイアの警察官が現代のパレードに参加してはいけないとはならないようだ。成人LGBTQの79%は、プライドイベントに警察が自由に参加してもかまわないと考えている。反対派は8%にすぎない。

    プライドイベントへの警察官の参加を歓迎する賛成派は、男性、女性、ゲイ、レズビアン、トランスジェンダー、バイセクシュアル、白人、非白人という幅広い人口層を通じて、4分の3ほど存在する。全調査回答者の21%を占める有色人種の場合は、77%が警察官のイベント参加に賛成しており、反対派は8%だった(残り15%は「どちらでもいい」と回答)。カミングアウトしていないLGBTQとなると、賛成派が少し減って56%、クィア/ノンバイナリーは57%、30歳未満は70%となっている。

    プライドパレードに企業がフロート(レインボーカラーに装飾された山車)を出展させることについては、賛成が76%で、反対はわずか9%だ。

    ただし、こうした調査結果と逆行するメッセージを訴えるイベントが、6月30日(日)朝に計画されている。同日の正午には、プライド月間のメインイベント「NYCプライドマーチ」が行なわれる予定だが、「Reclaim Pride Coalition(RPC)」というLGBTQグループは同日朝にマンハッタンでデモ行進を行い、対照的なメッセージを届けようとしている。

    RPC主催者は、「プライドで私たちは警察に立ち向かいます」とツイート。LGBTQ、なかでもトランスジェンダー女性と有色人種は、いまだに警察によるプロファイリングの対象であり、差別を受けていると訴える。同様のメッセージを掲げたLGBTQによる抗議デモは2017年にもワシントンD.C.で行われ、プライドパレードを妨害。レインボーカラーで彩られた企業のフロートは政治的な運動を商品化するものだし、警察はパレードを懐柔しようとしていると批判した。

    警察に対する憤りは理解できるものだ。調査では10人中7人が、警察がLGBTQを差別していると「頻繁に感じる」または「ときどき感じる」と回答している。さらに、プライドパレードへの支持を表明して会社ロゴをレインボーカラーに飾り付けた企業のなかには、「LGBT差別を禁止する内容が盛り込まれた法案」を阻止・廃止するべく働きかけていた共和党候補者に多額の寄付をしていたところがあることも明らかになっている。

    さまざまな服装をした人々のパレード参加について

    プライド月間に入ってから、保守派の識者LGBTQに批判的な人たちは、プライドパレードはみだらで下品すぎると非難している。

    しかしLGBTQのアメリカ人たちは、レザーダディ(leather daddy)と呼ばれる、お尻が丸見えの革のチャップス(カウボーイ用の革製ズボンカバー)だけの姿で腰をくねらせるような人たちや、あるいは、ボンデージ姿の人たちが参加しても問題ないと考えている

    プライドパレードにボンデージ姿やレザーマンといった人々を参加させることに賛成した回答者は72%で、反対は10%だった。こうした人たちのパレード参加に異議を唱える少数派は、怒りにかられてツイッターに投稿し、プライドパレードにこうした服装の人々が参加すると子どもたちに悪影響が及ぶと主張している。

    プライドパレードに子どもたちを連れて行けば、ヒールを履いたトップレスのレズビアンや男性たちをほぼ間違いなく目にするが、調査では、子どもがパレードに参加することに反対する意見は少なかった。子どものいる家族もパレードに歓迎すべきだと答えた割合は87%で、反対する意見は3%にとどまっている。

    今回の人口統計学的属性(デモグラフィック)の内訳は、同じくホイットマン・インサイト・ストラテジーズとBuzzFeed Newsが2018年に調査した際のものとおおかた同じだ。内訳をみると、調査回答者のうち55%が女性で、アメリカ全体と比較すると偏りがある。

    また、調査回答者全体のうち、自身をバイセクシュアルだとみなす割合は46%で、その4分の3がやはり女性だ。全体的には、調査回答者の年齢層は一般的な成人層よりも年齢が低めで(18歳から39歳が69%を占める)、その4分の3近くが都市か都市近郊に住んでいる。

    アメリカのLGBTQたちはどこに住んでいるか

    調査回答者の事実上全員は、毎年6月がプライド月間であることを認識していた。この月間は自分たちのような人間のためにあると考えている人は80%に上った。

    「プライド関連イベントに必ず参加する」または「たぶん参加する」と回答した割合は45%。一方、参加する可能性が最も低いのはゲイ男性と地方に住むLGBTQだ。その両カテゴリーに属する人のうちの38%は「たぶん参加しない」「絶対に参加しない」と回答した。

    とはいえ全体を見ると、LGBTQの圧倒的多数(90%)が、プライド月間はLGBTQの平等という権利を向上させるのに役立つと考えている。「ストーンウォールの反乱」について知っている人の割合はほどほどで54%だ。LGBTQの歴史を学校で教えるべきだと答えた割合はそれより多く、89%だった。

    賛成派が少ないのは、レインボーフラッグに、有色人種を表す茶色と黒のストライプを加えるべきだという意見で、反対が56%、賛成が44%だった。フラッグを変えることに最も抵抗を示しているのがゲイの男性で、2対1で反対派が多い。一方、トランスジェンダー、クィア、ミレニアル世代でフラッグを変えることに賛成している割合はそれぞれ64%、60%、55%。有色人種の場合は、わずか2%の差だが、反対派が多かった。

    調査回答者の5人中3人は、アメリカの総人口におけるLGBTQの割合は20%以上だと回答。40%以上だと考えている人も28%いた。こうした数字は、現実的な見積もりをはるかに上回っている。調査会社ギャラップ社の推定によれば、実際は4.5%ほどだ。

    自宅近くに、気軽に行けるLGBTQ向けのバーや社交用スペースがあると回答したのは5人中3人。しかし、この数字は地方在住者になると大きく下がり、62%が簡単に行ける場所はないと答えた。

    LGBTQ向けのバーや社交用スペースについて

    アメリカのLGBTQの半分近くは、有名人にとって、カミングアウトするのは義務ではないと回答している。彼らにはカミングアウトする責任があると回答したのは53%。責任はないという回答は47%だった。

    LGBTQの有名人について

    調査回答者はすべての層を通じて、インスタグラムなどのソーシャルメディアは、LGBTQの自尊心と身体イメージに著しくマイナスの影響をもたらしていると考えている。インスタグラムのようなプラットフォームがプラスの影響をもたらしていると回答した割合は21%で、その倍の43%がマイナスの影響をもたらしていると回答。まったく影響はないと答えたのはおよそ3分の1だった。

    マイナスの影響をもたらしているという回答が半数近く(48%)と、どのグループよりも多かったのはレズビアンで、プラスの影響をもたらしていると答えた15%の3倍以上だった。

    それはもしかしたら、LGBTQは女性のほうがソーシャルメディアを利用している割合が大きいからかもしれない。

    LGBTQのなかで最も人気があるプラットフォームはフェイスブックで、80%が使っていると回答。女性の調査回答者の52%(ならびにレズビアンの半数)は、フェイスブックを1日に数回開くと答えた。この割合は、同じようにフェイスブックを1日に数回チェックすると回答した男性40%(ならびにゲイ男性の37%)よりも高い。

    ソーシャルメディアについて

    インスタグラムとなると、LGBTQ内のジェンダーの差はさらに開く。LGBTQ全体では、インスタグラムを使っている人の割合は60%だ。女性の46%(ならびにレズビアンの36%)は、少なくとも1日1回はチェックすると回答。一方、毎日チェックすると答えた男性は31%(ゲイは20%)だった。インスタグラムを一度も使ったことがないと答えたのは、レズビアン(41%)よりゲイ男性のほうがはるかに多かった(56%)。

    調査では、有名人に関する設問もあった。トークショー司会者エレン・デジェネレスを同性愛者のアイコンとして挙げた人が圧倒的に多く、LGBTQの78%を占めた。そのあとに、ドラァグクイーンのルポール(RuPaul:65%)、歌手のレディ・ガガ(53%)、シェール(40%)、マドンナ(36%)が続いている。

    テイラー・スウィフトはここ最近、LGBTQを支持する言動が多く、称賛する声も多少聞かれた(同じく冷笑もされた)。ただし、彼女をゲイのアイコンだとみなす人は9%しかいない。アイコン度は、ホラー映画『ババドック~暗闇の魔物~』に登場するババドックの6%をほんのわずか上回るにとどまっている。


    調査方法:ホイットマン・インサイト・ストラテジーズは、LGBTQを自認する801人を対象に、データ収集企業「Dynata」を介して定量的調査を実施した。調査期間は2019年6月5日から6月10日まで。

    調査対象者を適切に絞り込むために、回答者のスクリーニング調査を行い、ジェンダー・アイデンティティ、トランスジェンダー認定、性的指向を確定した。LGBTQを自認するアメリカ人回答者数(N)801人の内訳は、ゲイ235人(29%)、レズビアン135人(17%)、バイセクシュアル366人(46%)、トランスジェンダー53人(7%)、クイア、ノンバイナリー53人(7%)。総サンプルに対する信頼水準を95%とした場合の許容誤差は±3.46%であり、LGBTQの個々のグループを対象にした調査結果と比較してわずかに高い。

    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:遠藤康子/ガリレオ、編集:BuzzFeed Japan