トランプ氏が直面する、核にまつわる5つの懸念

    米大統領には、世界にある約1万5千発の核兵器の半数を支配する力がある。

    世界には約 1万5千発の核兵器 がある。これは、人類を絶滅させるのに十分な数だ。大統領として、ドナルド・トランプ氏はその半数近くを支配することになるが、彼がその責任をどうするのかは、全くわからない。

    「米大統領には核兵器を支配する膨大な力があります」と、ジェームズ・マーティン核不拡散研究センター(James Martin Center for Nonproliferation Studies)の核アナリスト、マイルズ・ポンパーがBuzzFeed Newsに語った。

    アメリカ科学者連盟(Federation of American Scientists)によると、約2000発の核兵器がアメリカの兵器庫に配備されたり、潜水艦やミサイルに搭載されたり、爆弾に詰め込まれたりしている。また、他にも約5000発が軍隊に備蓄されているという。

    「アメリカは、今もなお世界中の食糧生産を破壊する、大々的な『核の冬』を引き起こすのに十分すぎるほどの核兵器を保有しているのです」と、ラトガース大学の大気科学者、アラン・ロボックはBuzzFeed Newsに語った。

    大統領選期間中の討論会で、トランプ氏は「私はもちろん核の先制攻撃をしたりしません」と言った。しかし後にその発言に話を戻し、「どんな取引にも応じられません」などと発言。混乱は一層深まった

    「トランプ氏に関しては、何事も予測するのが非常に難しいです。なぜなら、彼の見解は非常に浅く、矛盾していることが多いからです」と、カリフォルニア州にあるミドルベリー国際大学院モントレー校のウィリアム・ポッターはBuzzFeed Newsに宛てた電子メールの中で語った。「多くのことは、彼が集めた国家安全保障チームにかかっているでしょう」

    ポッターは、トランプ氏の国家安全保障チームのメンバーの選択肢は限られている可能性があるという。8月、50名の共和党軍事顧問(その中にはジョージ W. ブッシュ政権のベテラン勢が数多く含まれていた)が、トランプ氏の立候補を非難する書簡を発表しているからだ。

    前政権の先例にならうのであれば、トランプ陣営はまず、新しい国防長官と国家安全保障担当補佐官の元で策定される「核態勢の見直し」を実施するだろう。核態勢の見直しは、核兵器を構築し、世界中で核の拡散制限を模索するトランプ氏のアプローチの骨子を描くものになる。

    それまでは、彼のプランについては誰にも分らないが、トランプ氏が直面する核にまつわる問題点を列挙した。

    1.イランとの合意

    トランプ氏は、イランとの核合意について、直ちに国連安全保障理事会と「再交渉」すると述べていた。この合意とは、イランが核爆弾の開発を中止するのと引き換えに、経済制裁を緩和するという、2014年の合意である。

    「私の最優先事項は、多大な損害をもたらすイランとの合意を破棄すること」と、トランプ氏は選挙キャンペーンが最高潮を迎えた今年3月に発言している。「核合意と引き換えに、我々が得るものは何もなかった」と、彼は言った。

    「協定を破棄するのは大きな過ちだと思います」。アメリカ科学者連盟のハンス・クリステンセンがBuzzFeed Newsに語った。

    イランとの合意が破棄される場合、イランの核兵器製造を阻止する唯一の実際的な方法は、戦争で脅すことだ、とポンパーは言う。そしてこう付け加える。「中東でもう一度戦争することに賛成の人が、いるとは思えません」

    2.北朝鮮

    北朝鮮も、核実験を行い 、核爆弾を搭載するミサイルを開発している。トランプ氏は韓国に、北朝鮮への反撃策として独自に核戦力を構築する必要があるかもしれない、と発言をし、ショックを与えた。5月には、北朝鮮の最高指導者である金正恩と直接じっくり話し合うことも示唆した。

    3.アメリカの核兵器への出費

    潜水艦、爆撃機、そしてミサイルを含むアメリカの核兵器の予算は、今後30年で1兆ドル以上になる と見積もられている。トランプ氏には、これらの整備を続けるかどうかの決断が委ねられている。それに加え、アメリカ空軍が追加で欲しがっている1000機の原子力巡航ミサイルに90億ドルがかかる。

    「トランプ氏は、アメリカとロシア以外の全ての核保有国は、なぜ数百発だけの核爆弾しか持っていないのか、そしてアメリカには本当にそんなにたくさんの核爆弾が必要なのか、問うかもしれません」と、ロボックは言った。

    4.ロシアへの対応

    トランプ氏にとって、核についてのもう1つの頭痛の種となるのは、ロシアだ。報道によると、ロシアは 中距離用の原子力巡航ミサイルを製造しており、レーガン大統領時代の軍縮協定に違反している。一方で、トランプ氏はロシアのプーチン大統領とのより良い関係を約束してきた。トランプ氏が政権を握ればロシアはより協力的になることを意味する可能性がある。

    「共和党が、民主党にはできなかった取り決めをロシアと結ぶことができるという可能性は常にあります」と、科学者同盟の核兵器アナリスト、デイビッド・ライトはBuzzFeed Newsに語った。

    例として、ライトは、ブッシュ政権が親子2代にわたりロシア政府と結んだ軍縮条約を指摘した。

    5.プーチン氏の思惑

    アメリカとロシアが保有する核弾頭数が、トランプ氏とプーチン氏の関係に変化を生むだろう、と多くの専門家が語った。「ロシアが、ウクライナへの干渉を高めることの見返りとして、『何か小さなことを諦めて、この男に協力したほうがよさそうだ』と言っているのが目に浮かぶ」と、ポンパーは言った。

    過去には、経験不足の大統領が、核外交について軍の指導者の意見にそのまま従い、選挙キャンペーン中に発言していた内容を交渉する余地がほとんどなくなったということもある。これは核軍縮の支持者たちの大統領在任中のオバマに対する批判である、とライトは言う。

    ポッターによると、「最大の難問」となるのは、トランプ氏が、アメリカ国防総省と国務省の「超強硬派の冷戦主義者の一団」と激しく衝突するかどうかだという。

    「私の予想では、最終的には冷戦主義者たちが勝利し、アメリカはすぐにもっとお金のかかる、イデオロギー的色彩の強い、ロシアとの武器レースに再び戻るでしょう」と、ポッター。議会は、これまでずっと懸命に軍に支出しようとしており、近年、支出を幾分抑えていたオバマとの予算合意を破っている、とポッターは指摘した。

    「ロシア政府の、ほとんど陶酔的な大統領選の結果の歓迎ムードは、すぐにもっとひどい二日酔いに姿を変えるだろうと私は思っています」


    この記事は英語から翻訳されました。