ヌードなら無料?有名写真家をひとりのモデルが告発。被害者たちが続々と名乗りをあげた

    「送られてきた沢山のメッセージに目を通していて圧倒されていますが、プライバシーを保護して自分の話もシェアして欲しいという多くの女性と繋がることができて嬉しいです」

    サンナヤ・ナッシュ(20)は、長いことマーカス・ハイド(33)の写真のファンだった。7月21日、ハイドが自身のInstagramでシェアしたストーリーを見て、ナッシュはすぐにメッセージを送った。裸の女性がシャワーを浴びている画像の上に「撮りたい人、いる?」と書かれた被写体を募集する投稿だった。

    「すぐに返事がきて、iPhoneで撮ったデジタル画像を送るように言われたので、送りました」ロサンゼルスを拠点とするモデルで、インテリア・デザインを学んでいるナッシュは、InstagramのメッセージでBuzzFeed Newsに対して答えている。

    「その直後、ヌード写真を送るように言われました」

    ナッシュがスクリーンショットを撮り、SNSに投稿したこのやり取りは、インターネット上で急速に広まり、影響力があるこのセレブ写真家に対する怒り、反発を引き起こしている。ハイドは、キム・カーダシアン・ウェスト、カニエ・ウェスト、チャンス・ザ・ラッパー、アリアナ・グランデなどの大スターの撮影もしている。

    ヌード写真はないが、下着姿やセミヌードなら撮影してもいい、とナッシュはハイドに伝えた。

    その場合、撮影料は、$2,000(約22万円)だとハイドは返している。

    「ヌードなら無料なの?」とナッシュは尋ねた。そうだ、とハイドは答えている。ナッシュはヌード写真に同意はしたものの、事前にヌード写真を送りたくはない、と伝えた。

    その場合、料金は$2,000(約22万円)だ、とハイドは答えている。

    「撮る価値があるか確かめる必要がある」とハイドは書いている。事前に送るのをナッシュが断ると、「他を当たるんだな。俺はセレブを撮り続ける」と返ってきた。

    ナッシュがInstagramのストーリーでハイドを名指ししたところ、「ぶっといやつでもしゃぶってろ」とハイドが言ったとされている。

    「こっちにも投稿しておく」

    ショックを受けたものの、「驚きはせず」、ナッシュはこのやり取りをInstagramのストーリーでシェアした。友だちから返事はくるだろうと思っていたが、ハイドからヌード写真を強要されて、利用されたと言う人たちからの返事が殺到することは想像していなかった。

    ハイドは、Instagramのプロフィールを非公開にし、この主張に対応したり、コメントを求める依頼に応えたりはしていない。(訳注:アカウントは削除されたようだ。)

    「ここまで注目を集めるとは思っていませんでした」とナッシュは話している。「たくさんの人が自身の話を共有するのにメッセージをくれたので、注目されてよかったです」

    ファッション業界に特化したInstagramアカウントのDiet Pradaが、ナッシュのやり取りを投稿したところ、ネット上でたちまち共感を呼び、Sza(シザ)、ベラ・ソーン、ドラァグクイーンのアクアリア、ミッチェル・ビセージも嫌悪や恐怖をあらわにしている。

    7月22日、ハイドを名指しにはしなかったが、アリアナ・グランデは次のように投稿している。

    「いまショッキングで痛ましい話を読みました。こんな会話があることを残念に思いますが、居心地が悪くなったり、脱ぎたくないのに脱がないといけないと思わされたりする写真家とは写真を撮らないでください。脱ぎたいなら構わないけど、脱ぎたくないなら脱がないで」

    「服を着るなら料金が高くなるというのはひどいです。そんなことを言われたなら残念です。尊敬できて、立派で、才能がある写真家は他にたくさんいると断言します」

    グランデの呼びかけは、回避的で、責めているみたいに感じるとナッシュは話している。

    「声をあげてくれて嬉しいのですが、趣旨を分かっていないと思います」

    7月23日、キム・カーダシアン・ウェストがこの議論にコメントを出した。「私が過去に仕事をしたことがある写真家による不適切で許しがたい行動に関する女の人たちからのメッセージやストーリーはすべて」読んでいる、と自身のInstagramのストーリーに書いている。

    2018年10月、ハイドはマリブの崖から車ごと落ちて死にかけたのだが、キム・カーダシアン・ウェストとカニエ・ウェストの両氏はハイドの治療のために25,000ドル(約270万円)を寄付している。2019年4月、事故があってから初めて表舞台に出たのは、イースターサンデーに開催されたコーチェラ・フェスティバルにカニエ・ウェストが出演した際で、ハイドは車椅子に座った状態で、キム・カーダシアンとコートニー・カーダシアンに挟まれて登場した。

    「私が撮ってもらったときはプロの仕事で、他の女の人たちに対してはそうではなかったことを知り、驚くとともに悲しく、落胆しています」とカーダシアン・ウェストは書いている。「ハラスメントを受けないこと、やりたくないことをやるように言われたり、圧力をかけられたりすることがない女性の権利を全面的に支持します。このような行為が見過ごされることは許してはならず、打ち明けてくれた人たちを称賛します」

    ナッシュとDiet Pradaは、InstagramとTwitterにこのようなストーリーを多く投稿している。ハイドにヌード写真を送って撮影した後、写真をもらえなかった人も何名かいる。

    「どんどん連絡がきます」とナッシュは話している。「送られてきた沢山のメッセージに目を通していて圧倒されていますが、プライバシーを保護して自分の話もシェアして欲しいという多くの女性と繋がることができて嬉しいです」

    ナッシュの体験談に応えて、ロサンゼルスを拠点とするもうひとりのモデル、ケイト・ローズが、撮影前にヌード写真を送るようにハイドが言った2014年のメールのやり取りを投稿している。

    「ひどい人です」とハイドと仕事をしたことがあるメーキャップ・アーティストのシンディ・ボウイは、BuzzFeed Newsに話している。

    ハイドはInstagramで有名なインフルエンサーで、モデルのコミュニティでは、キム・カーダシアンやアリアナ・グランデと仕事をしたことがある写真家だと言って、自分の影響力を使い、モデルたちを操ることで知られている、とシンディは話す。

    「こういうことをするのはハイドだけではありません」と言う。

    ナッシュもモデル業界について同じようなことを言っている。ハイドの態度にはうんざりしたが、「そうだろうとは思っていた」というのだ。

    「男性で有名な写真家の多くは、あまり有名ではないモデルに対してまったく敬意を払いません」とナッシュは話す。

    自身の投稿が引き起こした反応と「私も!(me too)」という声が殺到して圧倒しているが、主張の圧力と注目を維持することを固く決心している、とナッシュは話している。

    「(今回の体験で)一番ショックだったことは、もっとひどい目にあっている人がたくさんいたことです」とナッシュは言う。「同情するとともに、二度とこのようなことが起きないようにしたいのです」

    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:五十川勇気 / 編集:BuzzFeed Japan