反ワクチン派の両親のもとで少年が破傷風にかかり、9000万円を超える治療費を抱えることに

    反ワクチン派の家庭で育った少年が、ワクチンで十分予防できる破傷風にかかり重症となった。彼の救命とその後の治療を合わせて、両親は9000万円以上を支払わなければならない。

    小児向けの予防接種を受けたことのない6歳の少年が、額の切り傷から破傷風に感染し、危うく命を落としそうになり、2カ月間入院した。その治療に800,000ドル(約8900万円)を越える金額がかかった。

    疾病予防管理センターが発表した新たな報告書には、十分に予防できるはずの病気との、大金のかかる闘いが詳しく書かれている。

    破傷風はチ以上、土壌を介して感染する細菌感染症だ。ガーデニングをする際にトゲで指を切ったり、公園で膝を擦りむいたりといった場面を想像していただこう。

    アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の情報によると、細菌が毒素を放出し、痛みを伴う痙攣を引き起こしたり、体のコントロールがきかなくなったりして、骨折や肺炎、および呼吸困難などを引き起こす。致死率は約10%だ。

    「この症例報告は、破傷風が重篤で命にかかわる疾患であることを、改めて思う機会となりました」と、少年の治療を行い、報告書を共同執筆した小児感染症の専門医Judith Guzman-Cottrill医師は、 BuzzFeed Newsに語った。

    「彼が苦しむ様子を見るのは辛かったです。しかし、予防接種によって、この恐ろしい疾患は防ぐことができるのです」

    オレゴン州で昨年、家族が経営する農場で6歳の少年が遊んでいる際、額に擦り傷を負った。

    家族は傷を洗って傷口を塞いだが、6日後に少年の顎が硬直し始めた。腕と上半身は抑えることができないほど痙攣した。

    さらに全身が痙攣するようになり、首と背中は湾曲し始めた。CDCによると、その日の遅く、少年は呼吸困難に陥ったこという。

    両親は助けを求めた。少年は救急ヘリコプターで小児医療センターに搬送された。彼は水を欲しがったが、口を開くことができなかったので飲むことができなかった。自力で呼吸をすることがほとんどできず、医師は少年の気管に挿管した。

    医師らは少年を破傷風感染症と診断した。オレゴン州では約30年ぶりの発症例だった。数回のワクチンと大量の破傷風免疫グロブリンを少年に投与した。これは、疾患から体を守るのに役立つ一般的な免疫治療法である。

    意識が朦朧としていたその少年は、その後47日間を集中治療室で過ごした。

    そのほとんどは、痙攣が激しくならないよう、刺激を最小限に抑えるために耳栓を付けられた状態で、暗い部屋の中で過ごした。また、呼吸器につながれた状態で、筋肉、痛み、血圧を落ち着かせるため、静脈注射から絶えず薬が投与された。

    CDCの情報によると、それでも少年の状態は悪化し続けた。5日後、医者は少年の首を切開して、呼吸を助けるためのチューブを挿入した。

    44日目に、少年はついに清澄流動食をある程度飲むことができるようになり、その2日後に集中治療室を出た。入院50日後、6メートルほど歩くことができるようになったが、それでも脚と体を動かすことができるようになるまで、さらにリハビリ施設で17日間過ごす必要があったとCDCはいう。

    すべてが終わったとき、家族には811,929ドル(約9000万円)の請求書が積み上がった。それは通常子供にかかる平均的な費用のおよそ72倍だという。少年の両親は、さらに救急ヘリコプター輸送、リハビリ、フォローアップ訪問の費用を支払わなければならない。

    破傷風ワクチンのDTaPを1回投与すると、24ドルから30ドルかかる。Guzman-Cottrill医師は、5回程度の投与で、少年の感染を防ぐことができたと語った。

    しかし、命を落としかねなかった体験の後でさえ、少年の家族は、破傷風や他の勧められた免疫付与に対して、2回目のワクチン接種を拒否したことをCDCは報告した。

    ヴァンダービルト大学のワクチンおよび感染症の専門家William Schaffner氏は、少年が「米国で事実上撲滅した疾患」にかかったことから、その苦痛な試練は「きわめて問題である」とBuzzFeed Newsに語った。

    「オレゴン州で30年間発症例がなかったのは偶然ではなく必然であり、基本的に他のすべての州がその声明を出すことができる」と彼は話した。「破傷風は恐ろしい病気です。だからこそ、この件は非常に問題なのです」

    さらに、感染前に予防接種を受けていなかったことは「問題」ではあったが、さらに理解が難しかったのは、子供の予防接種を再度拒否する決断を両親がしたことであるとSchaffner氏は語った。

    少年が回復する中、Guzman-Cottrill医師は両親にすべての予防接種の利点を説明する啓発資料を提供したが、それでも拒否されたことを話した。

    「少年は再び感染する可能性があります」とSchaffner氏は話す。「破傷風を一度発症しても、依然として感染しやすいままです。もう一度まったく同じことが起きる可能性があります」

    CDCによると、子供の予防接種と成人の追加接種がより一般的になったおかげで、米国全土では過去80年間で破傷風の感染は95%減少している。しかしながら、2009年から2015年の間に、米国では16人が破傷風で死亡し、197件の感染が医師によって記録されている。

    米国では誤解を招くような内容のソーシャルメディア・プラットフォームの広がりに支えられた、「反ワクチン」の動きへの取り組みが行われている。最近では、YouTubeやAmazonといった大手テクノロジー企業は、サイトから反ワクチン広告や動画を削除し、それらを禁止するほどだ。

    また米国は、1992年以来最悪のはしか流行という困難の真っ只中にある。ワシントン州とオレゴン州では、この予防可能な疾患に75人以上が罹患し、その多くは子供であり、公衆衛生局長官が訪問する事態となっている。ワシントン州クラーク郡では、この疾患の流行で、800人を超す児童が自宅待機を余儀なくされた。

    「どこからともなく忍び寄る、過去の恐ろしい疾患が数多くあります」とSchaffner氏は語る。「オレゴン州のケースは、ひどく痛みを伴うものですが、間違いなくたいへん教訓となるものであり、保護者の方々がこの話に耳を傾けてくれることを願います」


    この記事は英語から翻訳・編集しました。